安倍元首相の新型コロナ対策は最悪最低だった。何もかもが後手後手で、国民に犠牲を強いただけだった。挙句(あげく)の果てに病気を理由に二度目の政権投げ出し。だが安倍氏より低評価なのが、東日本大震災による原発事故の責任者だった菅直人元首相だ。現地に乗り込み現場を混乱させたとか、とかく悪評ばかりだった。 著者は新聞記者として、原発事故における菅政権の対応を取材する立場にあった。本書では二人の発言や行動を克明に比較することで国難におけるリーダーのあるべき姿を追求している。そこから浮かび上がったのは「菅氏は危機を大きく捉えたのに対し、安倍氏は小さく捉えた」などの違いである。 原発事故に際し、東電は正確な情報を上げず、危機を矮小(わいしょう)化しようとした。そこで菅氏はやむを得ず事故現場に直行したのだ。危機の際は、正確な情報入手と適切な指示のために可能な限り情報ラインを短くすることが原則である。その意味