◆ ◆ ◆ 「自分では記憶を取り戻せないので、先生お願いします」 鈴香受刑囚は意図的にウソをついているのではなく、あるショックな出来事から無意識に心を守ろうとして、その部分の記憶を失う「解離性健忘」です。そして、彼女本人以前の問題として、捜査ミスの連鎖が事件の真相に迫れなかった原因です。そもそも「お母さんも事故の方が気が楽でしょ」と彼女に言った秋田県警が最初から本格捜査をしていたら、第二の事件は起こっていない。そして、豪憲君殺害を受け、遡って捜査した彩香ちゃんの事件で、大沢橋から突き落としたとする調書は明らかに作文です。鈴香受刑囚の記憶がないだけでなく、私が現地で会った複数の目撃者は全員が調書のストーリーを疑っています。