何かを書くにあたって、「自分の中に深く潜っていって底のほうにあるものを書く」と表現している人がいて、なるほど、そういうイメージを用いる人はいる、まあ言いたいことはわかる、しかし私が何かを書くときのイメージは(少なくとも今は)こうではない、と思った。 自分の中に深く潜る、というところまではいい。 しかし、潜った先に「何か具体的なものがある」と表現しているところが違う。 脳の奥底に、「手でつかめるような実体」があると感じることはない。脳の底までたどり着いてもそこは混沌であって「答え」が置いてある場所ではない。底に立って周りを見渡し、あるいは見上げ、うなだれ、乱雑に広がるほこりっぽい蜘蛛の巣のようなイトの数々を揺らしたりまとめて追い払ったりしているうち、なにやら思考がモヤモヤ出てくるが、それは「底にあったもの」ではない。 何かが自分の底に秘匿されており、それをむき出しにするためにものを書く、とい