東京工業大学の虎谷泰靖大学院生(当時)らの研究グループは、高い開口数でありながらすべての収差を補正した対物鏡「虎藤鏡=TORA-FUJI mirror」の設計に成功した。 しかし、この顕微鏡の視野は数ミクロンと細胞のサイズよりも1桁小さいため、生体系への応用が困難であった。そこで、虎谷修士課程学生(当時)が新しい対物鏡の設計に取り組んだ。その結果、優れた光学性能を維持したまま、視野を面積比で600倍に広げることで、生物系の観察に適した虎藤鏡(注)の設計に成功した。この成功の鍵は、対物レンズの設計では非主流の鏡だけで構成された反射光学系を用いたことによる。 設計に成功した虎藤鏡は、優れた耐環境性能(極低温から室温までのあらゆる温度、強磁場)、高い開口数(レンズの性能を表す値で0.93を達成)、広い視野(視野直径72μm)、理想的な結像からのズレである収差(単色収差、色収差)の補正を並立させた