ジェフ・ベゾスに買収されてからというもの、「ワシントン・ポスト」はデジタルファーストを掲げて急速な変化を遂げてきた。だが、それ以前の同紙は、知名度は高いがあくまで「地方紙」という存在だった。改革を牽引してきた前編集主幹マーティン・バロンがその経緯を振り返る。 2013年7月30日、マーティン・バロンはワシントン・ポストの建物を出て、15番街を渡り、ハッピーアワーの一杯を飲みに出た。彼にとっては非常に珍しい行動だ。 彼をホテルのバーに呼び出したのは、当時ワシントン・ポストの発行人だったキャサリン・ウェイマスだ。ウェイマス一族が80年に渡り経営を続けたワシントン・ポスト・カンパニーの新聞事業を、アマゾン社の創業者ジェフ・ベゾスに売却することを編集主幹のバロンに伝えるためだった。 「とてもつらい気持ちであったことは、確かです」と、ウェイマスは最近のインタビューで答えている。「バロンは入社したばか