『侍女の物語』をはじめとするディストピア小説を世に送り出し続けている作家のマーガレット・アトウッド。彼女はいったいなぜ、理想から程遠く思える暗い世界を描くのだろうか。 グレタ・トゥーンベリが編集に携わっている『気候危機の本 The Climate Book』にも掲載されたエッセイに、アトウッドの答えが綴られていた。 何回チャンスを逃すのか 私が『オリクスとクレイク』という小説を書き始めたのは、2001年のことだ。 その頃の鳥類生物学者たちは、絶滅について議論していた。ちょうどその時観察していた数種類の鳥たち(ミナミオオクイナもいた)が、将来的に絶滅する可能性について、だけでない。もっと一般的な意味での「種の絶滅」について語っていたのだ。 私たち自身──つまり人間も絶滅する可能性があると。 どのくらいの時間が残されているのか? 絶滅するとしたら、それは私たちが自ら招いたことなのか? どれくら