紙版画作家・坂本千明さんが初めて飼った猫で、5年前に亡くなった楳(うめ)ちゃんとの日々をつづった詩画集『退屈をあげる』のあとがきに、こんな一説があります。 坂本さんと出会うまで野良猫として生きていた楳ちゃんが、坂本さんに拾われ家猫となったこと。その後、坂本さんと暮らした日々。それらがしあわせだったかどうか。聞くことのできない、知ることのかなわない、坂本さんの言葉を借りるなら、開けて中身を確かめることも、味わうこともできない菓子箱を坂本さんは今も大切に抱えて生きています。 「猫に限りません。飼われている動物がしあわせどうかは、ずっと謎のままです。わからないから考える。考えてもわからないからまた考える。でもやっぱり答えは出ないから、結局は飼い主自身がどうだったか、なのでしょうね」 坂本さんは“ある事”をきっかけに『ねこの室内飼いのススメ』というフリーペーパーを作成します。それを周囲の人に配った