下重暁子・作家 人間としてのあり方や生き方を問いかけてきた作家・下重暁子氏の連載「ときめきは前ぶれもなく」。今回は、年末の紅白歌合戦について。 * * * NHK紅白歌合戦が揺れている。今までにない低視聴率。若者中心の構成であり、日本国中の高齢者も子供も一緒になって楽しむ年中行事としての番組ではなくなってきた。 時代の移り変わりと共に番組内容が変わることは当然だが、「紅白」と「ゆく年くる年」は新しい年を迎える区切りだった。老いも若きも、紅白のトリの歌で盛り上がり、全員で「蛍の光」を歌い、十一時四十五分、場面が切り換わると「ゴーン」という除夜の鐘と共に年が改まる。そのなんともいえない一瞬の間を長年愛してきた。 その時を見たくて、紅白もチラチラと見ていたが、さすがに今回は十一時三十分頃からにした。馴染みの歌手や歌が極端に減って、辞退する大物歌手が相次いだ。安室奈美恵の引退ドラマのように盛り