別れ 昔々あるところにおばあさんが住んでいました おじいさんはいません。別れました 涙を流すおばあさんに、さよならと言ったおじいさんの気持ちはわかりません おばあさんは1つだけ強がりを言いました 本当に、本当に、おじいさんの事が好きだから 「もう恋何てしないなんて 言わないよ 絶対」 川へ 涙を拭ったおばあさんは、山で芝刈りをしてから川へ洗濯に向かいました 洗濯を終えたおばあさんが、想いを紡いだ言葉まで影を背負わすのならば海の底で物言わぬ貝になりたい、と思いながら川を眺めていると、大きな桃がひらりひらりと舞い遊ぶように流れてきました 夏の昼の真ん中太陽の下。喜びとしてのピンク。憂いを帯びたピンクに。夜の果てに似ているピンクの皮 おばあさんはそれをいつもより少し広く感じる狭いワンルーム(それはまるで心の隙間を広げるよう)に持ち帰りました。ほんの一分一秒が少し長く感じます もう二度と戻れないの