日銀の植田総裁の金曜の記者会見は、ちょっとしたサプライズだった。1ドル=155円を突破して、円安が急速に進んでいる最中だったが、金融政策決定会合ではまったく政策変更がなかった。これについて「円安の進行は無視できる範囲だったということでしょうか?」という質問に「はい」とはっきり答えた(18:30~)。 円安はインフレ要因としては無視できる? これはその前に円安によるコストプッシュの要因(植田氏のいう「第一の力」)はそれほど大きくないと説明したことの繰り返しだが、為替市場に大きな影響を与えた。会見前の156.9円から1時間で1円も円安になり、終値は158円台に乗った。 前後を聞いてみればわかるように、この発言は円安を無視するという意味ではなく、今回の円安は(今のところ)コストプッシュ要因ではないという意味だが、円安についてはどう考えているのか、という質問には「為替の水準についてはお答えできない
内閣府が発表した日本の一人あたりGDP(米ドルベース)がイタリアを下回ってG7で最低になったことが話題を呼んでいる。この最大の原因は円安だが、これをどうみるべきだろうか。 アベノミクスの評価は、企業と消費者で大きくわかれる。企業収益は史上最高で、日経平均株価はバブル後最高値を記録したが、1991年以降の30年間で実質賃金は5%しか上がっていない。 日本人の賃金はアジアに近づいた その原因は日本の労働生産性が低いことだといわれるが、日本人の知能は高く、IQテストでも数学テストでも世界トップである。その労働が付加価値を生んでいない原因は、労働市場のゆがみである。 1990年代以降、グローバリゼーションで世界の労働市場は大きく変わったが、日本の雇用慣行は硬直的で、中高年のホワイトカラーが社内失業する一方、主婦や老人再雇用のパート労働者が増え、平均賃金が下がった。 このため製造業は人口の減少する日
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為替が急速に円高(ドル安)になっている。今は1ドル=137円台である。この短期的な原因は明らかだ。アメリカのインフレが沈静化し、FRB(連邦準備制度理事会)の利上げが打ち止めになったことである。ドル円レートは、日米の実質金利差ときわめて強い相関がある。外為市場は日米の金利差が縮むことを織り込み始めているのだ。 日銀の「出口」が近づいている もう一つの要因は、日銀の量的緩和の「出口」が近づいてきたことだろう。今月27日からの金融政策決定会合で、日銀がYCC(長短金利操作)の上限金利を上げ、実質的に解除する見通しが強まった。 欧米ではひどいインフレが起こっているが、日本ではそれほどでもない。これは欧州ではウクライナ戦争以後の資源価格の上昇の影響が大きく、アメリカではバイデン政権のバラマキ財政の影響が大きかったからだが、日本はどっちの影響もそれほど大きくなかった。 日本のインフレの最大の原因は、
きょうのYCC修正は、ほとんどの市場参加者にとってもサプライズだったようだ。これは意図したものではなく、事前に暗示すると、国債の空売りが殺到して大変なことになるからだろう。 ◆ 円高 137円→133円 日銀のサプライズ緩和修正で、ドル円は一気に4円も円高に振れました。日経平均はいま700円ほど下落しています。このあと15:30~黒田総裁の記者会見。note【12月は初月無料】でスピーディーにカバーします。 pic.twitter.com/DDXEmvilSC — 後藤達也 (@goto_finance) December 20, 2022 大きくゆがんだイールドカーブ 国債のイールドカーブは、次の図のように日銀が指し値オペをしている10年物だけ大きく凹み、7年物と逆転していた。黒田総裁が、記者会見で「イールドカーブのゆがみがひどくなっている」と繰り返したのは嘘ではない。 国債のイールドカ
電力危機の話で、わかりにくいのは「なぜ発電所が足りないのか」という問題である。原発が再稼動できないからだ、というのは正しくない。もちろん再稼動したほうがいいが、火力発電設備は十分ある。それが毎年400万kWも廃止されるから、足りなくなるのだ。 なぜ、まだ使える発電所が廃止されるのか。それは稼働率が落ちて、採算がとれなくなるからだ。これについてたそがれ電力氏の説明がわかりやすいので、紹介しておこう。 しかし、東日本大震災によって「既存電力システムの限界」が語られるようになり地域独占・供給義務・総括原価の3点セットは解体され電力の全面自由化がなされた。この際、小売電気事業者に対して自分の客の需要に見合うだけの供給力確保を義務付けたものの、これがザルだったのが不幸の始まり。 — たそがれ電力 (@Twilightepco) June 12, 2022 総括原価主義のときは電力不足は起こらなかった
2022年03月11日10:00 カテゴリマーケット日本経済 為替政策に発想転換を アメリカの2月度のインフレ率が発表になりました。事前予想通りの昨年同月比7.9%上昇で引き続き40年ぶりの記録となっています。問題は来週開催されるFOMCでの利上げの決定がどのような内容になるのか、そしてフォワードガイダンスをどうみるかという点に注目が移ってきています。 その中で私が気になるのは円ドルの為替相場です。アメリカのインフレ率が高めに出た→FOMCがタカ派的な金融政策を発表するだろう→ドル買い円売りの流れが強まる公算→チャート的には116円台を飛び越えて118円から120円に向かう展開があり得るかもしれません。 116円台は今年1月、2月とも一時的につけていたのですが、その後、円高に振れる展開でした。今回着目しているのは2月11日に116円台をつけた後、ウクライナ問題で一昔前なら「有事の円買い」だ
2021年01月13日10:00 カテゴリ政治一般経営 携帯電話料金引き下げ政策は正しかったのか? 政権が優先度を高めて進めてきた携帯電話料金の引き下げは確かにここにきてぐっと下がってきており、表面上、政権主導の引き下げ計画は成功したように見えます。しかし、商品やサービスの価格を政府が論理的でそれをするに足る十分な理由が伴わなくても介入することが正しいのか、じっくり考える必要がありそうです。 ツィッター社がトランプ大統領のアカウントを永久追放、フェイスブック社も無期限の停止をしています。これに対してかみついたのが欧州の両輪、ドイツとフランスであります。メルケル首相は表現の自由を鑑みると民間の企業が独断でそんなことを決めてよいのかと声高に述べています。守られている権利を取り上げたというわけです。 ならばその逆もしかりで政府が民間企業の設定価格を引き下げさせることが政策的に正しいのか、ともいえ
「日本は緩和のスピードが早過ぎた」データ分析の専門家が考える今回の流行の理由第2波も終わらないまま、危機的な状況に近づきつつある今回の流行。何が原因だったのでしょうか? そして、二次感染を減らす4要素とは? 感染対策と経済との両立が叫ばれ続け、人の移動や飲食を促すGo To事業が行われてきたが、感染対策を考える立場からはこうした政策をどう見ているのか。 今回の流行に至った原因をまず分析していただき、二次感染を防ぐ要素についても語っていただいた。 ※西浦さんの著書の刊行に合わせ出版社が主催したグループ取材の前半は参加媒体の事前質問のうち共通する質問に答え、後半は各社1問ずつの個別質問に回答する形で行われた。追加取材をした上で、読みやすいように構成を変えている。 「日本は緩和のスピードが驚くほど早い」ーー医師向けの媒体「m3」でもGo Toトラベル事業が感染拡大に与えた影響について考察されてい
東京大学総長選考の現実には無風の状態で火のない所に煙を立てるのとはわけが違い、これはまた下品なことをしたものだ・・・。 そう思いながら追加報道を見ていたのですが、まあこれが揃いも揃って「日本学術会議」とは何たるものか、およそわきまえない、説明にも何にもなっていない怪説だらけで呆れました。 筆者は2004年、黒川清・日本学術会議会長のもとで「第三次科学技術基本計画」の学術会議分のドラフトを自由に(今ですからハッキリ書きますが、好きなように)加筆改訂させてもらった経験があります。 30代の私に、「縦横に腕を振るってよろしい。責任は俺が取るから」と投げてくれた黒川さんは、本当に器量の人で、のちにも3.11以降の福島など様々な案件で、大変多くご指導をいただきました。 「政策提言を出す」のが、学術会議の仕事です。 この経験のおかげで、政策を書くことに関しては、30代半ば以降かなり慣れました。 知る人
内閣改造に比べると扱いが小さいが、今井尚哉首相補佐官、佐伯耕三首相秘書官、長谷川栄一内閣広報官が退任した。いずれも経産省出身の「官邸官僚」と呼ばれた人々である。他の秘書官は留任したので、菅首相の経産省との絶縁ともいえよう。特に今井氏は経済政策だけではなく最近は外交も仕切る司令塔だったので、この影響は大きい。 今井氏といえば多くの人が思い出すのが、2016年の伊勢志摩サミットのプレゼンである。安倍首相はサミットで各国首脳にこの図を見せて「商品価格がリーマンショック前後での下落幅である55%と同じ」で「リーマン級の経済危機の再燃を警戒する」と説明した。 ちょっと見ると商品相場の暴落が原因でリーマンが破綻したようだが、因果関係は逆である。サブプライムローンに巨額の不良債権が発生していることが表面化したのは2007年8月で、2008年5月には投資銀行ベア・スターンズの経営が破綻した。これが図の左の
安倍首相が辞意を表明したことで、安倍政権の総括があちこちで始まっています。僕は基本的にこの政権を評価していませんが、きっと評価する向きの方もいるのでしょうね。 僕がこの政権を評価していない理由は、こちらの2つの記事でおおよそ言い尽くされています。一つは野口悠紀雄氏、もう一つは英フィナンシャル・タイムズ紙の翻訳記事ですが、いずれも一読の価値があります。日本が置かれた現時点での状況を正確に把握しておくためにもお勧めします。 もはや打つ手はないのか?安倍政権の功罪はさておいて冷静になって考えてみると、日本は極めて厳しい状況に置かれています。人口減少、高齢化、巨額の財政赤字、維持できない年金、変われない社会...。政権が変わったところで、もはやどうにもならないような印象さえ受けます。 そんなわけで今日は、この行き詰まった状態をいったいどうやって脱すればいいのかを考えてみました。 ※この文章は単品で
「Buy my Abenomics!(アベノミクスは買いだ!)」。安倍晋三首相は2013年、こう呼びかけた。そして我々は買った。 「何々ノミクス」というブランディングの歴史的な勝利で、安倍氏は「大胆な金融政策と機動的な財政政策、成長戦略」の三本の矢が日本の経済を一変させることを世界に納得させた。 8年以上に及ぶ在任期間を経て辞任することになった今、審判を下す時だ。アベノミクスは成功したのか――。 シンプルな答えは「ノー」だ。 アベノミクスの中核的な目標は、2%のインフレターゲットだった。だが、新型コロナウイルスに襲われる前でさえ、日本のインフレ率はせいぜい1%程度にしか到達しなかった。これは失敗だ。 だが、リーグ戦で勝てなかったサッカーチームと同様、敗北は必ずしもダメだったことを意味しない。ただ、不十分だったということだ。 アベノミクスにも光った時はある。「日本化」――停滞へ向かう景気下降
経済からみた場合、第二次安倍政権の最大のポイントは、わが国ではじめてデフレ、すなわち物価の継続的な下落を日本経済の最大の課題と規定し、その克服は経済政策によって実現可能であるとした点にあります。日本経済は1997年に非金融法人のISバランスが貯蓄過剰に転じ、1998年から物価の継続的な下落が始まりました。以来、日本の低成長の原因としてデフレに注目した政治家は何人かいましたが、雨乞い的にその解消を願う人、人口減少だからしかたない、技術革新で製造コストが削減されれば不可避だと諦める人はいても、処方箋を示して経済政策によって解決できるのだ、と明確に打ち出した政治家はいませんでした。 野党時代の安倍氏の提案した、建設国債の日銀買い取り、インフレ目標の設定と政府と中央銀行のアコードによるデフレ脱却について、当時の白川方明日銀総裁は「IMFが助言する際に『やってはいけないリストの最上位』」「悪影響が大
2020年07月20日06:30 カテゴリ もし今後重症者が増え、医療崩壊がおき死者が増えたら、それは対策できなかった政治の責任 まず宣伝です。宮坂先生がコロナの免疫について話されています。 再放送は BS1 7月23日(木)午後4:00~4:50 総合 7月30日(木)午前1:35~2:25(水曜深夜) です。 瀬名秀明さん(作家)、舘田一博先生(感染症学会理事長)、宮坂昌之先生(阪大)、岩崎明子先生(イェール大)が語る内容は少しマニアックに思えるかもしれませんが、難しい免疫の話、私が言いたいことをとてもわかりやすく話してくれてます。是非みていただければと思います。特に最後の「免疫力」の解説は最高! さあちゃんとやれば大丈夫と言いながら重症者が12人になったようです。忽那先生はフロリダの二の舞になりそうだと話されています。 そして3ヶ月にわたる現場の奮闘ぶりがNHKスペシャルで流れました
2020年06月08日06:00 カテゴリ新型コロナウイルス 不思議な国・日本でのコロナ禍 「感謝」という言葉は政治用語ではないが、日本人は他の国に比べて新型コロナウイルスの感染者数、死者数が少ないことに感謝している様子はなく、安倍晋三政権に対して60%以上の国民が同政権下のコロナ対策に批判的だ、という時事通信の世論調査が報じられていた。 時事通信が実施した5月の世論調査によると、新型コロナウイルス感染症をめぐる政府の取り組みに関しては「評価しない」が60.0%を占め、「評価する」の37.4%を大きく上回った。 安倍政権の支持率が39%余りで、不支持率が高いのは他の問題の影響もあるだろう。緊急事態宣言の発令中、黒川弘務・東京高検検事長の賭け麻雀問題がメディアで報道され、同検事長が辞任に追いこまれたことを受け、首相への責任問題と絡んで支持率が低下した、と解釈出来る。 しかし、新型コロナ対策に
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