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京都大学新聞社 > インタビュー > 【卒業生インタビュー 京大出たあと、 何したはるの?】Vol.4 書評家・作家 三宅香帆さん 批評を通して本の面白さを伝えたい 京都大学は昨年創立125周年を迎え、これまでの学部卒業生はおよそ22万人にも及ぶ。卒業生は幅広い分野で活躍するが、彼ら・彼女らは進路の選択に際し、何を考え、感じ、選び取ってきたのか。 当企画第4弾は、京大を卒業後、書評家・作家として活動する三宅香帆さんを取り上げる。(史・匡) 目次 本はいつもそばにある 自由を謳歌した大学生活 挑戦は学生の特権 書評家にたどり着く 本を読む人を増やしていきたい 好きなものを見つけてほしい 本はいつもそばにある ――大学入学までどのように本と付き合ってきたのかを教えてください。 小さい時から、いつも本を読んでいました。親に図書館やブックオフに連れて行ってもらって、たくさん本を読みました。小中学生
2月28日、警察は昨年8月に広島市で暴力行為を行ったとして5名を逮捕し、この関係先として熊野寮を家宅捜索した。熊野寮自治会は、警察の立ち入りが大学からの通達よりも早かったことから、今回の捜索を「極めて異例」として警察と大学に対して抗議文を出す予定だという。 寮自治会によると午前7時、機動隊員約100名と捜査員約50名が熊野寮へ立ち入り、令状を提示することなく地下に入った。寮生は令状の提示を求めたが警察は応じず、7時24分に地下の鉄扉をエンジンカッターで切りつけたという。その後、地下にいる数名の寮生に対してのみ令状を提示し、10時20分から14時24分まで地下の捜索を実施。14時48分に警察が寮生に対して令状を提示し、15時45分に家宅捜索が終了したという。 今回の捜索場所は地下と車両2台。寮自治会は押収品があったとしつつ、具体的な物品名の回答は控えた。また、逮捕者に寮生は含まれていないとし
この紙面を開いた受験生の諸君。受験が間近に迫り、ラストスパートをかけていることと思う。その胸中は様々だろう。春からの大学生活を夢見て勉強に一層励む者もいれば、共通テストの結果に嘆いて勉強に対するやる気が出ない者もいるかもしれない。 ここでは、受験生に向け、応援の意味を込めて4名の編集員が体験談を綴っている。様々な思いを抱く残り1か月。勉強の合間、紙面に目を落とし、かつての受験生の日常を覗いてみてはどうだろうか。残りの受験生活を前向きに過ごす一助となれば幸いだ。(編集部) 目次 本番は慌てず淡々と 受験を振り返って 受験前は普段通りに 「ライバル」との受験 本番は慌てず淡々と 2年前、石川県で雪が降り積もる中、筆者は入試改革後2回目となる共通テストを受けることになった。受験会場だった金沢大学角間キャンパスは山の奥にあり、市街地から車で30分はかかる。下見の時には、屋根や地面、駐車場の横といっ
2024年度の一般入試において、理学部は受験者2名を追加合格とした。京大によると、入学者が「定員ちょうどになるように」合格を出していたが、2名が辞退したため、繰り上げを行ったという。 京大は公式HPで、入学辞退に伴う繰り上げ合格について「欠員が生じた場合に追加合格を行う場合がある」としている。最近では16年度入試において、医学部が2名の繰り上げ合格を出した。理学部での繰り上げ合格は、05年度入試以来19年ぶりとなる。 追加合格者は3月28日、理学部教務から電話で合格を通知され、入学や履修の手続きを教務とメールでやり取りしながら行った。新入生は通常、第二外国語やILASセミナー(1回生向けの少人数授業)の希望登録を3月中旬に行うが、追加合格者は電話連絡の翌日午前10時までに希望を提出するよう求められたという。クラシスやPandAといった学生向けシステムへの登録は入学後に行った。 追加合格者の
【卒業生インタビュー 京大出たあと、 何したはるの?】Vol.5 吉本興業ホールディングス元取締役 谷良一さん M-1グランプリの「生みの親」 京都大学の卒業生は幅広い分野で活躍するが、彼ら・彼女らは進路の選択に際し、何を考え、感じ、選び取ってきたのか。 京大を卒業後、吉本興業でMー1グランプリの「生みの親」となった谷良一さんにお話を伺った。(匡) 目次 「出会ったことのない」人との交流 「気楽な」職を求め吉本興業へ 漫才を「復興する」 漫才ブームの再来 M-1は「立派に育った」 M-1に携われて「本当に幸せ」 「出会ったことのない」人との交流 ――どんな子供だった。 お笑いは好きでしたね。たまに父に京都花月に連れて行ってもらうことはありましたが、田舎に住んでいたこともあって、ほとんどテレビで見ていました。 小さい頃好きだったのは、いとし・こいしや、やすし・きよし、それに当時コミックバンド
――学生生活で印象的な出来事は。 NF(※)がジャグリングサークルの見せ場の一つなんです。図書館の前で大道芸をして、道行く人に投げ銭をしてもらっていました。30分の大道芸で、最高で1万2千円くらい投げてもらったことが印象的です。相手がなにを見たいのかを想像することで、人の心に訴えかける。そして自分のしていることに価値を見いだしてもらう、評価してもらうということは、今の仕事にも通じているような気がします。 ――進路に影響を与えた出来事は。 京大での4年間で成長したというと驕りがあるかもしれませんが、本当に色々な学びがありました。その中でも、抽象的ですが「考える」ということが大きかったと思います。大学の4年間、あらゆる場面で鍛えられましたし、これが京大生の強みではないかと考えています。授業はもちろんですけど、サークルや部活動でもやたらみんな議論が好きじゃないですか。議論の根っこにあるのは、考え
数ある人類種のなかで、なぜホモ・サピエンスだけが生き残り、地球の頂点に君臨するほどまでに繁栄できたのか。この問いに対し、人類250万年の歴史を俯瞰して明快な仮説を提唱するのが、今回取り上げる「サピエンス全史」である。 本書において人類史は、三つの重要な革命(認知革命、農業革命、科学革命)を軸に語られる。著者はまず、7万年前に起きた認知革命こそが、ホモ・サピエンスのその後の繁栄にとって決定的な役割を果たしたと指摘する。認知革命とは、架空のことについて語り、またそれを信じる能力を得たことを指す。例えばシマウマは、「ライオンが来る」という事実を仲間に伝えることはできるが、嘘をつくことはできない。ところがホモ・サピエンスは認知革命の結果、「あの人とこの人は仲が悪いらしい」といった噂話にはじまり、ひいては実際には起こっていないフィクションを語ることができるようになった。 こうしたフィクションによって
2月4日、理学研究科修士1回生の学生が、屋久島でサルの調査中、滑落事故により亡くなった。理学研究科は8月2日に事故を公表し、未然に事故を防ぐ取り組みを徹底するため、「野外調査の安全管理のためのガイドライン」を改訂したと発表した。 当該学生はヤクシマザルの群れを追い、食性の調査をする中で滑落事故に遭った。調査委員会は急峻な場所に立ち入ったことを事故の一因と推定する。なお、野外調査の経験を積んでいたことから、学生は昼間の単独行動が許可されており、事故当時も一人で行動していたという。 学生が所属していた野生動物研究センターは6月15日にガイドラインを改訂した。改訂版では、従来版に盛り込まれていた事故時の対応などはそのままに、未然に事故を防ぐ対策が強調された。具体的な対策として、▼指導者に安全重視の雰囲気の醸成を求める▼注意を要する調査は複数人での実施を原則とする▼修士1年生の間は一般の人が立ち入
京大新聞が発行を開始して98年。これまで筆を走らせた書き手の中には、誰もが知る著名な作家たちがいた。5月号では京大の卒業生でもある井上靖を取り上げたが、今回の主役はかの太宰治(~1948)である。 太宰治、本名・津島修治は1909年、津軽の地主の六男として生を受けた。創作を始めたのは青森中学時代であり、東京帝大仏文科に入学後、井伏鱒二に師事。デビュー作とされる「魚服記」「思ひ出」を33年に発表し、両作をおさめた初の短編集『晩年』を36年に出版した。一方で共産主義運動の挫折や、小山初代との結婚を機とする実家からの分家除籍を受け、失意のあまり自殺未遂を繰り返す。荒れた実生活が落着くのは38年、井伏の紹介で石原美知子と結婚してからだ。京大新聞に作品を発表したのは、このいわゆる「安定期」にあたる。 太宰は静岡県の「三島から西」に旅したことがなかったという。終戦後、京都に住もうと考えたこともあったよ
2022年入試において、京大へ最多の合格者を出したのは北野高校(大阪府)で90名。一方で、京大に進学する生徒のほとんどいない高校から、京大受験に挑む受験生もいる。その双方から見える景色は大きく異なるはずだ。 今回は、出身高校で学年唯一の京大進学者である学生4人にご協力いただき座談会を行った。「非進学校」から京大を志望して入学し、大学生活を送る彼らから見えたリアルを振り返る。(編集部) 目次 京大を志すきっかけ 出身高校の特徴 受験勉強 入試合格・そして入学 進学の判断を振り返って 座談会の参加者(学年は3月時点) H 理学部3回生。神奈川県の公立高校出身。浪人。出身高校の京大合格者数は20年1人、21年0人、22年1人。 N 文学部4回生。栃木県の公立中高一貫校出身。現役。出身高校の京大合格者数は20年1人、21年2人、22年2人。 S 医学部人間健康学科2回生。埼玉県の公立高校出身。浪人
「京都大学の建物」は、京大構内の建物に焦点をあて、その特徴や来歴を紹介する企画である。第二回となる今回は、本部構内の文学部東館を取り上げる。 東館は、文学部の第二号館として建設され、文学部の講義室などが入っていたが、取り壊し案が浮上したことから、機能のほとんどが他館に移転した。計画は結局進展せず、現在まで残された建物には文学部自治会学友会の施設や図書館などがあるものの、多くの教室は閉鎖されうら寂しい雰囲気が漂っている。本稿では、まず建築について簡単に紹介したのち、解体問題に翻弄された同館の歴史について整理する。(汐) 目次 建築の概要 解体問題 文学研図書館雑誌閲覧室 総5号館に移転へ3月中旬から閉室 開館時刻繰下げも コラム自主管理空間の一つ「文学部学生控室」 文学部東館 (旧第二号館) 建築:1936(昭和11)年9月 設計:大倉三郎 構造:RC造3階建 増築部(=写真) 建築:196
2022年度の1年間、京大の附属図書館で窓口業務の一部が外部の業者に委託されることがわかった。1月25日に大学が競争入札に付した。委託予定の時間帯に働いている学生アルバイトの契約は今年度限りとし、更新しない。また、委託に伴い試験期間の閉館を30分早める予定だという。 委託されるのは、学生アルバイトのみで運営する平日17時から閉館までの時間帯と休日の業務の一部だ。ただし、学生が行っている業務のうち、本を請求番号に従って並べなおす配架作業や、返却された図書を戻す作業を業者が担うことはない。また、経費削減のため試験期間の平日の閉館時間が22時から21時30分に繰り上げられるという。 委託を決定した理由について附属図書館は、サービスの総合的な向上や、「社会情勢や災害時、利用者対応など図書館サービスを行う上での安全性の確保」を目指すためだとした。国立大学法人は6年ごとの中期計画・中期目標に基づいて大
本企画では、京大近辺に人の手を介して住んでいる動物たちを紹介する。当初の取材予定が叶わず動物の種類が偏ってしまった部分はあるが、動物と世話する人間たちの関係には、それぞれに固有の動物の生き方と動物にかける人間の思いが現れていた。かわいいだけでない、人と共存して生きる動物の姿を見つめたい。(編集部) 目次 ①馬術部の馬と猫 ②クジャク ③地塩寮の猫 ④吉田寮の猫 ⑤猫サークル ⑥医学部の実験動物 ①馬術部の馬と猫 北部構内には、15頭の馬が暮らしている。馬術部の管理する馬場・厩舎は理学部校舎のすぐ西にあり、最多で17頭の馬を飼育可能だ。現在はサラブレット14頭とホルシュタイナーを1頭飼育している。サラブレットは競走用に改良された種で、競馬に用いられる。馬体は比較的細く、競争心が強いことが特徴だ。これに対して、ホルシュタイナーは乗馬用に改良された種で、肢が太く、温厚な性格だという。 以前は引退
「遠くから来る自転車をさがしてた 春の陽、瞳、まぶしい、どなた(東直子)」この一首に始まり、この一首に終わる恋愛問答歌『回転ドアは、順番に』。穂村氏と東氏のメールのやり取りから生まれたこの作品は、両氏が交互に詠んだ短歌と間に収められた散文から成る、ある男女の出会いから別れまでを描いた恋の記録である。そこにある歌は、時にぎこちなく想いを詠い、時にのんびりと日常を愉しみ、時に激しい感情を吐き出している。あらすじの紹介がてら、物語中の歌の一部を取り上げてみよう。 最初は二人の出会いの章。ここに収められた一首「海で洗ったひまわりを贈る 未発見ビタミン的な笑顔の人に(穂村弘)」の色彩感は抜群で、たった一行の中に青、黄、緑などさまざまな色を感じさせる。「未発見ビタミン的」という比喩のもつ不思議な清涼感も相まって、爽やかな初夏の空気を強く感じさせる秀歌だ。 「いつのまに消火器にガム張りつけて青空くさいキ
長期の欠勤が続くとして懲戒解雇となった元京大事務職員が処分の取り消しを訴えていた裁判で判決が言い渡された。京都地裁は、被告・京大は懲戒手続きの段階で精神的不調を認識していたにもかかわらず、十分な対応を検討していなかったとして、処分は無効であるとした。京大は昨年12月に控訴した。 判決書によると、元職員は1991年から事務職員として京大に勤務していたが、2015年の10月末頃から精神的不調を訴えるようになり、京大は精神科医受診を勧めるなどの対応を取っていた。その後、元職員は一時的に勤務を再開したが、16年6月、通行中の学生に暴力を振るったとして現行犯逮捕、起訴され、起訴休職をとることとなった。この事件においても元職員の精神的不調との関連が考慮された。起訴休職の解除された17年3月以降、元職員は職場でのパワハラを理由に136日に渡り欠勤を続けた。京大は欠勤中、通院や休職といった選択肢を提示せず
7月25日、32年の歴史を持つ京大会館が閉館となった。同館は京大創立70周年を記念して建設され、京大関係者以外も利用可能な施設として、様々な学会や講演会などに使われてきた。 今回の閉館の理由は、京大会館の建物そのものが築30年で諸設備が最新の要望に適応し難くなり、一方で百周年時計台記念館や芝蘭会館が代替可能な会議施設として建設されたことにある。また、2008年12月から施行となった新公益法人制度では公益法人の新しい認定基準が定められ、これに対応するために5年間の移行期間が設けられている。京大会館を運営する財団法人京大会館楽友会はこの新基準から見て、新公益財団法人への移行は困難であると判断した。これらの理由により、同財団法人は京大会館閉館を決定した。 閉館に伴い、館内のレストラン「このえ」は閉店。テナントだった「社団法人ビタミン協会」は日本イタリア京都会館へ、「京都大学学術出版会」は京都大学
私はふだん幾つかの大学で、古典ギリシャ語とラテン語、またギリシャ・ローマの文学についての講義をしながら、古代ギリシャの叙事詩と悲劇を中心とした文学について研究している。京大では、以前は文学部のラテン語を担当していたが、昨年から全学共通科目のギリシャ語(以下「古典」を省く)の担当に変わった。多様な学部の学生と接するようになり、ギリシャ語学習の意義について考える機会が増えた。以下、それについて書いてみようと思う。 私のように古代ギリシャの文学を学ぶ者にとって、ギリシャ語の知識はもちろん必須。また、より広く西洋文学を学ぶ者にとっても、ギリシャ語やラテン語(いわゆる西洋古典語)を学ぶことの必要性は明らかだ。それぞれの文学作品や表現にはそれが生まれるに至った過程があり、その過程は作者の読書体験などを通して、人類が連綿と続けてきた文学的活動に繋がっているからである。近代ヨーロッパの始まりとも言われるル
《連載にあたって》 京大は昨年4月、吉田寮現棟の明け渡しを求め、寮生20名を提訴し、今月2日には第5回口頭弁論が開かれた。こうした中、本紙では昨年7月16日号より「吉田寮百年物語」を連載している。吉田寮の歴史を振り返り、今後のあり方を考える視点を共有することを目的とし、連載にあたり吉田寮百年物語編集委員会(※)を立ち上げた。前回第七回では、1980年代後半以降の動きを振り返り、入寮対象の拡大や大学との交渉体制の再構築について考察した。今回は、2本の寄稿などを通して2002年からの約10年間の動きを振り返り、老朽化対策を巡る寮内での検討状況の変遷に迫る。 ※吉田寮百年物語編集委員会……メンバーは「21世紀の京都大学吉田寮を考える実行委員会」や「21世紀に吉田寮を活かす元寮生の会理事会」の会員と趣旨に賛同する個人で、京都大学新聞社が編集に協力している。 ※これまでの連載↓ 第一回 第二回 第三
連載にあたって 7月4日、京大が提起した吉田寮現棟明け渡し訴訟が始まった。吉田寮を巡っては、新聞やテレビで度々報じられており、2017年の京大当局による「吉田寮生の安全確保についての基本方針」発表以降、全国紙・地方紙の関連記事は、162本を数える(「立て看規制を考える集まり」準備会有志の記録による)。教職員や元寮生らから声が上がるなど、多くの人が今後の動向を注目している。 こうした状況を受け、今回、吉田寮のこれまでを振り返り、加えて、今後の吉田寮を考えるための経験と視点を共有することを目的として、本企画「吉田寮百年物語」の連載を開始する。 京都大学新聞では、1999年に「吉田寮物語」を連載したが、今回は、その成果を踏まえ、より幅広い視点から吟味するため「吉田寮百年物語編集委員会」を結成した。メンバーは「21世紀の京都大学吉田寮を考える実行委員会」や「21世紀に吉田寮を活かす元寮生の会理事会
11月4日、「京大経済学教室」の第2回セミナーが開催され、京都大学大学院経済学研究科の安田陽特任教授が「再生可能エネルギーはなぜ世界で大量導入が進むのか?~リスクマネジメントの観点から地球環境を考える~」というテーマで講演した。京大経済学教室は、京大の子会社「京大オリジナル」が今年から始めたイベントで、今回は「『環境』と『経済』の関係~その変容と方向性~」をテーマにオンラインで開催された。 最初に、安田氏は、日本と世界の再生可能エネルギーに対する認識の違いを指摘した。日本では、再生可能エネルギーは実用性の低いものであると考えられる傾向がある一方、世界では順調に導入が進んでいるという。加えて、日本も批准するパリ協定は再生可能エネルギーの導入を前提として気温上昇の抑制目標が立てられているという。安田氏は、環境省によるデータなどを示しつつ日本でも再生可能エネルギー、特に風力発電が電源として大きな
戦争バブルに色めき立つ大学。とは言っても、現在のことではない。1930年代から40年代前半にかけての戦時中のことである。具体的にどのようなことを指しているのか。戦時下の学問統制にかかわる共同研究(駒込武・川村肇・奈須恵子編『戦時下学問の統制と動員』東京大学出版会、2011年)の内容に基づいて記すこととしたい。 カケン、すなわち科学研究費は今日の大学の研究活動において重要な位置を占めており、知らない人はまずいない。だが、その由来についてはさほど知られていない。文部省が科学研究費という枠を設けて本格的に研究助成に乗り出したのは、1939年のことである。陸軍大将荒木貞夫が文部大臣として予算を計上したのだった。当初は自然科学部門のみを対象としていたが、43年度から人文科学部門に対しても交付することになった。「大東亜戦争ノ遂行ヲ第一絶対ノ目標」として、兵器開発のような狭義の軍事研究のみならず、占領地
今年9月、正門横にある古びた建物が、ひっそりとその役目を終えた。名前は「花谷会館」。かつては喫茶店が入り、1960年からは京都大学生協本部として使われてきたが、耐震基準を満たさず、生協本部の吉田南構内への移転に伴って空き家となった。この建物、建築物として特筆すべき点はないが、1945年に広島に投下された原子爆弾についての現地調査中、台風の犠牲となった花谷暉一氏の兄が大学に寄贈したという経緯がある。今回は花谷会館の奥にある歴史、原爆調査団及び枕崎台風について記述したい。(国) 優れた研究業績 戦時中、理学部物理学教室の荒勝文策研究室で大学院生として研究を行っていた花谷氏は、多くの研究者・学生が徴兵される中、研究業績の優れた特別研究生として研究室に残って研究を続けることができた。花谷氏の研究内容は、ウランの核分裂が連鎖反応的に起こる条件を探ることであった。ウランが中性子を吸収して核分裂を起こす
進行中の総長選を巡り、本紙は京大生を対象にアンケート調査を実施した。山極壽一総長をはじめとする現執行部の施策について、「支持する」または「おおむね支持する」と答えた学生が約25%となった。このほか本記事では、調査で得られた回答を通して、現執行部や総長選に対する学生の声をまとめる。 なお、次期総長は教員への意向調査を経て7月21日に決まる予定となっている。9月末をもって現総長および全8名の理事の任期が終了し、新体制の始動を迎える。 調査は、6月19日から7月3日にかけてgoogleフォームを用いて実施した。重複回答を防ぎ京大生であることを確認するため、学生用メールアドレスの記入を求めた。重複を除いた有効回答は496件で、そのうち学生用アドレスでの回答は335件だった。本記事中で示す割合や記述回答は、学生用アドレスでの回答からまとめている。その他のアドレスを含む記述回答の詳細は【総長選2020
京都大学の総長の交代が近付いている。京都大学の総長は、任期6年で法人の長として、理事の指名も行う。さらには、国立大学協会や日本学術会議で会長を務めることもあり、日本の文教政策全般において一定の影響力がある。国立大学法人化以降、総長選は、「選挙」ではなく選考会議による「選考」へと変わった。政府文科省が進める大学改革のなかで、京大も変化した部分と変化していない部分があるだろう。本号では、「総長選を考える/総長選から考える」とテーマを定め、山極総長の任期6年の間に、京大はどういう方向へかじ取りをしたのか、資料を基に振り返るとともに、大学の現場でこのあり方に関わってきた教員による座談会を企画した。京都大学のこれからのあり方を占う節目として、本企画が京大関係者に有益たらんことを願う。 山極総長就任にいたる学内の状況 山極氏の前には、松本紘氏(現・理化学研究所理事長)が2014年9月末までの6年間、総
前編では、山極氏総長就任の背景や、総長選考の仕組み、山極総長がこだわりを持ってきた政策について実際になされたことを、背景も含めた振り返ってきた。次に、こうした制度的な変化だけではとらえきれない山極総長就任前から任期期間にかけての出来事や現場の変化の実情について、学内外で様々な課題へ取り組んできた5名の教員に座談会形式で語ってもらった。 前編はこちら 目次 ・ トップダウンへの反感 山極総長の就任背景 ・ 教授会はどう変わったか ・ 女性教員懇話会との直接対話 廃止に ・ 継続した「教養教育改革」 ・ 学外からの注目と学内の反応 学内管理強化 ・ 「教員も学生も学習性無力に」 ・ 背景にある大学改革 ・ 「社会に開かれた大学」とは ・ これからの総長に求めること 座談会メンバー・プロフィール ・石井美保・准教授(人文科学研究所) 専門は、文化人類学 ・駒込武・教授(教育学研究科) 専門は、教
旧満州第731部隊の軍医将校が京都帝国大学より医学博士の学位を取得した際の学位論文において人体実験をもとに執筆された疑いがある問題で、京大に同論文の検証を求める「満洲第731部隊軍医将校の学位授与の検証を大学に求める会」は1日、京大で会見を開き、大学から予備調査の結果が通知されたことを明かした。京大は通知にて、人体実験が行われたと結論付けることはできないと説明し、本調査を実施しない方針を示した。 問題となっている論文は、731部隊軍医将校であった平澤正欣氏が執筆し、1945年に学位論文として認可された。論文にはペスト菌を保有するイヌノミを「さる」に付着させて感染率を調べる実験のデータが記されており、その中で「さる」が「頭痛(中略)ヲ訴ヘ」という記述があることなどから論文中の「さる」は人間であった可能性が疑われている。 京大による予備調査は昨年9月、同会が提出した検証を求める要望書に応じる形
街で献血をしたり、呼びかけたりしている姿を誰しも1度は見たことがあるのではないだろうか。しかし私たちは目にはしても、血が足りないという実感がわかず、面倒だから、急いでいるからとつい敬遠しがちである。そこで今回はさまざまな角度から献血を紹介する。まだ献血に行ったことのない人も、是非一度献血について立ち止まって考えてみてほしい。(編集部) 記事一覧 インタビュー 京都府学生献血推進協議会に聞く 学生目線で広めたい 質問事項、これでいい?男性同士の性的接触について 献血 なぜ必要? 私の献血体験記 献血できなかったら ヘモグロビン不足を食事で改善 献血ルーム紹介 質問事項、これでいい?男性同士の性的接触について 献血の前には問診がある。献血をする人からできるだけ安全な血液を手に入れることで、輸血を受ける人がウイルスに感染するリスクを減らすためだ。HIVも対象の1つであり、問診の中には次のような質
京都大学には「芸術学部」がない。 全学共通科目には、芸術学基礎論や音楽芸術論の他、現代芸術であるメディアアートの講義もある。建築学科でもデザインの講義はあるし、法学部の政治思想史にも芸術に関する記述が登場する。決して芸術が無視されているわけではない。では、なぜ学部として専門的に学ぶ場がないのだろうか。ここでは、芸術から得られるものについて考察し、京大におけるその教育・研究の現状を描く。そして総合大学で芸術を学ぶことの可能性と限界を探りたい。 京大で三者三様に芸術を扱う研究者、篠原資明教授(人間・環境学研究科)、土佐尚子教授(学術情報メディアセンター)、小野紀明教授(公共政策大学院)に話を聞いた。(慶) 〈芸術とは何か 学問の真髄を支える柱として〉 フランシス・ベーコンは学問、すなわち人間の能動的な精神活動を3つに分類した。その3つとは、歴史、哲学、詩である。その思想によれば、歴史は記憶によ
文学部図書館に勤務していた元時間雇用職員2人が雇用契約を更新されなかったのは違法であるとして、地位確認を求め京都地裁に訴えていた裁判(和久田斉裁判官)の判決が3月31日あり、原告側の請求を棄却する判決が出された。 この裁判では、最大5年とされた文学部図書館の遡及入力業務が未だ残っているにもかかわらず、大学側が2人を4年目で「雇い止め」したことが、契約更新の期待権侵害にあたるかが争点となっていた。 しかし和久田裁判官は判決文中で、一般的には雇用契約は無期契約が原則としながら、2人が従事した図書の遡及入力業務は「家計補助的業務と呼ばれるもので…こうした労働契約に応募する者の多くは、基本的には配偶者の収入を主たる財源として生計を維持することを想定」したもので、無期雇用が妥当とは認め難いとした。さらに「京大を卒業した原告がそのような家計補助的労働にしか就けない合理性は不明で、どのような世界観・人生
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