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以下の文章は、Paul Graham による Founders' Accents の日本語訳である。 本翻訳文書については、Shiro Kawai さんに誤訳の訂正を頂きました。ありがとうございました。 最近、Inc が私のインタビューを公開したが、そこで私は非常にきつい外国訛りのある創業者と彼らの会社の失敗に相関関係があることに気付いた話をした。 一部でこの発言が外国人嫌い、あるいは人種差別者とさえとられた――まるで私が外国訛りそのものが問題だと言ったかのように。 ただ私はそんなことは言ってないし、思ってもいない。シリコンバレーでは誰もそんなことは思わない。ここで最も成功している創業者には喋りに訛りがある人がたくさんいる。 私がインタビューで語ったのは、創業者の訛りがきつすぎて彼らの言うことを他の人が理解できない場合の話である。つまり、問題は訛りの文化的なシグナルではなく、他の人が創業者
以下の文章は、Parker Higgins による Why Isn't Gatsby in the Public Domain? の日本語訳である。 本翻訳文書については、Shiro Kawai さんに誤訳の指摘を頂きました。ありがとうございました。 今週末、アメリカ中の映画館で『華麗なるギャツビー』が封切りとなるが(訳注:原文は2013年5月7日に公開)、これは「偉大なアメリカ小説」とよく言われ古典文学として知られた物語の映画化である。ここに多くの人が知らない話がある。その原作は90年近く前に出版され、長年にわたって共有されてきた我々の文化遺産の一部にも関わらず、まだパブリックドメイン入りしていないのだ。 そう、F・スコット・フィッツジェラルドは73年前に亡くなっている(ので、これからさらなる作品を作り出すとは考えにくい)にも関わらず、『華麗なるギャツビー』は未だ著作権に縛られているのだ
津田大介『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書) 3月の出張時、判断ミスで本をあまり持っていかなかったため、現地で読むものがなくなり困っていたところ、以前半額セール時に電子書籍を購入していた本書のことを思い出し、iPhone で一気に読んだ次第である。よって左で紙版にリンクしているが、ワタシが読んだのは Kindle 版である。なお、著者の前作『動員の革命 - ソーシャルメディアは何を変えたのか』は書名の時点で興味が持てず未読である。 正直、読後もやもやしたものが残った。 一冊の新書として読むなら、十分な情報量がある本だろう。終章にいたって Gov 2.0 エキスポの取材結果が並ぶなど本の構成には疑問があるが、取材はよくしてあるし、著者の問題意識はちゃんと伝わる。何より著者の(政局でなく)政策にフォーカスした新しい政治ネットメディア構想には大いに共感する。本書を読めば、そのネットメディアにつ
鈴木謙介、長谷川裕、Life Crew『文化系トークラジオ Life のやり方』(TBSサービス) 放送されたすべての回を聞いている数少ないラジオ番組文化系トークラジオ Life から生まれた二冊目の書籍である。 番組が始まったのが2006年で、一冊目の書籍『文化系トークラジオLife』が出たのが2007年で、その当時ワタシもこの番組について Life Goes On という文章を書いているが、あれから5年以上経つのかと一人のリスナーとして感慨深いものがある。 本書は第1部が「黒幕」長谷川裕プロデューサーのインタビュー、第2部が過去放送3回分のリミックス収録、そして第3部が番組のメインパーソナリティである鈴木謙介さんのインタビューという構成である。 第1部の長谷川さんのインタビューでは、今から読むと微笑ましくもある番組の立ち上げ期に始まり、番組を作り上げることで同じ言葉が通じる仲間(Cre
マット・メイソン『海賊のジレンマ ──ユースカルチャーがいかにして新しい資本主義をつくったか』(フィルムアート社) 実は昨年夏に読んだ本である。当時この本などについて独立した文章を書く予定だったので読書記録には取り上げなかった。その後構想が頓挫したままになっていた。今更ではあるが、軽く読書記録を書いておく。 ワタシが本書の原書について文章を書いたのが2009年秋で、それからも大分経つ。本書刊行時点で情報が古くなっているのを危惧したが、ある程度その通りだった。が、それはそれで面白いとも思った(これについては後述する)。 ワタシのサイトの読者であれば、「海賊」と聞いてジャック・スパロウよりも著作権侵害を指す海賊行為、またそれを行う人間のほうを想像するだろう。基本的にその理解でいいのだが、本書は単に音楽でも映画でも無料で自由にダウンロードさせろ、と与太を書き綴る本ではもちろんない。 本書はまず「
以下の文章は、Anil Dash による The Web We Lost の日本語訳である。 ハイテク業界やマスコミは、10億人規模のソーシャルネットワークや遍在するスマートフォンアプリの隆盛を普通の人たちの純粋な勝利、使いやすさと権利拡大の勝利のように扱ってきた。この変化の過程で我々が失ってしまったものが話題になることは稀だし、お若い方だとかつてウェブがどんなだったかご存知すらないかもしれないのは私も承知している。 そこで今では大方消えてしまったかつてのウェブを以下に紹介させてもらう。 五年前、共有される写真は大抵 Flickr にアップロードされ、そこで写真は machine tags を利用することで、人間ないしアプリやサービスででもタグ付け可能だった。単純な RSS フィードを利用することで、画像は容易に公開ウェブ上で見つけられた。そして人々がアップロードした写真は、クリエイティブ
以下の文章は、Joey Tyson による You Are Not the Product の日本語訳である。 「何かにお金を払ってないのなら、あなたはそこの顧客ではない――あなたの方が売り物の商品なのだ」 この格言は、オンラインプライバシーの議論、特に Facebook に関連してよく言われるものである。僕が最初に聞いたのは、ブルース・シュナイアーが2010年のはじめに言ったものだが、その後アンドリュー・ルイスによる Metafilter の投稿がこの特徴的な言い回しのソースとしてよく言及される。歯切れが良い言い回しで、簡潔かつ記憶に残る形で主張を通している。僕でさえ、この数年間で何度も引用しているくらいだ。 でも、それは間違っている。 これは僕が現在 Facebook の社員というだけで言うのではない――実際、この見方に対して僕が懐疑的になったのが、僕がカリフォルニアに移る前なことを
以下の文章は、Steve Morrissey による Ramones are Rubbish(1976年の Melody Maker に掲載された文章。Dangerous Minds を底本とした)の日本語訳を著者の許諾を得ずに公開するものである。 ラモーンズは劣化した何の才能もない傲慢な最新バンドで、目下のところその最も顕著な業績と言えるのは、ニューヨーク市の境界を越えられたことで、それは純粋にラモーンズがロックミュージックにとって天の恵みだと多くのプレスが書き立てて納得させたからだ。 彼らは騙された大勢のファンの安直で誇大な称賛に迎えられている。音楽的には何の繊細さも変化も持ち合わせておらず、そのルールはできるだけ無能であること。 アメリカはニューヨークの若者を投影していると思われているバンドとして、郊外生活、アンチ体制順応主義、セックスと闘争とか何であれ、彼は無残にもやり損なっている
以下の文章は、Miguel de Icaza による What Killed the Linux Desktop の日本語訳を著者の許諾を得て公開するものである。 本文については、八木の野郎さん、Shiro Kawai さん、猪股健太郎さんに誤訳の訂正をいただきました。ありがとうございます。 これは実話である。 うちの Linux マシンの /home ディレクトリがあるハードディスクがおかしいので、それを新しいのに換えなければならなかった。このマシンは机の下にあるので、ケーブルを全部抜き、マシンを外に出し、ハードドライブを交換してまたプラグを全部つなぎ直さなければならなかった。 至極ありきたりなことだ。AC 電源をつなぎ、キーボードをつなぎ、マウスをつないだが、スピーカーケーブルを手に取ると、僕はそれをつなぐのはやめた。 なんでオーディオ設定なんかに手間かけなきゃいけないの? オーディオ
以下の文章は、Aaron Swartz による What do startup founders want? の日本語訳を著者の許諾を得て公開するものである。 しばし思いっきり単純化させてもらう。 ニューヨークの住人は金を欲しがる。ロサンゼルスの住人は名声を欲しがる。ワシントンDCの住人は権力を欲しがる。マイアミの住人は楽しみを欲しがる。ならば、サンフランシスコの住人は何が欲しいのだろう? まず金ではない。確かにたくさんの金を稼ぐスタートアップは立派だが、それが目的ではないのは明らかだ。思うに、価値のないものを作り、それで大企業をたぶらかして大金で買ってもらうのを良しとするスタートアップの創業者はほとんどいない。 それに名声でもない。確かにマーク・ザッカーバーグは今や有名人だが、実際のところ彼はそのことに他の何よりも悩まされてるように見える。 そして権力でもない。そうでなければ、GitHu
江渡浩一郎編『ニコニコ学会βを研究してみた』(河出書房新社) 編者の江渡浩一郎さんに献本いただいた。 ニコニコ学会βの話を最初に知ったとき、江渡さんが関わっていること自体は意外には思わなかったが、氏が委員長という主導的な役割を担っているのに結構驚いた。こう書くと、「お前は自分の何を見てたんだ」と江渡さんに怒られそうだが、これには当方の勘違いもあった。ニコニコ学会βを「ニコニコ動画についての学会」と限定的に捉えていたのである。 ここで少し「ニコニコ動画とワタシ」について書いておく。ニコニコ動画ができて早々にアカウントを取得したが、長らくログインすることは稀だった。率直に言うと、ニコニコ動画の初期の2ちゃんねる的ノリがはっきり好きでなかったし、現在も動画を見る時間では YouTube のほうが圧倒的に長い。それでもニコニコ動画の発展とともに必然的にニコニコ生放送などでログインする機会も増えてお
シヴァ・ヴァイディアナサン『グーグル化の見えざる代償 ウェブ・書籍・知識・記憶の変容』(インプレスジャパン) 原書を紹介した関係でインプレスの方より献本いただいた。 現在のインターネットを利用する上でその存在抜きに語ることができない Google の我々の生活や文化への浸透を「グーグル化」とし、その功罪を論ずる本である。 本書はグーグル論というよりも、私たちがどのようにグーグルを使っているかを論じている。私たちがグーグルを受け入れ、広範で多様な人間的活動にグーグルが取り組んでいるやり方を明らかにするとともに、グーグルが世界各地に普及するにつれて、増大しつつあるグーグルへの抵抗と関心を考察している。本書はまた、何十億人ものユーザとグーグルの関係性を探究し、グーグルの行動と方針がもたらす道徳的影響の重大さについても考察している。(15ページ) 正直に書くと、本書を読んでいてなかなか気分的に乗り
以下の文章は、Rich Bowen による Good Manners Matter(Open Advice に収録)の日本語訳である。 Rich Bowen は、約15年もの間フリー/オープンソースソフトウェアに携わってきた。その時間の大半は Apache HTTP Server に費やしてきたが、Perl や PHP やいろんなウェブアプリケーションにも取り組んできた。彼は『Apache Cookbook』や『The Definitive Guide to Apache mod_rewrite』他いろんな本の著者であり、様々な技術カンファレンスに頻繁に参加している。 僕は2000年の9月に Apache HTTP Server のドキュメンテーションプロジェクトに携わり出した。少なくとも、僕が初めてドキュメントをコミットしたのはそのときだった。それ以前は電子メールでいくつかパッチを登録し
以下の文章は、Fred Wilson による The Darwinian Evolution of Startup Hubs の日本語訳である。 今週末は Internet Week(ロンドン旅行のためほとんど参加し損ねた)と Disrupt NYC(今週断続的に参加するつもり)がニューヨークである。スタートアップハブとしてのニューヨークの進化は、私にとって非常に気がかりなことだ。そこでスタートアップハブの進化について書こうと考えた。 この理論は、私はスタートアップハブのダーウィン的進化と呼んでいるが、別に目新しいものではないし、私が考え出したものではないのは確かだ。けれど、皆に理解してもらうのが重要だから、ブログを書く次第である。 シリコンバレーを研究すると、木が高く育ち、その種が落ちて新しい木が生え、やがて古い木は成熟して成長を止めるか、悪ければ病気や腐敗で死にいたるが、新しい木が古い
以下の文章は、Chris Dixon による Facebook’s business model の日本語訳を著者の許諾を得て公開するものである。 スタートアップは通常、一つの主要製品なりビジネスイノベーションのおかげで成功する。Google が普通でなかったのは、二つの大きなイノベーションで成功した点にある。それはコアとなる検索製品と、キーワード広告のビジネスモデルだ。さかのぼること2000年、Google がすごく人気だったものの、まったく収入を生み出してなかった頃、彼らのビジネスモデルは先が見えないのというのが世間一般の見解だった。その後 Overture がキーワード広告を発明し、Google も同じモデルを採用した。これが激しくもうかることが分かったし、しかも珍しいことに広告主とユーザの双方により良い体験を与えた。 Facebook は旧来のインターネットのビジネスモデルに依存し
Jeff Potter『Cooking for Geeks ――料理の科学と実践レシピ』(オライリー・ジャパン) 原書を取り上げた関係でオライリーの高さんに献本いただいた。 ワタシはてっきり本書のことをプログラマーを中心とするギーク層に向けた料理の入門書なのだと思っていた。何かと理屈が多いが、でも実際に手を出すとなると料理が不得手なギークが料理を始めるのに適した本だろうと。そういう側面もあるが、本書はギークに向けた料理指南書というだけではなく料理ギークにも向けられた本である。要は料理の初学者だけを対象としておらず、なかなか本格的なつくりになっており、それにワタシはいささかたじろいだ。 ワタシも昔料理とプログラミングの共通性について「クックとハック」という文章を書いたことがあるが、本書も随所に料理をプログラミング関連用語で表現していてニヤリとさせられる。しかし、料理の下ごしらえをキャッシュの
トム・スタンデージ『謎のチェス指し人形「ターク」』(NTT出版) 以前トム・スタンデージについて書いた関係で、本書の訳者である服部桂さんから『ヴィクトリア朝時代のインターネット』とともに献本いただいた。 ワタシがチェス指し人形「ターク」のことを知ったのは、大学時代読んだ小林秀雄の『考えるヒント』に収録された「常識」の冒頭部の記述だった。 学生時代、好んでエドガー・ポーのものを読んでいた頃、「メールツェルの将棋差し」という作品を翻訳して、探偵小説専門の雑誌に売った事がある。十八世紀の中頃、ハンガリーのケンプレンという男が、将棋を差す自働人形を発明し、西ヨーロッパの大都会を興行して歩き、大成功を収めた。其後、所有者は転々とし、今は、メールツェルという人の所有に帰しているが、未だ誰も、この連戦連勝の人形の秘密を解いたものはない。ある時、人形の公開を見物したポーが、その秘密を看破するという話である
内田麻理香『おうちの科学: 暮らしに効く おいしい!うれしい!なるほど!サイエンス』(丸善出版) 著者から献本いただいた。 「おうちの科学」ということで、この「家事×科学」は著者の看板の一つだと思うが、それについての著者の本を読むのは処女作『カソウケン(家庭科学総合研究所)へようこそ』以来である。 本書の最初に「家事には理屈がある」という文章がある。本書は一言で言えば「理屈」の本である。と書くと、魅力的には思われないかもしれない。「理屈が多い」「理屈っぽい」と言う場合、その対象を誉めていることはあまりないからだ。 しかし、確かに「家事には理屈がある」、つまり科学という理屈からは逃れられないわけである。本書は、2ページ毎にその「家事×科学」の理屈を繰り出す本だが、その理屈を退屈なものでなく「おいしい科学」「うれしい科学」「なるほど科学」の三部構成でできるだけ日常生活に即したなじみやすい形で提
おっと、タイトルだけ見て、先週から話題になっているはてなブックマークボタンのトラッキング問題の話かと思われたかもしれないが、本文でははてなブックマークの問題はほとんど扱わない。また、この問題について未だご存じない方は、ARTIFACT@ハテナ系のエントリの後半にあるこれまでの流れを辿ると分かりやすいだろう(ワタシ自身の認知にも近い)。 はてなが新サービスとしてはてなブログをリリースして4ヶ月以上経つ。当初は招待制だったが、昨年末にオープンベータに移行して現在にいたっている。 ワタシもリリース時に招待されたので少し触ってみたが、機能が何から何まで足らないことにびっくりしたものである。そして、はてなは「アレ」をやらかしたのではないかという疑念が頭をよぎったが、まさかと思う気持ちと、短時間触っただけの印象で間違った批判をしてはいけないという自制、何よりそのあたりはじきに解決するのだろうという楽観
スティーブン・レヴィ『グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ』(阪急コミュニケーションズ) 江坂健さんより献本いただいた。 昨年のはじめスティーヴン・レヴィの新刊が Google を題材にしていると知ったときは、正直今更? と思った。ジョン・バッテル『ザ・サーチ』に始まり、近年でもケン・オーレッタ『グーグル秘録』など企業としての Google に取材した優れた本は既にいくつもある。 レヴィの前作のテーマは iPod だったし、『ハッカーズ』の著者もすっかりエスタブリッシュメント寄りになったものだ、と少し侮っていたかもしれない。 しかし、さすがレヴィだった。本書は Google 内部を長期にわたり取材した結果できた本で、さすがの読み応えだった。それだけ読むのに時間もかかったが…。 前述の通り Google 本はいくつもあるのに、著者が変われば、その創業期についての描写も変わる
デイヴィッド・ミーアマン・スコット、ブライアン・ハリガン『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社) 原書刊行時に話題にしていて、本書刊行時にも取り上げた関係で(たぶん)訳者の渡辺由佳里さんから献本いただいた。 というわけでワタシは原書も持っているのだが、邦訳のほうが装丁に力が入っていて、こちらのほうがお得ですよ、奥様。 本書がかなり売れてるらしいという話を聞いて、正直面食らっている。だって日本にグレイトフル・デッドのファンってそんな多くないだろ? 山下達郎なんか「世の中で一番嫌いなバンド」(「CUT」1991年7月号)とまで言ってるぜ? しかもそのデッドにマーケティングを学ぶなんてヘンな本だぜ? 正直に書くとワタシも熱心なグレイトフル・デッドのファンではない。しかし、ライブ演奏がツボにはまったときに催眠術的魅力、そしてデッドヘッズと呼ばれる大量の強固なファンベースを構築し
雨宮まみ『女子をこじらせて』(ポット出版) 著者の雨宮まみさんの名前をいつ知ったか思い出せないが、現在のはてなダイアリーに移転するずっと前に日記鯖(昨年サービス終了)で「NO! NO! NO!」という名前でウェブ日記をやってる頃からときどき文章を読んでいた。安田理央さんの共著『エロの敵 今、アダルトメディアに起こりつつあること』を読んだのが5年以上前になる。 本書の元となった連載はポット出版のサイトで昨年まとめ読みしたが、途中から読んでて止まらなくなる感じで、息を詰めて読み通した。すごいものを読んだ、しかし、ここまで書くのか、と正直思った。その書籍化を楽しみにしながらも、一方で(大きなお世話だが)それを少し怖く思ったりもした。 こう書くと本書がすごく深刻な本のようだが、その文章は十分に楽しめるものだ。それは著者の書き手としての力量があるだろうし、何よりその文章に「不幸を後にした感覚」の客観
書籍の入手 『情報共有の未来』は、達人出版会のサイトで購入できます(最新版は2012年2月20日更新のv.1.0.0)。目次など内容紹介もそちらでどうぞ。 正誤表 誤記・誤植に気付いた方は遠慮なく著者までメールください。 指摘をくださった tanakakenta さん、zunda さん、kdmsnr さん、高橋さんありがとうございます。 Page 位置 誤 正 修正版
アリアナ・ハフィントン『誰が中流を殺すのか アメリカが第三世界に堕ちる日』(阪急コミュニケーションズ) 本書のことは冷泉彰彦氏の「アメリカは「第三世界に堕ちる」のか?」で知ったのだが、江坂健さんに献本いただいた。 読んでいて何とも憂鬱になる本だった。この本は「第三世界アメリカ」という嫌な感じの言葉を最初に掲げ、アメリカは富めるものと貧しいその他大勢が二極化する第三世界のような国になるぞと訴える警告の書である。本書が憂うのはアメリカにおける中流層は「絶滅危惧種」になろうとしている現実である。 多くのアメリカ人は親の世代よりも貧しい、下層に生まれながら上にのし上がれるアメリカ人は少数、といった話は日本でも言われる話だが、本書がターゲットとする「安定した職を持っていた人、大学卒の学歴を持っている人、税金をきちんと払い、老後のために貯金し」ていた中流層が80年代以降ずっと痛めつけられ、そして200
Jessica Livingston『Founders at Work 33のスタートアップストーリー』(アスキー・メディアワークス) 原書を取り上げた文章を書いたことがある関係で、アスキー・メディアワークスの鈴木さんから献本いただいた。 自分の文章で原書を取り上げた時点でもいつになったら出るのかという感じで、それからも何年も経っているが、たまたまワタシは本書の作業進行が鈴木さん並びに訳者の大変迅速な仕事によりなされたのを知っている。悪いのは、2006年に10社競合の末に翻訳権を獲得しながら邦訳を出せなかった某社である。 さて、改めて訳書を読んでみたがサラッと読み流せる本ではなく、とても貴重な証言集で、気になった箇所に付箋をつけていったら数十箇所になってとても普通の読書記録におさまらないと頭を抱えている(この読書記録でもいくつも引用させてもらうが、それに収まらないものも多いので、今後はてな
以下の文章は、Mike Linksvayer による Urgent: Stop [U.S.] American censorship of the Internet の日本語訳である。 11月16日に米国議会は、著作権保持者の許可を受けない作品の流通を止めるという名目でインターネットの広範な検閲を不当、無謀、気まぐれに可能にし、促進する法案の公聴会を開く予定である。Public Knowledge が適切に要約する通り、この「Stop Online Piracy Act(オンライン海賊行為防止法)」は、以下の点で深刻に「インターネットの機能、自由、経済性を脅かす」ものになる。 権利保持者がウェブサイト全体を閉鎖させる速度を上げることで、法制度を短絡化する Domain Name System(DNS)サーバ間に不一致を引き起こし、ハッカー、個人情報の盗難、サイバー攻撃に対してより脆弱性を増
速水健朗『ラーメンと愛国』(講談社現代新書) なぜ近頃のラーメン屋の店員は作務衣を着るのか(本書では「作務衣系」という造語が使われている)、店内に相田みつを風の手書きの人生訓が飾られるのか問題については、確か『自分探しが止まらない』の頃から著者は言及していたはずで、新刊がラーメンをテーマにしていると知ったとき、今回はその線からの『自分探しが止まらない』の続編的な内容なのかなと予想していた。 しかし、本書はラーメンの普及と変化を通し、グローバリゼーションにおけるローカライズ、日本人にとってのもの作り、そしてナショナリズムまで論じる紛れもない日本文化論である。帯にある「ラーメンから現代史を読み解くスリリングな試み!」は大げさではなく、いささか強引な展開を感じさせるところもあるが、些細な手がかりからぐいぐい引っ張り読ませるところなど『ケータイ小説的。 "再ヤンキー化"時代の少女たち』を思い出させ
Jonathan Rasmusson『アジャイルサムライ――達人開発者への道』(オーム社) 原書刊行時に書名を面白がったのが縁となり、監訳者の角谷信太郎さん経由で献本いただいた。 実を言うと、本書を読んで楽しめるか、もっというとちゃんと理解できるか不安があった。ワタシ自身ソフトウェア技術者であるが、扱うソフトウェアの分野が本書が対象とする SI ベンダであったりウェブ開発者とは住む世界が違う。 ワタシが属する世界は今なおウォーターフォールな開発に支配されている。それに不満がないわけではなく、「アジャイル」という言葉にはずっと関心を持ってきたが、それを基本から真剣に学ぼうとしてなかった。 本書を読んでまず感じたのは、自分の「アジャイル」という言葉に対する期待の仮託、つまり現状のソフトウェア開発にまつわる不満、具体的にはドキュメント作成の手間などへの不満などに対する反抗心として勝手に期待してい
Jono Bacon『アート・オブ・コミュニティ――「貢献したい気持ち」を繋げて成果を導くには』(オライリー・ジャパン) オライリーの高さんに献本いただいた。 まず本書の存在を知った経緯の話から始めたい。ワタシが本書の著者である Jono Bacon のことを知ったのは、O'Reilly Radar で Can open source reinvent the music business? という記事を読んだのが最初だった。 この記事はタイトル通りオープンソースの流儀を音楽ビジネスに持ち込もうという著者が所属するバンド Severed Fifth の試みについて書いたもので、内容も音源は基本 CC ライセンスで配布とかなかなかラディカルなのと、文章から忠誠心のあるファンコミュニティを築いている自信を感じたのが興味をひき、いつか Wired Vision 連載で取り上げたいともう少し調べた
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