(注意:長いです。お時間のある時にどうぞ。) 私は「情報技術が私達の社会にどのような影響を与えるか」という問題に興味を持っています。ここでは、最近進歩が著しい深層学習が、科学の営みにどのように影響を与えるかを考えてみたいと思います。「高次元科学」とでも呼ぶべき新しい方法論が現れつつあるのではないか、と思うのです。 1.深層学習と科学 そもそも、この考えに行き着いた背景には、私が統計数理研究所で過ごした5年間がありました。統計数理研究所は大学共同利用機関として、自然科学の様々な研究を推進するための統計的手法を研究しています。ご存知の通り、統計的仮説検定や統計モデリングは、現代の科学における重要な道具立ての一部です。そのような道具立てが、科学の方法論の長い歴史の中でなぜそのような地位を占めるようになってきたか、に興味を持つようになったのです。 きっかけは、情報技術が科学の方法論をどのように変え
今日この記事 http://bzfd.it/2jkl8zc がホッテントリに入っていたが、正直言って早野龍五氏の科学者としての良心を疑わざるを得ない内容であった。 ところがブコメを見ると一部を除いて賞賛で溢れかえっている。未だに日本の科学リテラシーが低いことを痛感した。 ということで、彼の主張の何が科学的方法論としておかしいのか、挙げてみたい。 Disclaimerこの文章は、あくまでも彼の主張の問題をつくだけのものである。福島が安全かどうかというのは全く別の問題であり、ここではそれに関する議論は一切しない。 これでも噛みつかれそうなので一応書いておくが、別に私自身は特に何かを避けているとかはない。単に面倒だからだ。 例えばSTAP細胞のときに、たとえSTAPが存在したとしてもゲルの切り貼りなどをした小保方氏はguiltyであるという主張は広く受け入れられたが、全く同じことである。 たとえ
役割さえ与えられれば、人間はどんな悪者にもなれる 中野信子氏(以下、中野):大衆に判断をゆだねることの恐ろしさについてもう少しお話していきましょう。 人は、自分のことを「正しい判断をするものだ」と無自覚に信じている。これは多くの実験が示唆しているところです。 例えば、ミルグラム実験と呼ばれる有名な実験があります。これは、閉鎖的な状況で、権威者の指示にどれだけ人間が従ってしまうものか、その心理状況を調べるために行われた実験です。 実験者、つまり権威者から「あなたは生徒役の被験者が課題を間違ったら、罰として電気ショックを加えてください」と依頼される。あらかじめ、自分でもその電気ショックがどんなものか、体験もしてもらいます。 生徒が一問間違えるごとに15ボルトずつ電圧を上げるように指示されるのですが、それぞれの電気ショックボタンには「ストロング・ショック」やそれを超えた「エクストリーム・インテン
by clement127 科学がめざましい進歩を遂げるなか、すでによく知られているはずの人間の体内で新たな「発見」がありました。これまで腸を支えるための単純な構造だと考えられていた部分が、研究によって「消化器系の臓器」であることが判明。これによって、腹部の病気の原因解明が進む可能性があるとのことです。 98.6 F Ideal Temperature for Keeping Fungi Away and Food at Bay https://www.newswise.com/articles/98-6-ideal-temperature-for-keeping-fungi-away-and-food-at-bay The mesentery: structure, function, and role in disease - The Lancet Gastroenterology &
reason.com 今回紹介するのは、心理学者で疑似科学批判者で無神論者のマイケル・シャーマー(Michael Shermer)が Reason.com というサイトに掲載した「Are We Becoming Morally Smarter?」という記事。 シャーマーは昨年に『 The Moral Arc: How Science and Reason Lead Humanity toward Truth, Justice, and Freedom (道徳の弧:科学と理性はいかにして私たちを真実と正義と自由に導くか)』という本を出版している*1。副題の通り、人々が科学的・理性的な思考方法を身に付けるにつれて、他人に配慮した道徳的な思考もするようになったり、正義などの抽象的な概念を理解したり、宗教の権威を否定したり、民主主義などが普及したりして、暴力が減少してより多くの人々に権利や自由が認
2014年10月19日 日本人3人のノーベル物理学賞、シカゴじゃシラけているぜ! カテゴリ:カテゴリ未分類 米国企業の研究開発の末端の末端で働いている私は「日本人がまたやったなぁ!」とノーベル賞受賞者が発表された翌日に出勤すると言われるのが同じ日本人として嬉しい。 IPS細胞の山中教授の時は「人間の細胞をリセットするなんて、どこまで日本人は優秀なんだ?」と同僚達から言われた。 「日本人のIPS細胞の発見でうちの会社のバイオ部門も儲かるぞ!」と同僚達は喜び、うちのグループ企業の中のバイオ関係の会社や関連する検査装置を開発している会社の株価も実際に上がった。 しかし今回の青色発光ダイオードの発明での日本人の受賞に私は非常に迷惑している。 言っておくが、ノーベル賞受賞の会見なんて、世界中のテレビで放映されるものであり、勿論うちの会社の研究開発のメンバーは全員観ているし、シカゴのテレビでも
人工知能学会の表紙、学生だったこの子が一人前の研究者になって、やがて自分に似せたアンドロイドを開発するのか。 pic.twitter.com/nHhdP3rGVX — 忍殺語形態素解析辞書「チャドー」 (@njdict_Chado) 2014, 9月 7 そして時代を超えて受け継がれる箒・・・このアンドロイドの女の子にとって、箒や掃除をするという行為は、アンドリュー(NDR-114)にとっての木工と同じようなものなのかもしれない。 pic.twitter.com/4OZaLG1Gdf — 忍殺語形態素解析辞書「チャドー」 (@njdict_Chado) 2014, 9月 7 「人工知能学会」の表紙デザインに関しては当初一部の方々(特に女性の中で、ある特定の考えをお持ちの方)から、「国際的には」「自分が思うから」とオールマイティーカードを振りかざして色々と騒ぎ立ててのバッシングがあり、色々と
メイドさん表紙で物議を醸し出してしまった人工知能学会誌ですが、その次の号ではメイドさん視点の表紙になりました。
●筆者は何者か 人工知能という広大な研究領域の一角で、ヒューマンエージェントインタラクション(HAI)という研究分野を行っている研究者の一人です。HAIを簡単に述べますと、人と、人に見えるような「エージェント(ロボットや、仮想エージェント)」との相互作用を扱う学問です(実際はそれに限りませんが)。 その意味で、今回の表紙の件については、非常に興味を持って見守っています。 今回の件について様々な意見が出ていますが、会員の意見はあまり表に出てきていません。その結果、いくつか事実と異なる点が議論されていたり、曖昧になってしまっていたりする点があります。会員として気になる点もあるので、現状で知っていることを述べることにしました。 ただし、私は今回の会誌の編集に関わったわけでもありませんし、人工知能学会を代表する立場でもありません。わかっていないことも多いです。あくまで、一会員の意見として考慮頂けま
前回のエントリ「人工知能学会の表紙の件」への反応を中心に続編を書くつもりでしたが、むしろ現役の人工知能研究者の方の話が面白かったので、一応質疑応答形式になってますが、半分くらいはそっちの話題です。 現役の人工知能研究者はどう思ってるの? あのあと現役の研究者の意見を読む機会がありました。研究者としてもあの表紙は問題含みであると自覚している人もいました。また「ロボット工学三原則」のさらに先について、真剣に考えている研究者も少なくないようです。 大澤博隆さんの記事 一つは、人工知能学会の会員で、あの表紙が公開される前に関係者に意見を述べる機会があった大澤博隆さんによるブログ記事です。*1 Thinking Spot: 人工知能学会の表紙について、会員として調べた/考えたこと 大澤さんは人工知能研究の一分野であるヒューマンエージェントインタラクション(HAI)という分野の研究者です。人間のような
【ワシントン=中島達雄】2025年からの火星移住を目指すオランダの民間非営利団体「マーズワン財団」は12月30日、約20万人の移住希望者の中から1058人の候補者を選んだと発表した。 この中には、男女5人ずつ計10人の日本人が含まれているという。 今後、医学的な検査や訓練などを経て最終的に24人に絞り込む。25年には最初の4人が火星に住み始め、その後、2年ごとに4人ずつ増やしていく計画だ。移住者は二度と地球に戻らない。地上での訓練や火星に居住している様子をテレビ放映し、資金を集めていく考えだ。 同財団は2013年4~8月に移住希望者を募集。技術力や安全性を疑問視する声もあったが、世界中から20万2586人が応募した。希望者が提出した1分間のビデオメッセージや書類などを審査し、107か国・地域から1058人を選んだ。
神さまの殺しかた/宗教にハマらずに生きる方法 - デマこい! リンク先によれば、宗教観についての話題が盛り上がっているらしい。宗教で熱くなれる人が、インターネットという、テクノロジーに立脚したフィールドにそんなに存在するのか!唾を飛ばして宗教に言及しあっているさまを観ながら、「ハイテク社会になったからといって、人間の心や感情は宗教全盛の頃とあんまり変わりないのだろうなぁ」と、改めて思った。 ときに、宗教は科学と対立する、といわれている。砂糖玉を奇跡の薬とありがたがるような話やパワースポット的な話は、実証主義な科学とはいかにも相性が悪そうだ。こうした科学との相性の悪さは、新宗教やスピリチュアル方面だけでなく、古典的な宗派宗教のなかにもそれなりみかけるもので、例えば天国と地獄、浄土や三千世界といった概念は、科学だけを信じたい人からすれば、噴飯モノだろう*1。 尤も、宗教を信仰している殆どの人は
いわゆる"Y染色体アダム"に関する興味深い論文*1が発表された。この研究結果が直接的に示したのは、Y染色体アダムはこれまでの研究の推定よりも、かなり昔の人物だっただろうということだ。それ自体は予てからこの問題に関心をもっていた人でなければ、どうということは無いように聞こえるかもしれない。私が個人的に面白いと感じたのは、むしろこの発見の経緯とこの結果が示唆する人類の起源についての興味深い仮説の方だ。 "Y染色体アダム"とは誰か この話を本格的に始めるとなかなか本題に入れない。ここでは簡単な説明に留めることにしよう。詳細で厳密な説明は、例えばリチャード・ドーキンス著の『祖先の物語』の上巻で確認してほしい。 祖先の物語 ~ドーキンスの生命史~ 上 作者: リチャード・ドーキンス,垂水雄二出版社/メーカー: 小学館発売日: 2006/08/31メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 45回この
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