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レイングッズ
yamagatacakes.hatenablog.com
ずいぶん間が空いた山形月報ですが、今回は文学好きの間では話題ながらも難物と言われるコーマック・マッカーシー遺作2部作を中心に、ホームズの格闘術と、財政金融政策の話。文学にネタのような真面目な格闘術、さらには経済話といつもながらバラバラですが、さて、どんな話になるでしょうか! ずいぶん間が開いた (一年以上かよ!)。いつもながら、採りあげるつもり満々の本が一冊あって、それをどう料理しようか考えるうちに、ずるずる先送りになってしまうというありがちな話ではあります。 で、今回扱うのは、それではない。 コーマック・マッカーシーの遺作となる2部作『通り過ぎゆく者』『ステラ・マリス』だ。 マッカーシー『通り過ぎゆく者』 コーマック・マッカーシーは、現代にあって、本当の意味での文学を書けた数少ない作家の一人だ。そして、それは文学というものの意義が変わってきた現代では、決して容易なことではない。 村上龍は
2021年7月27日 「新・山形月報!」、今回もキューバで山形さんが読んだ本についてお届け! 話題の劉慈欣『三体』シリーズ(早川書房)、そしてJ・D・バナール『宇宙、肉体、悪魔 新版』(みすず書房)、小島庸平『サラ金の歴史』(中公新書)を論じます。 キューバは、隔離が終わって外に出られるようになったんだが……うーん。まずコロナで、あらゆる飲食店はテイクアウトのみ。そうでなくても、アメリカの制裁のおかげで激減していた観光客が、もはやゼロに近い。観光施設などはすべて閉鎖。かつて賑わっていた町は壊滅状態。お金も、送金ルートがアメリカに潰されたおかげでドルが使えなくなり、国際決済もできず、物資不足であらゆる店に長い行列ができて、ちょっとどうしようか、という感じ。 ホント、アメリカのキューバ制裁なんて、メンツだけの話で実利がぜんぜんないし、それに乗じてロシアや中国が入り込んで来てるから、安全保障的に
復活も一時の思いつきかと言われていた「新・山形月報!」、さすがに2回目くらいは続く模様。今回は香港の魔窟と言われた九龍城砦をめぐる本とスマートシティ、さらにはプーチンの戦争と民主主義についてあれやこれや。さて、どんな話になるでしょうか! 以前は、毎年二、三回はでかけていた香港も、2019年からの逃亡犯引き渡し反対運動に端を発するデモの騒乱、さらにはその後のコロナで、もうまったく行かなく/行けなくなってしまった。最後に行ったのは2019年の末か…… そんな香港に、この4月あたりに久しぶりに行けそうなんだが、楽しみな一方で恐いような。2023年春のいまは、もう渡航制限は解除され、すでに完全に往き来できる状態になっているのだけれど (ただし入るときに抗原検査の結果は見せねばならない)、この数年でもう都市としての位置づけが完全に変わってしまった。かつては、香港というのはそれに隣接する深圳との対比で
なぜかいきなり復活した「新・山形月報!」、今回はバルガス=ジョサ『ガルシア=マルケス論:神殺しの物語』、『ソビエトアジアの建築物』、小泉悠『ウクライナ戦争』です! 半世紀ぶりに刊行された幻の名著にリアルタイムの戦争分析と社会主義モダニズム建築についてあれやこれや。さて、どんな話になるでしょうか! お久しぶり。2022年はじめ、この新・山形月報が終わるとき、なんとか間に合わないかなと思って待っていた本があって、それがこのバルガス=ジョサ『ガルシア=マルケス論:神殺しの物語』だった。 バルガス=ジョサ『ガルシア=マルケス論:神殺しの物語』 この本、知る人ぞ知る史上最初期 (1971年刊) にして最強のガルシア=マルケス論として名高い一方、その後バルガス=ジョサとガルシア=マルケスが特にそのキューバをめぐる政治的見解の相違から仲違いして、その後バルガス=ジョサがガルシア=マルケスをぶん殴る事件が
2022年5月26日 今回は、ウクライナ侵攻で世界の注目を集めるロシアのプーチン大統領に関連する書籍を解説! 『プーチン、自らを語る』『プーチンの世界』『ウラジーミル・プーチンの大戦略』、そしてウラジーミル・ソローキンの『親衛隊士の日』!? ぜひお読みください。 さて、実質的に前回の続きとなる。前回は実は、今回のやつの前振りみたいな感じで書き始めたら長くなってしまったのだ。 結局のところ、いまのウクライナ侵攻はプーチンの胸先三寸で、終わりもプーチン次第ということらしい。すると、どうしてもプーチンの頭の中についてもっと知りたいのが人情だ。何を考えてこんな勝ち目のない攻撃を……と今になって思うのは後知恵で、当時は3日ほどでウクライナが潰れるとかなりの人が思っていた。それでも、ストレートな軍事侵攻などという思い切った手に出ること自体、多くの人には予想外だった。彼はどういう計算のもとで動いたんだろ
2022年6月24日 「新・山形月報!」、今回はまだ最終回ではないはずです!? 取り上げられたのは、リチャード・フラナガン、トマス・ピンチョン、ドン・デリーロ、バルガス・ジョサ、マーク・トウェインなどの作品……。さらにマイケル・ヤングの『メリトクラシー』、柿埜真吾の『自由と成長の経済学』にまで話は及びます。 だんだん終わりが近づいてきました。この「連載」は不定期もいいところで、一年半も間が空いたりとか、定期購読されていた皆様にはたいへん申し訳ございませんでした。いろいろ書きかけて、他の仕事にかまけているうちにタイミングを失ったような原稿は結構あって、今回はそういうのを少しお蔵出し。 前回の最後で、ウラジーミル・ソローキンの小説を紹介した。珍しく時事ネタとからめられたので書きやすかったけれど、通常だと小説はなかなか扱いがむずかしい。単独性が強くて、なかなか他の本と関連づけて紹介しづらくて、何
2020年7月15日 今回の「新・山形月報!」は、安田峰俊『さいはての中国』『もっとさいはての中国』(ともに小学館新書)や『八九六四』(KADOKAWA)を取り上げ、さらにはフェルナン・ブローデルの大著『地中海〈普及版〉』(藤原書店、1~5巻)とその関連書籍をまとめて論じます! 前回の冒頭で、キューバのコロナ事情の話をしたんだけれど、せっかくだからキューバの医療についての話もしとこうか。これは人によって絶賛と罵倒に大きく分かれる。だれでも無料であらゆる医療が受けられる、見よ、これぞ命を金で買う資本主義の野蛮を否定した、人民主権の社会主義の勝利とほめそやす人もいれば、そんなの単なるアカどものプロパガンダだ、キューバの医療なんて貧相きわまりなく、レベルも低いと吐き捨てる人もいる。で、ときどきネットその他で熾烈なバトルが展開されているんだけど……。 どっちもまちがってはいないのだ。医療は無料だし
2020年7月8日 大宅壮一ノンフィクション賞と河合隼雄学芸賞を受賞した、小川さやかの話題作『チョンキンマンションのボスは知っている』(春秋社)。今回の「新・山形月報!」は、本書を徹底読解します。重慶大厦から日本へ目を転じると、何が見えてくるのでしょうか……!? さらに著者の前著『「その日暮らし」の人類学』(光文社新書)や、阿甘『中国モノマネ工場』(日経BP)も紹介します。 コロナ戒厳令のおかげで、本業の開発援助方面でもまったく外国に行けない状態で、ホントどうしようもない。とはいえ、主な対象だったキューバは、コロナ以前からトランプによる「制裁」強化でかなり行きづらく、行ってもガソリンがないので、ハバナ市内で打ち合わせやヒアリングに行くのも一苦労という状況ではあったんだけれど。 キューバも当然コロナの影響は受けているんだが、そんなにひどくはない。もともとガソリン不足で人の市内の往き来もままな
2017年12月11日 今回の「新・山形月報!」は、本のレビューの前に、村中璃子医師のジョン・マドックス賞受賞と、それに大きく関連するマスコミ報道などについて論じます。そして、キャス・サンスティーン『命の価値』(勁草書房)、ロビン・ダンバー『人類進化の謎を解き明かす』とマルタ・ザラスカ『人類はなぜ肉食をやめられないのか』(ともにインターシフト)へと続きます。 今回は、ちょっと書評と離れた話からになる。ぼくのこんなネットの片隅にある書評コラムを読んでいる方は、それなりにネット活用度の高い人たちだろうから、すでにご存じかもしれない。2017年12月、日本の村中璃子医師が、ジョン・マドックス賞を受賞した。これは科学雑誌『ネイチャー』の元編集長にちなんで設立された、公共的な利益に関する事柄について、各種の困難や敵対にもめげずにまともな科学と裏付けに基づく知見を促進した人物に与えられる賞だ。 すばら
2020年6月1日 前回に続いて、今回もナチス関連書籍を徹底レビュー。ミヒャエル・H・カーター『SS先史遺産研究所アーネンエルベ』(ヒカルランド)、浜本隆志『ナチスと隕石仏像』(集英社新書)を取り上げます。どちらもSS(親衛隊)のオカルト的な側面に大きく光を当てる本です。 前回の掲載後、少しツイートを漁っていたら、シュペーアの回想記復刊ですばらしい解説を書いた田野大輔が、レニ・リーフェンシュタールを紹介したテレビ番組かなにかについて、「すごい美人の監督」みたいに紹介するの、このご時世でPC的にどうかと思うし、美貌で仕事を獲得したみたいな誤解を招く」 と述べていたのを見つけたんだけれど、うーん、ぼくは彼女が明らかに美人で得をしていたし、それも含め使えるものはなんでも意識的に使ってのし上がった人だから、決して誤解ではないとは思うんだけどなあ。ヒトラーには媚びを売っても相手にされなかったけど、ゲ
2016年9月20日 お久しぶりの「新・山形月報!」は、最近出たナボコフの関連書籍を徹底解説! 主に取り上げるのは、ウラジーミル・ナボコフ『記憶よ、語れ』、『見てごらん道化師を!』、『ナボコフの塊』(すべて作品社)、フランコ・モレッティ『遠読――〈世界文学システム〉への挑戦』(みすず書房)、エレツ・エイデン、ジャン=バティースト・ミシェル『カルチャロミクス』(草思社)です。 今年に入ってから、ウラジーミル・ナボコフの本が3冊出ていて、ファンとしてはありがたい限り。でもネットを見ても、なんかそれらについての言及がほとんどない。かわいそうに。でも、それは仕方ない面もある。ナボコフというのはなかなか論じにくい本を書く作家だからだ。そして今回出た3冊のうち2冊は、中でもちょっと特殊だからだ。 その最初の1冊は『記憶よ、語れ』(作品社)。ナボコフの半生記で、ロシア上流階級の贅沢で優雅な暮らしの思い出
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