『義公黄門仁徳録《ぎこうこうもんじんとくろく》』[江戸中後期成立か。呑産通人(呑産道人)作]巻二十七「下総国八幡宮藪を八幡知らずと申す事」 ※国文学研究資料館所蔵 (CC BY-SA) 新日本古典籍総合データベース 【原文】 當時天下の愊將軍、水戸 従三位《じゆさんみ》、前《さき》の中納言 光圀《みつくに》、是へ来たるに、社壇に一人眼を閉じ、我へ対して無礼な奴。 さあ、先《ま》づ直《す》ぐに性名を名乗り、是なる死骸の有様も定めて存じつらん。 一/\此の黄門に語り聞かすべし。 異義に及ハゞ、一刀の下《もと》に命を立たん。 返答致せ」 と仰セ有り、御柄に手を掛け給へバ、彼の翁、ちつとも動ゼづ、経文を読ミ終《しま》、暫《しばら》く有つて目を開き、 「黄門、然《さ》のミ強氣を出し給ふな。 元より汝が来ることハ疾《と》く知りたり。 此所《ここ》ハ元、天にも地にも無く、中宙《ちうう》ニ無く、世界にも無