世界のごく一部の人々は、「非常に優れた自伝的記憶(HSAM)」と呼ばれる並外れた記憶力を持っている。自分の人生に起きたありとあらゆる出来事を一つひとつ正確に思い出せるというのは、いったいどんな感じなのだろうか? 彼女たちが日常的に味わうその苦労とは──。 その日の「すべての記憶」がよみがえる 2004年1月以来、レベッカ・シャロックは毎朝、自室のカレンダーのその日の日付にバツ印をつけている。31歳の彼女は他の人々と同様に、そうすることで時間の経過をつねに意識し、いま生きている日と過ぎ去った日を区別している。 しかし多くの人とは異なり、シャロックは5年前、10年前、あるいは15年前の特定の日に何が起こったかを思い出すことができる。 2007年7月21日は何曜日だったか? そう尋ねられると、土曜日だ、とシャロックは答える。ハリー・ポッターの大ファンである彼女は、その日に養父が店に行き、新発売の