9.11米国同時多発テロ事件が起きた時、テロ攻撃を体験した人も、惨劇を目の当たりにした市民も必ずPTSDに苦しむだろうといわれた。悲惨な目に遭ったのだから当然と思われていたのだ。だが、PTSDを発症した人は驚くほど少なかった。なぜ多くの人がトラウマにもならず日常生活を取り戻したのか。臨床心理学の教授である著者は、この事実に興味をいだいて調査を始める。9.11のような未曾有(みぞう)の事件だけで
2024年は能登半島地震から始まった。不安定な世相で感じる不安や辛(つら)さを、「被災地の人と比べれば」という比較により否定してきた人もいるのではないか。著者はそんな「感覚の喪失感」が、カウンセラーとして向き合ってきたDVや虐待などの暴力の被害者と大きく重なるとし、「今こそ、私たちは痛みについて向き合うべきだろう」と述べる。 DVも虐待も、今でこそ我々の身近にありふれたものとして認識されているが、「じつは日本では二一世紀になるまで、家族の間に『暴力』は存在しなかった」。DV防止法が01年、児童虐待防止法が00年にできるまで「法的には家族の暴力などなかった」からだ。 そもそもDVという言葉が世界女性会議で生まれ、日本に上陸したのは1995年のこと。近年問題視される教育虐待にしても、「一九七〇~八〇年代に学童期を過ごした四〇代以上の方に聴き取りをすると、彼らが受けてきた壮絶な教育虐待に言葉を失
江口 聡, EGUCHI Satoshi 巻 15 号 15 開始ページ 37 終了ページ 54 記述言語 日本語 掲載種別 研究論文(大学,研究機関等紀要) 出版者・発行元 京都女子大学現代社会学部 本論ではキェルケゴールの著作活動を、彼自身の鬱病的生涯とそれに対する彼の対応という観点から見直す。まず「メランコリー」概念の歴史的変遷と、20世紀までの「鬱」についての精神医学の発展を見た上で、キェルケゴールの著作における否定的な気分が現代の精神医学者たちの知見とよく合致することを論じる。さらにキェルケゴールが現代の鬱病療法についてどのような見解を持つだろうかを考えてみる。 リンク情報 CiNii Articleshttp://ci.nii.ac.jp/naid/120005284961CiNii Bookshttp://ci.nii.ac.jp/ncid/AA11529465URLhttp
大腸がんは男女ともに2番目に多いがんですが、早期の治療により高い確率で完全に治癒するため、早期発見だけでなくがんが治った後の再発予防も重要視されています。コーヒーをよく飲む人は、大腸がんの再発リスクが有意に低くなるとの研究結果が報告されました。 Coffee consumption is associated with a reduced risk of colorectal cancer recurrence and all‐cause mortality - Oyelere - International Journal of Cancer - Wiley Online Library https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ijc.34879 Drinking Coffee Dramatically Lowers The Risk of
19世紀から20世紀への転換期、「無意識」という新たな心の領域を探求し、人類の知に大きな地殻変動を引き起こした人物がいる。ジークムント・フロイト(1856-1939)。精神分析と呼ばれる実践・理論の創始者だ。その彼の永遠の代表作ともいえる名著が「夢判断」(1900)である。人々の「心の病」に寄り添い、その原因を解明しようと探求を続けた「心の医師」フロイトは、果たしてこの著作で何を明らかにしたのか。「夢判断」を現代の視点から読み解くことで、私たちにとって「無意識」とは何か、それはいかなる働きをもつものなのか、心の病はなぜ発症するのか、それをどのように治療することが可能なのかといった問いを扱うとともに、人間にとって「心とは何か」「自分とは何者なのか」といった根源的な問題を深く考察する。 フロイトは、人間は誰しも「心の秘密」をもっているという。そのせいで自分でもわからないうちに心や体の調子が悪く
アルツハイマー病の発症リスクを高める要因としては、ジャンクフードの食べ過ぎや睡眠不足などさまざまなものが挙げられています。オーストラリアのウェスタンシドニー大学の研究チームによるレビューでは、「鼻をほじること」がアルツハイマー病のリスクを高める可能性があるとして、そのメカニズムについて解説されています。 Biomolecules | Free Full-Text | Neuroinflammation in Alzheimer’s Disease: A Potential Role of Nose-Picking in Pathogen Entry via the Olfactory System? https://www.mdpi.com/2218-273X/13/11/1568 Scientists Reveal How Nose-Picking Could Increase Risk
著者:蓮澤 優出版社:青土社装丁:単行本(424ページ)発売日:2023-09-26 ISBN-10:4791775708 ISBN-13:978-4791775705 内容紹介: 「狂気」の治療は本当に必要なのか。「正常な人間」は存在するのか ひとを規格に押し込める治療ではなく、主体を自由にし、ただひとりの自分自身でありうる治療を目指して。その歴史から司法精神医学制度の現在地にまでアプローチする。臨床医の著者が戸惑いながら考え、精神医学と哲学の専門知を往還する唯一無二の書。 「反精神医学」から治療論を見出す読みミシェル・フーコーという名前から人は何を連想するだろうか。一望監視装置(パノプティコン)? 生権力批判? 「人間の消滅」? スキンヘッドの戦闘的知識人? いずれにせよ、後世に与えた影響という点では、彼ほど「知の巨人」の呼称が似つかわしい存在もまれであろう。 フーコーは、主著『狂気の
戦後、結核になる日本人が減少した理由 戦前は世界でもっとも短命だった日本が長寿大国になったのも栄養のおかげだと思います。戦前はなぜ短命だったのかというと、日本では結核が命とりとなっていたのです。 1950年前後に結核は治まり、脳卒中が死因のトップになるのですが、ストレプトマイシンという薬ができたから結核で命を落とす人はいなくなったのだ、というのが医者の認識。 でも実際にはストレプトマイシンは結核の治療薬であって、結核にならないための予防薬ではありません。当時、ストレプトマイシンが高価だったこともあり、そんなに普及しなかったなか、戦後、結核死が減ったのは、結核になる人が激減したからです。 だったらどうして結核になる人が減ったのかというと、米軍が配った脱脂粉乳によって日本人のたんぱく質摂取量が画期的に増えたからでしょう。 栄養状態がよくなり、免疫力がついたというのが真実です。戦前だって結核には
イギリス在住のブレイディみかこさんが『婦人公論』で連載している好評エッセイ「転がる珠玉のように」。Webオリジナルでお送りする35.5回は「世界の終わりとブレインフォグワンダーランド」。3回目のコロナにかかり、ようやく熱がさがったと思ったら思わぬ不調に悩まされることになり―― 谷川俊太郎さんの鋭い洞察 冬の終わりに3回目のコロナにかかった。高橋源一郎さんとリモートで対談した3月初めにようやく熱がさがったぐらいの状態だったので、「3度目です。もうプロです」と笑っていたのだったが、なんとそのときの動画を谷川俊太郎さんがご覧になったという。いま岩波書店の『図書』で谷川さんとの往復書簡を連載しているのだが、谷川さんからのお便りに、わたしがあんなに笑う人間だとは思わなかったと記されていた。あそこまで笑っていると深読みしたくなる、という実に鋭い洞察も添えて……。 さすがである。PCの前で、わたしはその
gettyimages 『戦国武将を診る』などの著書をもつ産婦人科医で日本大学医学部病態病理学系微生物学分野教授の早川智医師が、歴史上の偉人や出来事を独自の視点で分析。今回は、ウィリアム・シェイクスピア“4大悲劇”の一つ「マクベス」にみる帝王切開を「診断」する。 * * * 英国文学史上最大の天才は16世紀後半のエリザベス朝に活躍したウィリアム・シェイクスピア(1564~1616)であろう。筆者の愛奏するジョン・ダウランドやアンソニー・ホルボーン、トマス・モーリーなどの曲が劇中で演奏されたり、戯曲の一節が流行り歌になったり親しみが深い。彼の作品38編のうち、特に「ハムレット」「オセロー」「マクベス」「リア王」をして“4大悲劇”という。なかでもマクベスは人気で、我が国でも故・蜷川幸雄氏演出の舞台はご覧になった読者も多いだろう。 中世スコットランド、徳高いダンカン王の家臣で勇猛な武将マクベ
著者:古橋 忠晃出版社:名古屋大学出版会装丁:単行本(284ページ)発売日:2023-02-10 ISBN-10:481581113X ISBN-13:978-4815811136 内容紹介: 日本だけではない。若者だけではない。――共通性と違いに目を向けることで、初めて見えてくる処方箋。著者自身の国内外での臨床経験と、精神医学の知見を踏まえつつ、当事者と向きあい、社会に問いかける、「ひきこもり」「ごみ屋敷」問題を根本から考え直す洞察の書。 日仏でひきこもり支援に尽力する精神科医として「世界に貢献する日本人30」(雑誌『ニューズウィーク日本版』、2021年)の1人にも選ばれた古橋忠晃先生。注目の研究者による初の単著が刊行されました。書き下ろしの自著紹介文を特別公開します。 日本の中だけで考えていても見えてこない 「ひきこもり」「ごみ屋敷」への視点とは私は大学の保健センターで学生の診療に従事
ビール週1~2杯まで? カナダの新指針が波紋―「少量でも健康に害」 2023年01月28日13時29分 【図解】アルコール摂取リスク 【ニューヨーク時事】「少しの酒は体に良い」。この説を真っ向から否定する新たなガイドライン(指針)がカナダで発表され、波紋を呼んでいる。「少量であってもアルコールは健康を害する」と警告し、飲酒の機会が避けられない場合でも、ビールやワインなど週1~2杯程度に抑えるよう訴えている。 【特集】昭和の象徴、脱「オワコン」へ~百貨店・ビール・雑誌、Z世代に照準~ ◇リスク4分類 カナダ薬物使用・依存症センター(CCSA)は今月、アルコール摂取に関する指針を12年ぶりに改定した。近年の研究で「年齢、性別、民族、アルコール耐性、生活習慣に関係なく、飲酒は全ての人にダメージを与える」と分かったためといい、「もし飲酒するなら、量を減らすのが好ましい」と呼び掛けた。 新指針では、
一万年以上も昔、人類は狩猟採集によって生活していた。周囲は危険に満ちていた。少しでも油断すると、肉食獣や毒蛇に襲われた。だから臆病で慎重な者が生き延びた。私たちはその末裔(まつえい)だ。 一万年のあいだに人類は定住して耕作するようになり、生活は激変した。一万年前の祖先のようにビクビクして生きる必要はなくなった……はずなのに、脳の進化はゆっくりしている。一万年前と同じように、ささいなことで不安になる。 うつのほうはちょっと事情が違う。感染症と関係があるというのだ。一万年前はケガから感染症になると致命的だった。だからケガをしそうな状況になると、免疫系がフル稼働して準備態勢に入る。対人関係がギスギスしている、なんていうのも免疫系フル稼働の要因。つまりストレスだ。この状態が何カ月、何年という長さで続くと、うつになってしまう。うつはストレスに対する防御反応だ。
「人薬」とは、人との関係こそが心の病の最良の薬になり得る、ということ。なぜなら、それこそが失われた自由を取り戻すことにつながるから。本書の中で、精神科医・山本昌知はそう繰り返し語っている。対談する相手は想田和弘。山本が所長を務めていた精神科診療所「こらーる岡山」のドキュメンタリー映画『精神』『精神0』で有名な映画監督だ。対話は終始和やかなムードで進むのだが、言葉の端々に精神医療に対する二人の強い思いが滲(にじ)み出ている。 心を病んだ人たちは世間から要求される「すべき」ことに囚われ、「したい」ことができずに苦しんでいる。だからこそ治療においては、「したい」ことを言える、できる、という自由が必要になる。患者を精神病院に閉じ込め、治療と称して「すべき」義務ばかりを押しつけるやり方は逆効果であり、患者の自由をますます奪うことになる。 「助けると言っても、何もせんでええ、患者さんの所へ話を聞きに行
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