私たち日本人は「鈴虫」の声を心地よく思ったり、その声に癒やされたりするが、西欧人にとってはただの騒音にしか聞こえないという。同じ音を一方は心地よいと感じ、もう一方では不快だと感じる。その違いはどこからくるのだろうか。また、なぜある人の発する声に魅了されるのか。なぜ言葉で気持ちが伝えられるのか。いまだ誰も、その問いに対する明確な答えを出せずにいる。しかし、音や声の背後に「倍音」(ばいおん)が存在していることを知ると、その謎は少しずつ、ほどけていく。 音のしくみ-基音と倍音 「倍音」とはいったい何なのだろうか。まずは音のしくみから見ていこう。たとえば、「ド・レ・ミ」などの音は、それぞれが1つの音としてとらえられがちだが、実は複数のさまざまな音によって構成されている。この「さまざまな音」を倍音と言う。音のなかに倍音がどのように含まれているかによって、異なる音色が作られるのである。 また、音の構成