2024年4月12日、冷泉家に代々伝えられながらも、約130年ものあいだ、開けられていなかった「箱」が開けられた。縦約35センチ、横約50センチ、高さ約55センチの木箱である。 箱からは、『新古今和歌集』の選者であり「歌聖」と仰がれる藤原定家(1162~1241)直筆の書物『顕注密勘』が発見された。『顕注密勘』は日本最初の勅撰和歌集『古今和歌集』の注釈書で、いくつもの写本が伝わっているものの原本は長く失われたとされてきた。
図書館を未来につなぐ江北図書館の活動<報告> 専門図書館協議会・金子由里恵(かねこゆりえ) 2024年2月28日、専門図書館協議会関西地区連絡会が新春講演会「図書館を未来につなぐ―滋賀・江北図書館の活動から―」をオンラインで開催した。江北図書館は、滋賀県長浜市に位置する私立としては日本で3番目に古い図書館である。本講演会では同館の理事長・岩根卓弘氏と同館長・久保寺容子氏から地域に愛される図書館をいかに次世代につなぐか、という観点から運営の工夫やその在り方などについてお話しいただいた。本稿では、その内容について報告する。 ●江北図書館の歴史と新たな活動 江北図書館の前身は、伊香郡余呉村出身の弁護士・杉野文彌が「故郷に図書館を建て青少年に勉学の場を与えてあげたい」という思いから、1902年に開設した「杉野文庫」である。1904年に木之本村に移転し、1907年に財団法人江北図書館を開館した。以降
「JATDT舞台美術作品データベース」の公開とその意義 日本舞台美術家協会・伊藤雅子(いとうまさこ) ●はじめに 2024年1月31日、一般社団法人日本舞台美術家協会(Japan Association of Theatre Designers&Technicians:JATDT)が「JATDT舞台美術作品データベース」(以下「データベース」)を公開した。舞台美術の資料を蓄積し、後世に舞台美術文化をつないでいくデジタルアーカイブである。本稿では、JATDTや舞台芸術の歩みに触れつつ、データベースを紹介する。 ●JATDTについて JATDTは、舞台芸術において視覚的・美術的立場から演出に参画する創作者と技術者、ならびに舞台美術教育者や研究者が集まった、国内唯一の舞台美術家のための職能団体であり、1958年に創立された。 ●データベースの概要 データベースの主な目的は二つある。一つは、舞台美
第34回保存フォーラム:フィルムと写真<報告> 収集書誌部資料保存課・齊藤誠一(さいとうせいいち) 2023年12月13日から2024年1月16日にかけて、国立国会図書館(NDL)は第34回保存フォーラム「フィルムと写真―劣化のしくみと保存対策―」を開催した。保存フォーラムは、資料保存に関する知識の共有、実務的な情報交換を意図した場である(E2579ほか参照)。今回は事前に報告者別に収録した動画を、YouTubeで参加申込者に配信するという形で開催し、参加申込者は468人であった。 今回の保存フォーラムは、フィルムを中心にその劣化機構と保存対策について近年の動向や図書館等における取組を共有するとともに、フィルム及び写真の適切な取扱い、保存・管理について理解を深めることを目的とした。以下、報告内容を紹介する。 ●報告1「東京都写真美術館における写真の保存」(東京都写真美術館保存科学専門員:山
脚本アーカイブズシンポジウム2024<報告> 日本脚本アーカイブズ推進コンソーシアム・石橋映里(いしばしえり) 2024年2月18日、一般社団法人日本脚本アーカイブズ推進コンソーシアムは、文化庁委託事業の一環として、シンポジウム「作品を支える脚本の魅力とは:文化を伝える放送脚本・台本を未来へつなぐために」をオンラインで開催した。脚本アーカイブズシンポジウムは、主に放送番組の脚本・台本(以下「脚本等」)を収集管理し公開する「脚本アーカイブズ活動」を広く周知するために、毎年開催している。今回のシンポジウムには約500人が参加し、その8割が初参加であった。本稿では、脚本アーカイブズ活動と、シンポジウムの概要を紹介する。 ●脚本アーカイブズ活動について テレビ草創期、ビデオテープは高価であり、過去の録画を上書きして再度使用されたため、映像と音声が保存されている放送番組が少なく、現在では当時の放送番
ドーナツ・プロジェクト2023シンポジウム<報告> 早稲田大学坪内博士記念演劇博物館・田村優依(たむらゆい) 2023年12月13日、早稲田大学坪内博士記念演劇博物館主催により、シンポジウム「ドーナツ・プロジェクト2023―舞台芸術に携わる人のためのアーカイブガイドブックつくりました―」を開催した。本シンポジウムは、当館が2022(令和4)年度から文化庁「大学における文化芸術推進事業」の助成を受け実施した「舞台公演記録のアーカイブ化のためのモデル形成事業(通称:ドーナツ・プロジェクト)」の成果報告として企画した。本稿では、シンポジウムの内容を紹介する。 冒頭では、当館前館長で、ドーナツ・プロジェクト(以下「本事業」)を牽引する岡室美奈子(早稲田大学文学学術院教授・文化推進部参与)が、発足の経緯について説明した。本事業はアーカイブの意義と可能性、公演映像など資料のデジタルデータの適切な保存・
「市民活動資料」所蔵3館による合同シンポジウム<報告> 立教大学共生社会研究センター・平野泉(ひらのいずみ) 2023年11月18日、法政大学大原社会問題研究所環境アーカイブズ(以下「環境アーカイブズ」)主催によるシンポジウム「『市民活動資料』収集・整理・活用の現場から―法政大学大原社会問題研究所環境アーカイブズ、立教大学共生社会研究センター、市民アーカイブ多摩」が開催された。このシンポジウムは、市民の多様な活動が生み出す「市民活動資料」を所蔵する都内3館の合同企画である。開催の目的は、各館のコレクションや実務に関する共通点と差異を浮き彫りにし、今後の協働の可能性等について議論することであった。 主催者である環境アーカイブズの山本唯人氏による開会あいさつ・趣旨説明の後、3館の現場担当者が各館の状況について報告した。 ●環境アーカイブズ 「東京都立多摩社会教育会館旧市民活動サービスコーナー所
第19回電子情報保存に関する国際会議(iPRES 2023)<報告> 電子情報部電子情報企画課・大沼太兵衛(おおぬまたへえ)、 関西館電子図書館課・依田紀久(よだのりひさ) 第19回電子情報保存に関する国際会議(iPRES 2023;E2557ほか参照)が、2023年9月19日から22日の4日間にわたり、米国イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のカンファレンスセンターで開催された。前回に引き続きオンサイトおよびオンラインのハイブリッド形式で開催され、国立国会図書館(NDL)からは、オンサイト、オンラインそれぞれ一人ずつ参加した。当館からのオンサイト参加は、2019年(第16回)以来4年ぶりとなる。 初日はPREMIS/METS(CA1690ほか参照)、電子情報保存のためのストレージに関する基準(Digital Preservation Storage Criteria;E2249ほか参照)
トーク・イベント「エフェメラの住み処」<報告> 慶應義塾ミュージアム・コモンズ・長谷川紫穂(はせがわしほ) 2023年9月16日、慶應義塾ミュージアム・コモンズ(以下「KeMCo」)およびNPO法人Japan Cultural Research Instituteの共催により、トーク・イベント「エフェメラの住み処:ライブラリー、ミュージアム、アーカイヴ」を開催した。本イベントはエフェメラおよび印刷物資料の所管に携わる文化三機関の登壇者による、現場からの気づきや課題の共有(第一部)とディスカッション(第二部)を通して、今日的エフェメラの意義を考える機会として企画した。 ● 文化機関からの報告:「エフェメラ」に触れながら エフェメラとは一般的に、展覧会のチラシやポスターのように長期的な使用や保存を本来の目的としない一過性のアイテムのことを指すが、その定義はさまざまである。本イベントでは登壇者と
美術作品や書籍のように長期的な保存を本来の目的とせず、時限的な情報掲載や使用が主たる目的であるチラシやパンフレットなどのアイテムは、限られた期間で消えゆくものとして「ephemera=1⽇だけの、短命な」の⾔葉が与えられ「エフェメラ」と呼ばれます。安価につくられ配布された印刷物のエフェメラ(printed ephemera)は、時代ごとの出来事や空気を伝える重要なアイテムであり、近年、ミュージアムをはじめとする文化機関において蒐集の対象ともなっています。 慶應義塾ミュージアム・コモンズでは、エフェメラ、特に無料もしくは安価に刷られることで社会に広がるメディアとしての機能をもった印刷物エフェメラに焦点を当てた展覧会を開催いたします。コンセプチュアル・アートやイベント、映像表現といった新しい表現が現れ展開していった戦後美術のなかで、作品や展覧会の情報の伝達と紐づきながら、同時にアーティストの表
米国の州立公文書館が電子メール保存に向けて「準備」中 聖学院大学基礎総合教育部・塩崎亮(しおざきりょう) 米国のステートアーキビスト評議会(CoSA)は2023年3月に電子メール保存に関する2か年プロジェクト“PREPARE”(Preparing Archives for Records in Email)の最終報告書“Be Prepared”を公開した。CoSAは米国50州、コロンビア特別区、準州(北マリアナ諸島、グアム、プエルトリコ、米領サモア、米領バージン諸島)の公文書館56館から構成された非営利組織である。CoSAは2011年以来、“SERI”(State Electronic Records Initiative)と呼ばれる電子記録関連の諸事業を展開しているが、“PREPARE”はその一環でもある。“PREPARE”は、メロン財団の支援のもとイリノイ大学が主導するプロジェクト“E
フロッピーディスクの長期保存対策に関する調査報告書 電子情報部電子情報企画課次世代システム開発研究室・木下貴文(きのしたたかふみ) 国立国会図書館(NDL)は、2023年4月、「フロッピーディスクの長期保存対策に関する調査報告書」を公開した。本稿では、本報告書の要点を、その背景情報も含めて紹介する。 ●フロッピーディスク(FD)とは FDは主に1980年代から1990年代ごろに広く用いられたデジタル記録媒体である。外観は正方形状(3.5インチ及び5.25インチの二つのサイズがよく知られている)で、内部に磁性体を塗布した薄い円盤が入っており、この円盤にデータが記録される。当時の一般的なPCはFDドライブを備えており、FDは運搬・保存用の記録媒体として広く普及した。記録容量は一部の例外的な規格を除けば最大でも1.4MB程度である。FDは、2023年現在ではほとんど用いられることがなく、一般的に
17日にあった国の文化審議会で、京都府内からは對龍(たいりゅう)山荘(京都市左京区)と齋(いつき)神社本殿(京都府綾部市)の2件5棟が新たに重要文化財に指定されることになった。對龍山荘は、南禅寺門前の一角に敷地を構える別荘建築で、巧妙な建物配置が美しい。建立当初の主要部材が残る齋神社本殿は、丹波地域での中世神社本殿の遺構として貴重とされる。 京都府によると、重文指定される對龍山荘は主屋(おもや)と南北の土蔵、表門の4棟。現在は家具大手のニトリホールディングス(札幌市)が所有している。 主屋は木造一部2階建てで約460平方メートル。明治29年、薩摩出身の実業家、伊集院兼常(かねつね)の居室と茶室を備えた別荘として建てられ、その後、呉服商の市田彌一郎が入手した。増改築を経て38年ごろに現在の形となった。建物と庭園との調和や一体感に優れ、趣の異なる座敷や茶室が重層的な空間を形成する、優れた近代和
かつてホームビデオとして使われていた8ミリフィルムの映像をまとめたDVDを県内各地の図書館に寄贈する取り組みが行われていて、当時の記録が刻まれた貴重な資料として役立てられます。 秋田公立美術大学の准教授・石山友美さんは、家庭などに眠ったままの8ミリフィルムを譲り受け、保存・活用する取り組みを行っています。 石山さんは、集まったフィルムの映像を、年代や内容ごとに分類して、DVDを製作しています。 そのDVDを去年から県内の図書館へ寄贈する取り組みを始めています。 取材した日は、八郎潟町の図書館を訪れました。 昭和30年代から40年代を中心にホームビデオとして使われていた、8ミリフィルム。 当時の暮らしぶりや行事の様子などが分かる貴重な映像資料になっています。 4巻のDVDには、秋田市と由利本荘市、北秋田市の映像が収められています。
【読売新聞】 博物館などで文化財を傷める虫やカビをガスで殺す「 燻蒸 ( くんじょう ) 」を行うことが、格段に難しくなる可能性が高まっている。国立博物館など全国の博物館で最も一般的に使われているガスの販売終了が決まったためだ。現在
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