「えっと、じゃあこの問題できる者。手をあげろ」 数学の教師がそういいながら黒板に書かれた数式を叩く。僕は颯爽と手をあげた。教師がため息をつく。 「またヤマグチか。他にできる者はおらんのか」 誰もいない。数学教師はまた大きくため息をついた。 「じゃあヤマグチ、やってみろ」 「はい」 僕は胸をはって黒板に近づいた。おもむろにチョークを握り、すらすらと解いてみせる。教室は何ともいいようがない雰囲気に包まれる。どいつもこいつもまるで教会にまぎれこんだ例のイスラム教徒みたいな顔つきをしている。 「うん、よくできた。でもさっきから答えてるのはヤマグチだけじゃないか。お前らちょっと情けないと思わんのか」 教師がそういうと、黙ってられないとばかりに何人かが口々に騒ぎ始めた。 「だって、だって先生、ヤマグチ、27才じゃん」 そうだそうだと他の連中も騒ぎ出す。 「ヤマグチ、大学でてんじゃん」 「なんで今頃高校
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