労働の霊性を求めて。精緻な記録に校閲を加えた決定版 シモーヌ・ヴェイユ『工場日記』 冨原眞弓訳 佐藤紀子解説 2019.07.31 (ヴェイユ『工場日記』所収の冨原眞弓「工場の火花に照らされて――『工場日記』をめぐる追加考察」、および『工場日記』本文より再構成してお届けします。) 未熟練女工として働きはじめて3か月余、工場での体験にふれた手紙がある。名宛人はかつてのギリシア語級の生徒シモーヌ・ジベールだ。ヴェイユはこの優秀だがやや神経の細い生徒を気遣っていた。 工場就労による「実在的レアルな生との接触」を熱心に語った直後に、「ですが、ここできっぱりいっておきます――万が一、あなたが自分の人生をおなじ方向に進めたいなどと思いつかぬように――工場で働くようになって得た幸せがどれほどのものであるにせよ、それでもやはり工場で働かずにすむのなら、そのほうがずっと幸せだろうと」 これは影響をこうむりや