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  • 『ラヴェンナ:ヨーロッパを生んだ帝都の歴史』(白水社) - 著者:ジュディス・ヘリン 翻訳:井上 浩一 - 本村 凌二による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS

    「ヨーロッパの祖母」となった都市の盛衰ローマ帝国の中心がコンスタンティノープルに移った四世紀末、西方に新しい都が台頭する。イタリアの都市ラヴェンナにおいて、アリウス派のゴート人… 「ヨーロッパの祖母」となった都市の盛衰 ローマ帝国の中心がコンスタンティノープルに移った四世紀末、西方に新しい都が台頭する。イタリアの都市ラヴェンナにおいて、アリウス派のゴート人とカトリックのローマ人は競って、比類なき建造物とモザイクを次々と創りだした。以来三百年にわたりこの町は、学者・法律家・職人・宗教人を魅了し、まぎれもない文化的・政治的首都となる。この特筆すべき歴史をみごとに蘇らせて、書はイスラーム台頭以前の地中海世界の東西の歴史を書き変え、ビザンツ帝国の影響下にラヴェンナが、中世キリスト教世界の発展にとっていかに決定的な役割を果たしたのかを明らかにする。 全三七章の多くは、皇后ガッラ・プラキディアやゴー

    『ラヴェンナ:ヨーロッパを生んだ帝都の歴史』(白水社) - 著者:ジュディス・ヘリン 翻訳:井上 浩一 - 本村 凌二による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS
    hharunaga
    hharunaga 2024/05/17
    “四世紀末、東西に分割されたローマ帝国の西方世界の帝都となり〔…〕。ゴート人とローマ人の融合が実現〔…〕。「ヨーロッパの父」がカールなら、ラヴェンナは「ヨーロッパの祖母」である”
  • 『川柳のエロティシズム』(新潮社) - 著者:下山 弘 - 森 まゆみによる書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS

    著者:下山 弘出版社:新潮社装丁:単行(222ページ)発売日:1995-06-01 ISBN-10:410600478X ISBN-13:978-4106004780 内容紹介: 川柳のなかでも性を題材とした句「ばれ句」。浮世絵の春画とおなじように大流行し、発禁の憂目をみつつ、江戸知識人たちを熱狂させた17文字の仕掛け花火を徹底評釈する。 性で見せる粋や通好み町の大掃除の日に『誹風末摘花』という古を拾ったのだが、ちっとも句の意味がわからん。「ばれ句ってなあに」と人に聞くわけにもいかず悶々としていたので、この下山弘『川柳のエロティシズム』(新潮選書)はとても役に立った。非常に簡潔なだが、著者の長年の研鑽が知られ、文体も小気味よい。 要するに十八世紀後半、粋のお手、通の見を見せびらかしたい男たちが遊びでつくったのが川柳で、その趣味は「無知、粗野、低俗」を嘲笑する高踏的なものである。

    『川柳のエロティシズム』(新潮社) - 著者:下山 弘 - 森 まゆみによる書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS
    hharunaga
    hharunaga 2024/04/15
    “(川柳の)趣味は「無知、粗野、低俗」を嘲笑する高踏的なものである。だからばれ句は猥褻表現が目的なのでなく、性という禁忌の多い題材を扱って粋や通好みを見せるのであり、酒落やうがちを働かせるのだという”
  • 『〈世界史〉の哲学 現代篇1 フロイトからファシズムへ』(講談社) - 著者:大澤 真幸 - 橋爪 大三郎による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS

    今回われわれは、「近代篇」で見出した、西洋近代を成り立たせているメカニズムーーとりわけ「宗教としての資主義」ーーの最終的な結果として、精神のエディプス的な構造がもたらされている… 今回われわれは、「近代篇」で見出した、西洋近代を成り立たせているメカニズムーーとりわけ「宗教としての資主義」ーーの最終的な結果として、精神のエディプス的な構造がもたらされている、ということを示してきた。エディプス・コンプレックスの理論は、一九世紀近代を成り立たせていた諸契機が諸契機が結集することで生まれたものだ。この点を明らかにしたことには実は、さらなる狙いがある。この後、フロイトの理論に、とてつもなく大きな転回が生ずる。このことは、近代の後に、そして近代の延長線上に大きな断絶が現れることを示唆している。この断絶こそが「現代篇」の主題となる。(第1章より) ビーズのように繋ぐ知性の洞察「<世界史>の哲学」シリ

    『〈世界史〉の哲学 現代篇1 フロイトからファシズムへ』(講談社) - 著者:大澤 真幸 - 橋爪 大三郎による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS
    hharunaga
    hharunaga 2024/04/03
    “ファシズムは主張する。資本主義を資本主義のまま、よりよく改造できる。…「エディプス・コンプレックス」が近代人のモデル。負債に駆動される資本主義のあり方そのものだ”
  • 『文学部という冒険 文脈の自由を求めて』(NTT出版) - 著者:田島 正樹 - 張 競による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS

    より深く、より反時代的に!文学部に対する風当たりは、以前にもまして強くなっている。当の文学部自体が自信喪失して、さまざまに姑息な小手先の「改革」によって、この逆風を乗り切ろうと… より深く、より反時代的に! 文学部に対する風当たりは、以前にもまして強くなっている。 当の文学部自体が自信喪失して、さまざまに姑息な小手先の「改革」によって、 この逆風を乗り切ろうとしている。 書は、そんな世の流れに真っ向から反抗して、 臆面もなく旧き良き人文学の意義を唱えようとするものである。 文学部は、より深く反時代的に、その伝統と分に立ち返ることによってのみ、 その使命を果たすことができるからである。 聖書から、ドン・キホーテへ、カズオ・イシグロから、『映像研には手を出すな!』まで、 古今東西のテキストを縦横無人に跳躍しながら、人文学の神髄と実践に触れる。 「文脈の自由」に潜む大きな可能性文学部不要論が

    『文学部という冒険 文脈の自由を求めて』(NTT出版) - 著者:田島 正樹 - 張 競による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS
    hharunaga
    hharunaga 2024/03/30
    “著者によると、文学は文脈に深くかかわっており、文脈は自由と密接不可分の関係にあるという。…著者が示したのは「文脈の自由」である。…新しい文脈を発見することによってテクストの限界を超えることもできる”
  • 『アンチ・ジオポリティクス: 資本と国家に抗う移動の地理学』(青土社) - 著者:北川眞也 - 北川 眞也による前書き | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS

    地政学が見落としてきた運動が、聞こうとしなかった叫びが、ここにある。商品の合理的な移動を目指し、あくなき開発を続ける資。過剰な移民の移動を管理すべく、境界を巧妙に操作する国家。… 地政学が見落としてきた運動が、聞こうとしなかった叫びが、ここにある。 商品の合理的な移動を目指し、あくなき開発を続ける資。過剰な移民の移動を管理すべく、境界を巧妙に操作する国家。世界の地理は、こうした資と国家によってのみ形作られている――わけではない。地中海の孤島の移民収容所で、イスラエルに包囲されたパレスチナの都市で、フードデリバリーの自転車が走る路上で。地球上のさまざまな場所で、境界をすり抜け、い破る人々が声をあげている。いまこそ、彼らの共鳴する叫びに耳を傾けるときだ。欲望と叛乱の地理学の、野心あふれる実践。 地理学者の北川眞也さんは、イタリアの「移民の島」ランペドゥーザ島をはじめ、地球の津々浦々で、

    『アンチ・ジオポリティクス: 資本と国家に抗う移動の地理学』(青土社) - 著者:北川眞也 - 北川 眞也による前書き | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS
    hharunaga
    hharunaga 2024/03/24
    「世界地図において、ある国家の色が他の国家のそれと重なり合うこと、混じり合うことは基本的にない。…地政学的想像力の自然さと堅固さ、男性性と暴力性は根底から問われなければならない」
  • 『スーザン・ソンタグ 「脆さ」にあらがう思想』(集英社) - 著者:波戸岡 景太 - 橋爪 大三郎による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS

    進歩という名の暴力に対する、「知性」の闘い──クィア批評やメディア論における最重要人物、ついに入門書が誕生!【おもな内容】”反解釈・反写真・反隠喩”で戦争やジェンダーといった多岐に… 進歩という名の暴力に対する、「知性」の闘い── クィア批評やメディア論における最重要人物、ついに入門書が誕生! 【おもな内容】 ”反解釈・反写真・反隠喩”で戦争やジェンダーといった多岐にわたる事象を喝破した、批評家スーザン・ソンタグ。 あらゆる脆さにあらがう、その「カッコよさ」は、しかし生誕から90年を迎え、忘れかけられている。 書は「《キャンプ》についてのノート」で60年代アメリカの若きカリスマとなったデビューから、「9・11事件」への発言で強烈なバッシングの対象になった晩年までの生涯とともに、ソンタグという知性がなぜ読者を挑発し続けるのかを鮮やかに描き出す。 自身のマイノリティ性や病にあらがい到達した思

    『スーザン・ソンタグ 「脆さ」にあらがう思想』(集英社) - 著者:波戸岡 景太 - 橋爪 大三郎による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS
    hharunaga
    hharunaga 2024/03/03
    「キーワードはヴァルネラビリティ(脆弱なこと)。厳しい言葉で批評しつつも、人間は言葉をはみ出ていて、誰もが傷ついているのを忘れないのが彼女だ。」
  • 『萌えの研究』(講談社) - 著者:大泉 実成 - 中条 省平による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS

    著者:大泉 実成出版社:講談社装丁:単行(222ページ)発売日:2005-12-01 ISBN-10:4062128594 ISBN-13:978-4062128599 内容紹介: 非オタクが覗いた、史上最強のオタク読書。「フロイト」「ウィトゲンシュタイン」「ノルウェイの森」「菊地秀行」「エヴァンゲリオン」「江戸春画」「家族への回帰」「ハーレム感」などのキーワードを使って「萌え」の質に迫る。 「萌え」関連の市場規模が八八八億円という報道は波紋を広げたようだ。そんなに儲かるんなら、企業として、日国として、萌えを支援しようという動きさえ出てきた。何ともあさましい話である。政財界のお偉方が「萌え」を理解しているとは思えないからだ(ALL REVIEWS事務局注:書評執筆年は2006年)。 萌えとは、「マンガやアニメやゲームのキャラクターに恋心に近い感情を抱くこと」と大ざっぱな定義はでき

    『萌えの研究』(講談社) - 著者:大泉 実成 - 中条 省平による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS
    hharunaga
    hharunaga 2024/02/18
    「ジャンルは、ライトノベル、テーブルトークRPG(何のこっちゃ)、美少女ゲーム(通称エロゲー)、マンガにアニメ。次第に萌えに熱くなりながらも、常に距離をもった記述が、萌えの特異性と普遍性を照らしだす」
  • 『文学のエコロジー』(講談社) - 著者:山本 貴光 - 鴻巣 友季子による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS

    文芸作品をコンピュータで動くシミュレーションとしてつくるとしたら、なにをどうすればよいだろうか。作品をゲームクリエーターの目、プログラマーの目で眺める。構造やメカニクスに焦点を当… 文芸作品をコンピュータで動くシミュレーションとしてつくるとしたら、なにをどうすればよいだろうか。作品をゲームクリエーターの目、プログラマーの目で眺める。構造やメカニクスに焦点を当てる技術を駆使し、文学をエコロジーとして見る。作品世界を探検するための地図を持とう。 小説にはなにが書かれて、なにが書かれていないのか。客観的に作品を眺めることで、見えてくる、楽しめる、作品世界とその魅力。 文学を動的環境の中で生け捕りに小説はミメーシス(模倣)の観点からして、文芸作品のなかで最も甚だしい錯覚を要する、最も似ていない物真似である、という称え方をしたことがある。 たとえば、人の生を再現する演劇は人間の身体が媒体になり、その

    『文学のエコロジー』(講談社) - 著者:山本 貴光 - 鴻巣 友季子による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS
    hharunaga
    hharunaga 2024/02/08
    “そもそも小説というのは(飛ばし読み、斜め読みはできても)、視聴覚作品のように倍速で「知る」ことができるものではなく、一語一句を等速で「体験」するしかないものだと改めて実感する”
  • 『力と交換様式』(岩波書店) - 著者:柄谷 行人 - 橋爪 大三郎による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS

    生産様式から交換様式への移行を告げた『世界史の構造』から一〇年余、交換様式から生まれる「力」を軸に、柄谷行人の全思想体系の集大成を示す。戦争と恐慌の危機を絶えず生み出す資主義の… 生産様式から交換様式への移行を告げた『世界史の構造』から一〇年余、交換様式から生まれる「力」を軸に、柄谷行人の全思想体系の集大成を示す。戦争と恐慌の危機を絶えず生み出す資主義の構造と力が明らかに。呪力(A)、権力(B)、資の力(C)が結合した資=ネーション=国家を揚棄する「力」(D)を見据える。 【目次】 序論 1 上部構造の観念的な「力」 2 「力」に敗れたマルクス主義 3 交換様式から来る「力」 4 資制経済の中の「精神」の活動 5 交換の「力」とフェティッシュ(物神) 6 交換の起源 7 フェティシズムと偶像崇拝 8 エンゲルスの『ドイツ農民戦争』と社会主義の科学 9 交換と「交通」 第一部 交換

    『力と交換様式』(岩波書店) - 著者:柄谷 行人 - 橋爪 大三郎による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS
    hharunaga
    hharunaga 2024/02/07
    「マルクスは〔『資本論』を〕第一巻で筆を止め、モーガンの『古代社会』を読みふけった。資本主義の彼方に、原初の交換様式Aが高次元で復帰するさまを思い描こうとした」
  • 『文学は地球を想像する エコクリティシズムの挑戦』(岩波書店) - 著者:結城 正美 - 中村 桂子による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS

    著者:結城 正美出版社:岩波書店装丁:新書(248ページ)発売日:2023-09-20 ISBN-10:4004319889 ISBN-13:978-4004319887 内容紹介: 環境問題を考える手がかりは文学にある。ソロー、石牟礼道子、梨木香歩、アレクシエーヴィチ、カズオ・イシグロらの作品に、環境をめぐる文学研究=エコクリティシズムの手法で分け入ろう。人間に宿る野性、都市と絡みあう自然、惑星を隅々まで学習するAI──地球と向き合う想像力を掘り起こし、未来を切り開く実践の書。 エコクリティシズムとは「文学と物理的環境の関係についての研究」である。人間活動の地球生命維持システムへの破壊的影響に対する不安を、地球を守る運動にはせず、そこでの地球はどのような見地から捉えられているかと文学研究の立場から斬りこむのだ。そこには、「環境の危機は想像力の危機である」という認識がある。その通りだ。 ま

    『文学は地球を想像する エコクリティシズムの挑戦』(岩波書店) - 著者:結城 正美 - 中村 桂子による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS
    hharunaga
    hharunaga 2024/01/06
    “エコクリティシズムとは「文学と物理的環境の関係についての研究」である。…そこには、「環境の危機は想像力の危機である」という認識がある”
  • 『「日本語」の文学が生まれた場所: 極東20世紀の交差点』(図書出版みぎわ) - 著者:黒川 創 - 黒川 創による前書き | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS

    著者:黒川 創出版社:図書出版みぎわ装丁:単行(608ページ)発売日:2023-12-11 ISBN-10:4911029048 ISBN-13:978-4911029046 いまある日語の文学は、どのように書き継がれていったのか―― この度、『鶴見俊輔伝』で第46回大佛次郎賞を受賞した黒川創の評論集が刊行されました。書は、2013年に伊藤整文学賞を受賞した『[完全版]国境』の続編ともいえる内容であり、90年代後半から現在に至るまで、黒川創が思索し続けた「国境」と「外地」をめぐる文学史論の決定版です。2015年に河出書房新社より刊行された『鷗外と漱石のあいだで 日語の文学がうまれる場所』に、アンソロジー『〈外地〉の日語文学選』(新宿書房、全三巻、1996年)の解説、書下ろしの「新しい定住者が生みだす世界 金達寿から始まったもの」を加えてまとめた一冊。800人を超える人名索引のほか

    『「日本語」の文学が生まれた場所: 極東20世紀の交差点』(図書出版みぎわ) - 著者:黒川 創 - 黒川 創による前書き | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS
    hharunaga
    hharunaga 2023/12/26
    “①極東アジアの「ハブ」としての東京 ②近代文学が獲得する「女たちの話体」 ③「外地」の日本語文学が加わる歴史像 ④「新しい定住者」によって文学は豊かさを増す”
  • 『フーコーと精神医学: 精神医学批判の哲学的射程』(青土社) - 著者:蓮澤 優 - 斎藤 環による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS

    著者:蓮澤 優出版社:青土社装丁:単行(424ページ)発売日:2023-09-26 ISBN-10:4791775708 ISBN-13:978-4791775705 内容紹介: 「狂気」の治療は当に必要なのか。「正常な人間」は存在するのか ひとを規格に押し込める治療ではなく、主体を自由にし、ただひとりの自分自身でありうる治療を目指して。その歴史から司法精神医学制度の現在地にまでアプローチする。臨床医の著者が戸惑いながら考え、精神医学と哲学の専門知を往還する唯一無二の書。 「反精神医学」から治療論を見出す読みミシェル・フーコーという名前から人は何を連想するだろうか。一望監視装置(パノプティコン)? 生権力批判? 「人間の消滅」? スキンヘッドの戦闘的知識人? いずれにせよ、後世に与えた影響という点では、彼ほど「知の巨人」の呼称が似つかわしい存在もまれであろう。 フーコーは、主著『狂気の

    『フーコーと精神医学: 精神医学批判の哲学的射程』(青土社) - 著者:蓮澤 優 - 斎藤 環による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS
    hharunaga
    hharunaga 2023/12/19
    “著者はフーコーの精神医学批判を批判しつつ、…最晩年の「自己の技法」論に、精神療法の指針を見出そうというのだ。…自己への配慮は他者への配慮につながり、成熟と治癒が可能となる”
  • 『アイドル・コード: 託されるイメージを問う』(青土社) - 著者:上岡磨奈 - 上岡 磨奈による後書き | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS

    著者:上岡磨奈出版社:青土社装丁:単行(214ページ)発売日:2023-11-21 ISBN-10:4791776003 ISBN-13:978-4791776009 「アイドル」を取り巻く状況がめまぐるしく変化する現在において、わたしたちはいかに「アイドル」について考えていけば良いのでしょうか。かれらに絡まるさまざまな文脈をていねいに解きほぐしながらその現在地をまなざし、考える、上岡磨奈さんの『アイドル・コード——託されるイメージを問う』が刊行されました。刊行を記念して書「あとがき」の一部を公開いたします。 「アイドル」が纏うものとはアニメ「アイドル伝説えり子」の中のワンシーン、鉢巻をつけた大勢のファンに名前を呼ば れてえり子がステージに立つ、そんなシーンが、また音楽番組でたっぷりのフリルに包まれた 衣装で恥ずかしそうに自己紹介するWinkの姿が、私にとってのアイドルの原風景です。「

    『アイドル・コード: 託されるイメージを問う』(青土社) - 著者:上岡磨奈 - 上岡 磨奈による後書き | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS
    hharunaga
    hharunaga 2023/12/12
    “アイドルと自分の思い出は、世代によって異なり、また関心や生育環境が違えば…全く共感できないということも起こる…のに、なぜか「アイドル」という言葉でみんなで同じ話をしている気になってしまう”
  • 『エレメンタル 批評文集』(左右社) - 著者:管 啓次郎 - 永江 朗による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS

    おれは何者でもない、そんな否定から出発し、広大なる風景をかたちづくった詩人フェルナンド・ペソア、英語というパトリアを持ちながら異郷に迷い、イタリア語、フランス語、スペイン語に挑… おれは何者でもない、そんな否定から出発し、 広大なる風景をかたちづくった詩人フェルナンド・ペソア、 英語というパトリアを持ちながら異郷に迷い、 イタリア語、フランス語、スペイン語に挑んだヘミングウェイ、 師匠ジョイスに劣らぬ語学のひとであり、 知られざるメキシコ詩の翻訳者だったサミュエル・ベケット、 現代のシステムのはずれへと歩みつづける稀有なる旅人、写真家津田直、 書くことと読むことにおいて、無数の線をつなぎ、 解きほぐしてゆくレベッカ・ソルニット。 海と島影、山々とマングローブが織りなす小さな海域が響かせる世界文学をいち早く論じ、 文学と翻訳の可能性と自由とを描いてきた詩人・比較文学者・翻訳家、管啓次郎の批評

    『エレメンタル 批評文集』(左右社) - 著者:管 啓次郎 - 永江 朗による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS
    hharunaga
    hharunaga 2023/12/06
    “読書のよろこびをこんなに簡潔に言い表してくれるなんて。著者は(レベッカ・)ソルニットを「生態学的意識をつねにもちつつ森羅万象を考える人々のひとり」というが著者自身もそう”
  • 『鬼と日本人の歴史』(筑摩書房) - 著者:小山 聡子 - 磯田 道史による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS

    などで親しまれながらも恐怖の対象でもある「鬼」。「鬼」は古代では畏怖の対象だったが、時が経つにつれ、都合の悪いものを表すような存在となっていった。その歴史をひもとけば、日人… 絵などで親しまれながらも恐怖の対象でもある「鬼」。「鬼」は古代では畏怖の対象だったが、時が経つにつれ、 都合の悪いものを表すような存在となっていった。その歴史をひもとけば、日人の心の有様もみえてくる。 【目次】 第一章 鬼の登場――古代 1 大陸からの到来古代中国の鬼/仏教の鬼/「鬼」の読み方/古記録に記された死霊の鬼…… 2 恐れられた忌夜行日歴史書に記録された鬼/酔っぱらってしまえば怖くない?/無意識か故意か?…… 3 病気をもたらす鬼疫鬼の姿/道長の失敗/加持で退治されるモノノケ/多様な鬼…… 第二章 鬼ヶ島のはじまり――中世 1 鬼の対処法鬼の姿/百鬼を見るための術/調伏されはじめる疫鬼/捨てられた

    『鬼と日本人の歴史』(筑摩書房) - 著者:小山 聡子 - 磯田 道史による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS
    hharunaga
    hharunaga 2023/11/24
    “本書の価値は…近現代までの初の「鬼の通史の新書」を仕上げた点にある。…日本において鬼が、病気や障がい、よそ者への差別や排除・侵略を正当化する道具立てとされてきた事実を著者は鋭く指摘”
  • 『中世ヨーロッパ 「勇者」の日常生活:日々の冒険からドラゴンとの「戦い」まで』(原書房) - 著者:ケイト・スティーヴンソン 翻訳:大槻 敦子 - ケイト・スティーヴンソンによる解説 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS

    著者:ケイト・スティーヴンソン翻訳:大槻 敦子出版社:原書房装丁:単行(290ページ)発売日:2023-09-19 ISBN-10:456207342X ISBN-13:978-4562073429 内容紹介: 選ばれし「勇者」はあなた! リアルな中世を冒険するのに何が起こって何が必要なのか。宿に泊まり、姫を助け、魔術師を仲間にし、そしてドラゴンを退治する! 「実例」とともに歴史家が案内するユーモアあふれる異色の歴史物語。 選ばれし「勇者」はあなた! リアルな中世を冒険するのに何が起こって何が必要なのか。宿に泊まり、姫を助け、魔術師を仲間にし、そしてドラゴンを退治するには。「実例」とともに歴史家が案内するユーモアあふれる『中世ヨーロッパ 「勇者」の日常生活』より、著者による解説を公開します。 あなたが訪れる世界中世の世界の特徴は4つ。それは丸い、大きい、不完全、そして海のモンスターだ。

    『中世ヨーロッパ 「勇者」の日常生活:日々の冒険からドラゴンとの「戦い」まで』(原書房) - 著者:ケイト・スティーヴンソン 翻訳:大槻 敦子 - ケイト・スティーヴンソンによる解説 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS
    hharunaga
    hharunaga 2023/11/18
    “中世の物語はつまり、「キリスト教世界」と「イスラム教世界」をそれぞれ内側から作り直そうとする人々の物語でもある”
  • 『日本とは何か――日本語の始源の姿を追った国学者たち』(みすず書房) - 著者:今野真二 - 橋爪 大三郎による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS

    語の始原の姿を突き止めることで「日の始め」を明らかにしようとした、4人の国学者たち。契沖(1640-1701)がたどりついたのは「漢字」だった。仮名発生以前、中国語をあらわす文字であ… 日語の始原の姿を突き止めることで「日の始め」を明らかにしようとした、4人の国学者たち。 契沖(1640-1701)がたどりついたのは「漢字」だった。仮名発生以前、中国語をあらわす文字である漢字によって、日語はどのように文字化されていたのか。 賀茂真淵(1697-1769)は「音」に言語の根幹を見いだす。「語を意味を有する各音に分解する」という真淵の方法は、音節、五十連の音の気づきをもたらした。 言語化されたことばを精緻に読み解くことで上代の人間のこころを知ろうとした居宣長(1730-1801)。その先に結実した係り結びの研究、漢字の字音研究は、今日までその価値を失っていない。 「異端の国学者」

    『日本とは何か――日本語の始源の姿を追った国学者たち』(みすず書房) - 著者:今野真二 - 橋爪 大三郎による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS
    hharunaga
    hharunaga 2023/11/16
    「契沖…は真言宗の僧…。…仮名ができる前の万葉集は暗号同然の漢字列。…まるでクロスワードパズルである。…サンスクリット語からヒントをえた独創的な業績だ」
  • 『書物について―その形而下学と形而上学』(岩波書店) - 著者:清水徹 - 堀江 敏幸による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS

    いつも手元にあって慣れ親しんでいる/書物。書物とは何だろうか?「もの」としての書物が世に現れて、現代に至るまでその身につけてきた特質とそのありよう。書物という物体とその内容をなす… いつも手元にあって慣れ親しんでいる/書物。書物とは何だろうか?「もの」としての書物が世に現れて、現代に至るまでその身につけてきた特質とそのありよう。書物という物体とその内容をなすものがひとつに溶けこんだ相において自在に語られる「書物への夢夢の書物」。その考察はおのずとヨーロッパ精神史を飾る多くの詩人、作家、思想家たち-マラルメ、ユゴー、ダンテ、プラトン、ビュトールら-の書物との関わり、文人たちの測り知れない書物への想いへと及んでゆく。 内容と形態通常、「についての」とは、世の読書家たちの興味関心をさらにあおるような書物の批評的紹介か、稀覯(きこう)を漁る愛書家たちに向けられた書誌や目録を指す。大ざっぱ

    『書物について―その形而下学と形而上学』(岩波書店) - 著者:清水徹 - 堀江 敏幸による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS
    hharunaga
    hharunaga 2023/10/29
    「順を追い時間に拘束されながらでしか意味の摑めない音読と、中断や後戻りの可能な黙読の対比」「モノとしての書物の歴史が精神史といかに密接につながっているか」
  • 『訂正可能性の哲学』(ゲンロン) - 著者:東浩紀 - 東 浩紀による後書き | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS

    著者:東浩紀出版社:ゲンロン装丁:単行(ソフトカバー)(364ページ)発売日:2023-09-01 ISBN-10:4907188501 ISBN-13:978-4907188504 内容紹介: 正しいことしか許されない時代に、「誤る」ことの価値を考える。 世界を覆う分断と人工知能の幻想を乗り越えるためには、「訂正可能性」に開かれることが必要だ。ウィトゲンシュタインを、ルソーを、ドストエフスキーを、アーレントを新たに読み替え、ビッグデータからこぼれ落ちる「私」の固有性をすくい出す。ベストセラー『観光客の哲学』をさらに先に進める、著者30年の到達点。 哲学とはなにか、と問いながらこのを書いた。書の主題である「訂正可能性」は、その問いに対する現時点での回答である。哲学とは、過去の哲学を「訂正」する営みの連鎖であり、ぼくたちはそのようにしてしか「正義」や「真理」や「愛」といった超越的な概念

    『訂正可能性の哲学』(ゲンロン) - 著者:東浩紀 - 東 浩紀による後書き | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS
    hharunaga
    hharunaga 2023/10/17
    “ぼくは、いつごろからか、哲学者の使命は、正義や愛について「説明する」ことにあるのではなく、それらの感覚を「変える」ことにあるのだと考えるようになった。それが本書でいう「訂正」である。”
  • 『柄谷行人『力と交換様式』を読む』(文藝春秋) - 著者:柄谷 行人,大澤 真幸,鹿島 茂,佐藤 優,東畑 開人,渡邊 英理,國分 功一郎,斎藤 幸平 - 斎藤 環による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS

    絶望的な未来にも〈希望〉は必ずある1970年代後半から文芸批評家として活躍し、90年代後半からはマルクスやカント、ホッブスの読解から「交換」に着目した理論で社会や歴史を読み解いてきた柄… 絶望的な未来にも〈希望〉は必ずある 1970年代後半から文芸批評家として活躍し、90年代後半からはマルクスやカント、ホッブスの読解から「交換」に着目した理論で社会や歴史を読み解いてきた柄谷行人さん。 その集大成ともいうべき『力と交換様式』では、社会システムをA=贈与と返礼の互酬、B=支配と保護による略取と再分配、C=貨幣と商品による商品交換、D=高次元でのAの回復という4つの交換様式によって捉え、とりわけ資主義=ネーション=国家を揚棄する、人間の意思を超えた「D」の到来をめぐって思考を深めた。 「Aの回復としてのDは必ず到来する」。 民主主義と資主義が行き詰まりを見せる混迷の危機の時代、 絶望的な未来

    『柄谷行人『力と交換様式』を読む』(文藝春秋) - 著者:柄谷 行人,大澤 真幸,鹿島 茂,佐藤 優,東畑 開人,渡邊 英理,國分 功一郎,斎藤 幸平 - 斎藤 環による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS
    hharunaga
    hharunaga 2023/10/09
    “評者にはこの文脈における(交換様式)Dこそが、「オープンダイアローグ(フィンランド発の対話実践)」であると考えている。対話実践は理論の成果というよりは、現場にいきなり「やってきた」”