フリースブームを巻き起こし、急拡大したユニクロ。ブーム終焉(しゅうえん)後の低迷期を迎え、再建に立ち向かったのが後継社長・玉塚元一(現ロッテホールディングス社長)だった。だが、その奮闘の結末は……。ノンフィクション『ユニクロ』(杉本貴司著)より抜粋・再構成し、柳井と玉塚の「師弟のドラマ」を紹介する。(文中敬称略) 「なんで澤田さんだけが……」 2002年5月に開かれた緊急役員会。駐在先のロンドンから駆けつけた玉塚元一は耳を疑った。自分をユニクロに引っ張ってきた張本人であり、20代の頃から兄貴分と慕ってきた澤田貴司が経営不振の責任を取って副社長を退任するという。 何も知らされていなかった玉塚はその場で激高した。思えば、柳井の目の前でこれほど怒りをあらわにしたのは、後にも先にもこの時だけだろう。 「おかしいじゃないですか。なんでこんなことになるんですか。こうなったのはここにいる俺たち全員のせい