昨年11月末の夕方。仕事から家に帰り、郵便受けの最高裁の封筒を見て、60代の男性団体職員は絶句した。「まさか。何で僕の所に」。殺人事件で、肉親を奪われた過去を持つ。根拠はないが、自分には候補者通知は来ないと思っていた。 加害者の男の裁判に通った。法廷に立ち、「極刑しかない」と証言したこともある。男には、死刑判決が言い渡された。 だが、裁判中に男から謝罪の手紙が届き、やりとりを重ねるうちに「生きて償ってほしい」という思いも出てきた。厳罰化する今の刑事裁判には、反発している。裁判員が加われば、法廷がさらに感情的になる気がする。もし、裁判所から呼び出し状が来たら、裁判長に「やりたくない」と伝えるつもりだ。 「死刑を言い渡したくない」「人を裁きたくない」という思想・信条だけでは、裁判員を辞退できない。裁判員になることで「精神上の重大な不利益」を受ける場合は、辞退が可能だ。心のバランスを崩すような事