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WWDC24
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今年の賃上げは、連合の1次集計で5.28%と、1991年以来の高さになりそうだ。これを受けて日銀は週上げに利上げに踏み切る運びで、名実ともにデフレ脱却の画期と言える。また、人手不足を反映し、初任給を大きく引き上げる例も多い。裏返せば、デフレ期には、若者の苦境が続いてきたということである。足下の結婚や出産は低調だが、こちらにも変化は訪れるのであろうか。 大学卒男性の初任給の推移を、消費者物価指数の総合で割って実質化したもので見ると、わずかながら増えているが、さらに社会保険料を抜いたものを試算すると、横ばいというか、アベノミクスの頃は減っている状態だ。これでは、結婚や出産が難しくなるのも無理はない。社会保険料にも責任の一端はある。なお、2020年の増加は、通勤手当を含むように集計方法が変わっただけで、その後も減り気味である。 合計特殊出生率は、2015年の1.45人をピークに下がり始め、201
日経平均がバブル以来の最高値を更新して、日経は「もはやバブル後ではない」としたが、本当に日本経済がマズくなったのは、バブル崩壊後ではなくて、デフレが始まった1997年以降だ。株価が大幅に下落した後のジュリアナ東京の隆盛をバブルの頃と思ってしまうのは、1997年までは、まだ余裕があり、実際、バブル崩壊後も、消費は伸び続け、豊かさは増していた。挫折したのは、1997年からなのである。 ……… 10-12月期のGDP速報では、実質の消費が3期連続で減少し、2019年の消費増税以降の伸び率の平均が、2014年増税以降のそれを下回ってしまった。日本経済は、バブルの1989年の消費税の導入時は別として、増税のたびに、消費の水準と伸び率を下げてきたが、2019年増税も、その例に漏れずである。特に、今のような物価上昇局面では、値上がり分にも課税されるので、なおさら重荷になってしまう。 バブル崩壊が日本経済
大幅な賃上げは、昨年、突如として始まった。それまで、収益が上がろうと、物価高になろうと、賃上げは鈍かったのに、売上げが伸びたことで実現した。それも、名目だけで、数量では伸びていないにもかかわらずである。正直、驚きだった。売上げが伸びる状況なら、賃上げをしてても労働力を確保して取りに行くのは、経営者としたら当たり前ではあるが、現実を目の当たりにしないと、思い至らなかったわけである。 名目の売上げが増したのは、消費者が値上げを受け入れてくれたからである。消費増税のときのように、名目を伸ばさず数量を減らすことをしなかった。背景には、コロナ禍で温存されていた所得が充てられたことが挙げられる。可処分所得があれば、実質の消費水準を維持しようとするわけである。裏返せば、アベノミクスでデフレ脱却ができなかったのは、可処分所得を政策的に削り続けたからだった。 今年の春闘では、昨年を上回る賃上げが予想されてい
岸田政権は、防衛増税や少子化対策への保険料上乗せの検討を進めているだけなのに、「増税メガネ」と誹られ、イメージ払拭に焦って、所得減税を打ち出した。物価上昇分にも消費税が乗り、せっかくの賃上げも社会保険料で抜かれるから、特に、若い世代の不満は強い。再分配は喫緊の課題であり、若い低所得層が焦点だが、少子化対策で非正規の育児休業給付を先送りしたように、どうしてこうも肝心なところを外すのかね。 ……… 所得減税は1年限りの定額となるようだ。還元対象の2023年度の所得税収は、23.5兆円程と予想され、予算からは2.5兆円程の上ブレ、前年度決算からは1兆円程の増収であることを踏まえると、納税者数は約5千万人だから、1人当たり2万円で1兆円規模といったところだろう。夏に支給された住民税非課税世帯への給付は3万円だったので、これを上回らない程度と思われる。 所得減税は、低所得者には不利であり、例えば、年
賃上げのためには、売上げが伸びていかないといけない。それには、財政が賃金増の上前をはねて消費を鈍らせ、売上げを衰えさせている場合ではない。いまや、補正さえやめれば、財政は「黒字」になるところまで来ており、補正を段階的に減らしつつ、税や社会保険料の増を部分的に還元することが求められている。十年一日、「増収はすべて財政再建に」では拙い状況に変わっているのである。 ……… 8月の毎月勤労統計は、常用雇用が前月比0.0で横ばい、現金給与総額が+0.4だった。実質賃金の低下ばかりが注目されるが、雇用×時間には高まりが見られ、時間当たり給与も減ることなく、雇用×給与も高水準にある。この2か月は雇用が足踏みしたが、人手不足が強く、今後は増加が見込まれるので、それに連れて、総雇用者所得が拡大して、消費も伸長することが期待できる。 8月の統計局CTIは、名目が前月比0.0で、7,8月平均は前期比+0.5とな
「106、130万円の壁」について、社保審年金部会の議論が始まったが、説明資料を眺めると、あまりやる気を感じられないね。浮かんでくるストーリーは、「対象の人は限られるし、損得での誤解もあるし、制度を変えようとすると、公平性などで難しい問題が出てくるから、弥縫策で勘弁してくれ」というところかな。そして、最後に英国の例を出し、「本気でやるなら、こうなるが、再分配の強化なんか、政治はできないでしょ」と語っているかのようだ。 ……… 「壁」は、低所得層にも一律に賦課することの無理さかげんの一つの断面である。なにせ、年金や医療等の社会保険料の計31.65%に、消費税が10%課された上に、所得税・住民税が1.5%程かかってくる。低所得で、こんなに取られると、生活は苦しいし、賦課から逃れようとするのも無理はない。こうした一律の重い賦課は、デフレ経済で賃金が上がらない中、引き上げを重ねてきた結果である。
金融政策では設備投資は動かない。動かすのは輸出と住宅である。需要があれば供給を増やすべく設備投資をするという平凡な理屈である。他方、増税で消費を減らせば、消費向けの設備投資が萎むから、全体としては景気が加速せず、デフレが続く。なまじ、金利が投資を調整するという教科書的知識があると、かえって、現実が見えなくなり、リフレで解決といった「宗教」に陥るのである。 ……… 4-6月期GDP1次速報のグラフを素直に眺めると、設備投資の動向が輸出によく似ていることが分かるだろう。そこで、回帰分析という手法を用いて、輸出と住宅で予測値を作ると、ピッタリ重なってくる。専門的には、2010~19年をサンプルに、コクランオーカット法でゼロ切片にすると、重決定R2が0.999くらいになる。要するに、設備投資はほとんど説明できるという意味である。 2013年の黒田日銀の異次元緩和は、円安にして、輸出を増やし、設備投
米国の4-6月期GDPでは、設備投資の実質の前期比は年率で7.7%の高さだった。FRBの利上げが始まった昨年3月から1年以上経つのに衰えない。他方、住宅投資は、利上げ開始の直後から大きく減り、未だマイナスが続く。ドル高については、改めて言うまでもない。教科書では、金利で設備投資が調整されることになっているが、現実には、金利は住宅と為替には効いても、設備投資には効かないというのが経験則であり、今回も、いつもどおりになっている。 その設備投資が補助金などの産業政策で動くのかというと、これも違う。日経が半導体で報じているように、促進策で一時は盛んになっても、需要が見込めないと萎んでしまう。設備投資は需要に従って行うという個々の企業の行動原理そのものである。金融緩和と産業政策で収益率を高めると設備投資が増えるというのは、机上の空論で、そんなものを信じて実務に当たっていたら、ヤケドをしてしまう。理論
政府経済見通しの年央試算が公表された。これで2023,24年度の税収を試算することができる。2023年度の名目成長率が2.1%から4.4%に上方修正されたことから、税収も上ぶれ、2023年度は前年度決算比+4.2%で3.0兆円増の74.1兆円、2024年度はそこから+3.9%で+2.9兆円の77.0兆円だ。地方の税収も国に準じて上ぶれすると、2024年度には、基礎的財政収支の赤字をなくす財政再建の目標に1年前倒しで届く形になる。 ……… 岸田政権は、特に何をしたわけでもないが、安倍政権ができなかったデフレ脱却に成功し、見果てぬ夢だった2025年度の財政再建もクリアしそうだ。「検討使」などと陰口を叩かれつつも、結果オーライである。敢えて言えば、余計な「改革」をしないで、流れに身を任せたことが勝因かもしれない。 財政再建については、近々公表される「中長期の試算」では、税収の上ブレを無視するため
専業主婦がパートを増やすと、いきなり社会保険料がかかり、手取りが減って「損」をする問題がある。お役所は、将来、年金で還ってくるから、損ではないとするが、目先のカネが切実な庶民の実状を分かっていない。保険料の免除を人件費削減に使ってきた事業者も、このところの人手不足で何とかしてくれと言い出したことで、雇用保険を流用する弥縫策で対処するようである。 ……… 専業主婦から保険料を取らない最大の理由は、本人の収入がないからだ。だからと言って、無年金にもできないので、3号被保険者にすることで、基礎年金を与えている。専業主婦でなくても、収入がないなら、手続を踏めば、税方式によって半額は与えられるので、半額分が問題だとは言える。しかし、そもそも半額では、貧窮の老後になる。それで良いのかということがむしろ重要だ。 結局、十分に負担できない低所得者の年金の負担と給付をどうするかの問題なのである。それは、非正
4月の人口動態が公表になり、1-4月期の出生は前年同期比-5.0%となった。合計特殊出生率なら1.20人のレベルで、少子化の加速が止まらない。しかも、先行する婚姻は-10.6%もの低下である。将来人口推計の出生中位の想定を大きく下回りそうで、事態は深刻だ。他方、新たな少子化対策は、結婚できた者への子育て支援ばかりで、結婚がままならない者への手当てを欠いた的外れなものになった。衰退する国とは、こういうものだろうと思う。 安倍政権は、2019年に10%消費増税の半分を「人づくり革命」に充てるということで、1.7兆円を幼児教育の無償化などに使い、子育て支援を行ったのであるが、乳幼児を外したこともあり、出生率を向上させるどころか、2019,20年と逆に大きく低下した。子育て支援は、既に生まれている子供を対象にするため、効果が薄くなりがちで、その経験に学ぶべきだったが、結局、同じ子育て支援を繰り返す
2022年の合計特殊出生率が過去最低の1.26になったことについて、官房長官は、静かなる有事だとしたようだ。有事の割には、勝つ戦略の立案より、財源をどうするかが焦点になっているのは、情けない状況だ。少子化対策において、足りないのは財源ではない、理念の徹底である。勝つために何が最善かを考えるのではなく、財源の枠でやれることを考えてしまう。それでは、戦う前に負けが決まる。どうして、この国は、こうなってしまうのかね。 ……… 面倒くさいので、先に財源を3.9兆円出しておく。少子化なんだから、子供に関する財政負担はどんどん減っていく。12年後には、小中高の人口は270万人減る。1人当たり100万円の学校教育の公費負担があるのだから、2.7兆円の財源が出る。同様に、保育は、74万人減の1人70万円で0.5兆円、児童手当は、297万人減の1人13.2万円で0.4兆円だ。合わせて、3.6兆円で、偶然にも
少子化が進むのは、若者が結婚しにくくなったからで、結婚しにくいのは、経済的に苦しいからである。しかし、そこからは目を逸らして、結婚できた人への支援をもっと手厚くすることで、出生を増やそうと考える。子育てが大変という声は大きいが、非正規でカネがない者が「結婚できるようにしてほしい」と主張したりはしない。的を外し続けるのは、政治的な理由がある。 ……… 異次元の少子化対策は、メニューが出揃い、財源論に移っている。非正規への育児休業の拡大は入っているようだが、注目を集めるのは、児童手当の拡大だ。高校生への拡大、第3子以上への増額、所得制限の撤廃と、必要な施策とは思うが、それで出生が大きく増えるかというと、望み薄だろう。今、子供を持つか決める立場からは、高校生手当は15年後であり、第3子以上は出生の2割足らずである。まして、保育の充実は目に見えない。 少子化を緩和するには、若者の認識を変えなければ
5/3のFRBの0.25%の利上げで、政策金利は5.25%となって、インフレへの対応も打ち止めのところまできた。確かに、物価上昇は収まってきているが、副作用の金融機関の破綻も相次いでいる。果たして、ここまで上げる必要はあったのか、そもそも、利上げには、意味があったのだろうか。主作用が乏しいのなら、副作用だけの金融政策とは、何のために行われるものなのだろう。 ……… 日銀の異次元緩和は、いくら金融緩和をしても、物価を上げられないことを証明した。それでは、逆はどうか。金融政策は、緩和も、引締めも、資産には効いても、生産には効かないのが経験則である。2022年の米国経済の動きを、ISM製造業指数で見ると、FRBの利上げと並行して、生産が低下しているが、低下は前年の半ばから始まっており、既に在庫も上昇していたから、利上げが効いたというより、自然に崩れたと見るべきだろう。 他方、利上げの後、米国の住
少子化対策のたたき台が公表されたが、財源を巡って迷走しそうな雲行きである。そして、今回も、乳幼児期の支援という肝心な部分が後回しにされそうで、この国は、また失敗するのではないかと心配だ。どうして、こうなるのかね。要するに、少子化対策の意味とか、財源確保の仕方とか、基本的なことがぼんやりしたままなので、刺さる施策が立案できずにいるのだと思う。 ……… まず、財源だが、2.5兆円は難なく用意できる。12年後には、小中高の児童生徒が250万人減るので、1人当たり年100万円の学校教育の公費負担が減るからだ。6年後だと、1.1兆円である。現時点で、小中の給食費の無償化には3,650億円あれば良く、高校生に月1万円の給付をしても3,000億円で済む。財源は、徐々に現れるので、始めは公債で賄う部分があっても、その程度は許されよう。 続いて、すべての女性に育児休業給付をするには7100億円が必要であり、
少子化対策で児童手当が焦点になり、財源論が喧しくなっているが、皆、何か勘違いしているのではないか。理屈から言えば、既に生まれている子供への手当増は、ほとんど意味がない。例えば、来年、高校生に児童手当を与えるようにしても、来年、高校生の人口が増えるわけではない。増えるのは、来年、生まれた子供が高校生になる16年後である。 そうであれば、財源については、16年後に給付することを決定し、16年かけ、ゆっくり用意すれば良いことになる。2025年度には、基礎的財政収支の赤字をゼロにする財政再建目標が達成されるので、それ以降は、成長に伴う税収増を新政策に充てることも可能になるので、増税なしに児童手当を拡大することは難しくない。 ……… もう一度、角度を変えて説明しよう。高校生の親は、だいたい40代半ばである。そんな親に児童手当を与えたとして、新たに子供を産むだろうか。年齢的に無理があり、産みたくても望
10-12月期GDPの1次速報は、実質の前期比が+0.16%で、年率換算が+0.6%の成長だった。水準は、消費税前の2019年7-9月期と比べると、まだ10兆円近いギャップがあるが、名目だと並ぶところまで来ている。雇用者報酬は、名目では前期比+0.8%と順調に増えているので、今後、賃上げを通じて、消費を中心に、どこまでGDPを伸ばしていけるかだ。そうなれば、金融政策でのリフレの手仕舞いも見えてくるというものである。 日本経済のGDPの読み方は、実はシンプルで、輸出の増→設備投資増→消費増という流れである。だから、輸出が見通せれば、景気の先行きが分かる。ただし、財政が消費への波及を邪魔しなければである。それゆえ、バラバラな輸出・住宅・公共を合成すると、設備投資にピッタリ重なるし、それに消費の推移が似てくるわけである。先行きは、輸出に陰りが見えるものの、足下の消費は、ここまでの蓄積で増している
パート主婦の「年収の壁」を取り払うには、本コラムが1/1に提案した社会保険料連動型の税還付による勤労者皆保険の実現によるしかない。1.1兆円で「年収の壁」どころか、積年の課題である非正規への差別も解消できるし、年金財政の改善で長期的な財政負担も軽く済むから、これ以上の「賢い支出」なんてない。今度は、正解にたどり着けるかな。目先の緊縮に拘って、経済も社会も財政も悪くするお決まりのパターンになるだろうけど。 ……… 12月の商業動態・小売業は、前月比+1.2となったが、前月のマイナスを埋める程度である。これで10-12月期の前期比は+1.3であるが、CPIの財が+2.2にもなっているため、除すると-0.8に落ちてしまう。それでも、消費は、物価高の割には、がんばっているように見える。統計局CTIマクロは、実質では、消費増税後の水準が天井になっているのに対し、名目では、2019年前半のピーク時を超
「中長期の経済財政に関する試算」の2023年冬版が公表された。このままだと、2023年度に一気にGDP比で4.8%もの緊縮になり、翌2024年度も3.0%の緊縮を連発でする姿になっている。こんな大きなデフレ圧力を本当にかけたら、経済は壊れてしまう。しかも、当局は税収を低めに見積っているので、緊縮はもっと強まる。急速な財政再建を喜ぶなんてバカげており、安定的な経済運営のため、どれくらい財政を出さなければならないか、まじめに心配しないといけない。 ……… 大幅な緊縮になるのは、経済がコロナで低迷する中でも、税収が大きく伸びてきたからである。2021年度に6.2兆円増えており、2022年度は最大5.7兆円の増が見込まれ、2023年度は更に2.0兆円の見通しだ。この3年で、社会保障費は1.2兆円しか増えていないので、緊急対応のための予備費や補正予算が剥落すれば、12.7兆円もの急速な財政再建になっ
明けて今年は、黒田日銀総裁の交代が確実視されていて、金融政策の最大の課題は、リフレの後始末ということになろうか。円安が進んだときにやっておけば良かったものを、機を逃してしまったので、苦労するような気がする。そして、財政の最大の課題は、大幅に増えている税収によるデフレ圧力をいかにかわすかという贅沢な悩みになる。課題も悩みも見えてない人が多いだろうが、それがリフレの失敗の原因でもある。 ……… 経済政策に限らず、失敗に学ぶのは大切だ。リフレをやってみて、どれほど大規模に金融緩和をして、投資促進の成長戦略と組合せても、需要管理が疎かでは、経済を満足に成長させられないことは、良く分かったと思う。それが分かっただけでも、大きな成果である。もっとも、経験に学ぶという愚者の成果すら得ていない人も結構いるようなのが、やや残念ではある。 他方、需要管理の使い方は、なかなか難しいというのも大事な教訓だ。米国は
11月の国の税収は、累計の前年同月比が+12.1%と極めて好調である。中間の納税月だった法人税は+31.0%にもなり、所得税は+11.6%、消費税は+6.1%と軒並み高い。11月までの実績に、GDPと企業業績の見通しを組み合わせて予測すると、2022年度の税収は72.8兆円になり、前年度決算から+5.7兆円もの伸びになる。2021年度の前年度比+6.2兆円に続き、アベノミクス期の平均増収幅2兆円の3倍近い異次元の税収増である。岸田政権の税収増の「倍増計画」は大成功を収めている。 岸田首相は、伊勢神宮参拝後の年頭会見で、出生の激減を受け、異次元の少子化対策に挑戦するとしたが、子ども予算の倍増をすれば、黒田日銀総裁が異次元緩和で2倍をキャッチフレーズにしたので、「異次元」になるという意味なのだろう。むろん、「子ども保険」などの負担増とセットになるので、そちらも倍増となる。激増の税収は、すべて財
~1.8兆円の再分配による少子化の緩和と非正規の解放~ この世界で生き続けること、その全てを愛せる様に、祝福を君に はじめに 2022年の合計特殊出生率は、過去最低の水準にまで落ち込む。これは、経済的にも、社会的にも危機的な状況だ。子世代が1.67倍もの損な負担を被るどころか、人口が崩壊して社会の維持が困難になる。この国に生まれたこと、この時代で生き続けることが、本当に無理なものになっている。だけど、これは運命ではない。少子化の緩和に成功している先進国がある以上、政策的な結果でしかない。受け入れるしかないと思うのは、誰かが描いたイメージや、誰かが選んだステージに、甘んじているだけだ。 日本が少子化の圧力を跳ね返せなかったのは、若者への経済的な支援が薄かったせいである。いまだ、非正規には、育児休業給付もない。0.7兆円あればできるのに、そうなるのは、「財源がない」とする論理だ。税の自然増収が
行動を変えるには、認識を変える必要がある。少子化対策をするのは良いが、戦力の逐次投入をするのではなく、戦略性を持って行うべきだ。例えば、非正規への育児休業給付を実現すれば、出産しても生活費の心配はないという認識が作られ、結婚ができるという行動につながる。対照的に、育児用品に10万円分の支援をするとしても、少しは助かるという意味付けしか与えられなくては、結婚につながらない。 ……… 2022年は少子化が激化し、危機的様相を呈している。正しくは、危機は既に起こっているわけだから、危機に備える防衛問題以上に焦眉の急である。それでも、防衛問題と同様、対応に必要な財源の確保で揉めそうであり、東日本大震災のときに、復興の中身より財源の増税で議論が白熱したことが思い起こされる。少子化が緩和すれば、財政的にも投入以上の成果が期待できるという決定的な違いはあるにせよ、意味付けは大事である。 女性への育児休業
資源高と円安に伴う値上げが相次いだことから、実質での消費は低下しており、消費者態度に端的に現れている。賃金が上がるまで耐えるしかないが、他方、生産で陰りが出て来てしまった。欧米の引締めによる減速と、中国のゼロコロナの混乱で、輸出は崩れないだけで御の字であり、成長の牽引は厳しい。 米国の金利は峠を過ぎ、黒田日銀の粘り勝ちで、異様な円安は15円も戻した。いつの間にか、ターゲットが賃金に変わったようだが、金融緩和が足りないからではなく、財政の抑圧が過ぎて、消費が弱いからだ。生産性格差インフレーションが足りないので、2%目標も達成できない。やはり、いかに消費を増やすかである。 ……… 10月の商業動態・小売業は前月比+0.2だったが、10月のCPIの財が前月比+1.0にもなっており、実質ではマイナスである。11月の都区部は前月比+1.3である。物価高に影響され、11月の消費者態度指数は、前月比-1
第2次補正予算が閣議決定された。予備費分を除いた国債の増額は18.1兆円であり、名目GDP比で3.3%にもなるので、全部が直ちに需要に上乗せされたら、日本経済が暴走しかねない規模である。しかし、いつものごとく、誰も、そんなことは心配しない。安心できると言うか、甲斐性がないと言うか、効きの悪い経済対策は何のためにしているのかなと、毎度、考えさせられるのである。 ……… 経済対策の効きの悪さは、理由の一つは所得移転の多さだ。電気・ガス、燃料油の値上がり分の一部を補填するのに6.1兆円が充てられる。値上がりで実質所得が削られるのを軽減し、現状の低所得層の消費や高所得層の貯蓄を減らさないようにするだけだから、効いてはいるけど、見えにくい。これが国債増額分の1/3を占めており、需要の上乗せでなく、維持なので、成長が加速されるものではない。 次に目立つのは、投資の促進で、6兆円ある。直近のGDPの民間
国民年金の保険料納付を64歳まで延長することについて、「100万円も負担増!」なんて反応が出ているけれども、給付は、国庫補助が付いて、負担以上に増えるから、むしろ、「得」なんだよ。そうでなければ、財政投入に頭を悩ますこともない。こうした、目先の負担しか見ないのは、仕方のないところはあるが、後のことも考えないとね。まして、世代を超える無限の話となると想像もつかないかもしれない。 ……… 公的年金は、親世代を子世代が支える賦課方式になっている。そのため、子世代が6割に減る少子化が起こると、10/6=1.67倍の負担が必要になって、子世代には、7割増しの分が「損」になってしまう。ここまでは常識的だが、長寿化で高齢者が増えたり、給付水準を引き上げたりして、子世代の負担が大きくなる場合は、逆の「得」が生じる。なぜなら、子世代も、老後になれば、より長い、あるいは、より多い給付を受けるようになるからだ。
ドル円は150円に及び、二度目の円買い介入となった。日米の金利差拡大で円安になっているけれども、米国の金利は5%の「上限」に近づき、いつまでも続くわけではない。この7か月余りの円安局面は、YCCやマイナス金利の修正には良い機会だったはずだが、これを逃してしまうと、直すのは一段と難しくなる。黒田日銀総裁は、金融緩和が成長を導くと、本気で信じているのだろうなあ。 ……… 日本の成長は、輸出次第だ。それは、バブル崩壊が終わった1995年以降、極めて明確である。だから、金融緩和をして円安にしても、輸出が増えなければ、成長しない。そのため、日銀が、輸入物価の高騰というデメリットを覚悟で、金融緩和を継続しても、まったく意味がない。デフレ脱却を目指す金融緩和は、輸出促進の円安狙いという本音を隠す建前というわけではないようだ。 デフレ脱却と言っても、モノの物価は既に上がっており、サービスや賃金が上がってい
門間一夫さんの『日本経済の見えない真実』の中で、最も感慨深かったのは、サービス業の代表として散髪を例に挙げ、需要が生産性を伸ばすことを分かりやすく説明したところ(p.101-3)だった。世間では、この「真実」が分かっていないために、緊縮財政で消費を抑圧しつつ、投資を産業政策で促進して、成長を向上させるという、分裂した戦略が、相反を知らぬまま、推し進められている。成功しない戦略にしがみつく姿は痛々しいほどだ。 ……… 経営者からの「労働生産性を上げるには、どうすれば良いのか」という相談に、「賃金を上げることですね」と答えると、「何を言ってる」みたいな顔をされる。エコノミストとしては、賃金は付加価値になるから、当然の答でしかないが、経営者は、付加価値ではなく、モノやサービスの数量を増やすことをイメージしているので、ちょっと間抜けなやり取りが生じてしまうのである。 例えば、美容室の労働生産性を上
日銀出身の門間一夫さんが『日本経済の見えない真実』の終章に「重要性を増す財政の役割」を持ってくるとは、少し意外だった。財務省の領分は犯さないのが日銀の不文律だと思っていたのでね。むろん、門間さんの主張は、必要だし、正しい。マクロ経済を運営するのに、金融政策と需要管理は車の両輪で、独立して行うのは無理があり、日銀が財政に対して主張することは、政策的な意義がある。 ……… 2014年の異次元緩和第2弾は、巷間、消費増税を促すものだと言われた。2%の物価目標を達成したいのであれば、日銀は、消費を弱める増税を諫めるべきだったろう。「財政再建がなされなければ、金利が上昇に向い、金融緩和の効果が失われる」というロジックは、現実味の乏しいものだった。もちろん、財政とは関係なく、日銀がやれることをやるというのも、一つの在り方ではある。 もっとも、財政金融を整合させる以前の問題として、門間さんが提言するとこ
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