1967年、米のウィリアム・スチュワート公衆衛生総監は「感染症の教科書を閉じる時がきた」と議会で語った。ワクチンや抗生物質の発明によって、人類は感染症を克服したという「勝利宣言」だった。 スチュワートさんが学んだ教科書には古びた知識しか書かれていなかったらしい。人類はその後、エイズ、SARS、新型コロナ感染症と、新たなウイルスに翻弄(ほんろう)され続けている。 人類がウイルスを「発見」したのは19世紀末のことだ。約100年後の今世紀初頭にヒトゲノム(ヒトの全遺伝情報)が解読されると、その1割近くがウイルスからもたらされていたことが判明した。