絶版となった戦前の少女小説の復刊が相次いでいる。現在では忘れられてしまった作品の中から、現代にも通用する良作を掘り起こそうという動きが強まっている。「誰からも離れて、たった一本、山の頂きに咲いている桜の花のような女になろう」――。森田たまの『石狩少女(おとめ)』(ちくま文庫)は明治時代の北海道に暮らす多感な文学少女、悠紀子が主人公だ。「平凡にお嫁にいって、平凡に人妻として一生を終るべき人じゃ
「ヨーロッパの祖母」となった都市の盛衰ローマ帝国の中心がコンスタンティノープルに移った四世紀末、西方に新しい都が台頭する。イタリアの都市ラヴェンナにおいて、アリウス派のゴート人… 「ヨーロッパの祖母」となった都市の盛衰 ローマ帝国の中心がコンスタンティノープルに移った四世紀末、西方に新しい都が台頭する。イタリアの都市ラヴェンナにおいて、アリウス派のゴート人とカトリックのローマ人は競って、比類なき建造物とモザイクを次々と創りだした。以来三百年にわたりこの町は、学者・法律家・職人・宗教人を魅了し、まぎれもない文化的・政治的首都となる。この特筆すべき歴史をみごとに蘇らせて、本書はイスラーム台頭以前の地中海世界の東西の歴史を書き変え、ビザンツ帝国の影響下にラヴェンナが、中世キリスト教世界の発展にとっていかに決定的な役割を果たしたのかを明らかにする。 全三七章の多くは、皇后ガッラ・プラキディアやゴー
世界の至るところで大きな荷物や水の入った桶(おけ)などを頭にのせて運ぶ人たちがいる。かつては日本にもいた。 どういうわけか頭上運搬をする人は女性が多い(男性は肩に担ぐ傾向がある)。時には自分の体重よりも重い荷物を頭にのせて起伏の激しい道を歩くこともある。
昭和末年生まれの私は「若者の活字離れ」と叱(しか)られながら大人になった。本の売れない時代なのは今も変わらないが、一方で、人々が四六時中インターネットに接し、電車に乗れば乗客のほとんどがスマートフォンをのぞき込んでいるという状況になると、活字離れは人類史上もっとも「文字」に接する時代への通過点だったのかと思えてくる。 人の歴史に文字が登場したことで、思考や文化にどのような影響がおこったのか、さまざまな研究や事例を紹介するのが本書である。文字やそれを載せる媒体も、常に人類と寄り添いながら変化を続けたことが見えてくる。人々の読む文字が近年、紙からネットへと大きく移行し、それがまた生活のあり方を大きく変容させたような局面が、実はこれまでもたびたび繰り返されてきたらしい。 評者が驚いたのは人が文字を読むとき、黙読するか、音読するかという問題。印刷術の登場以前の西欧の古代・中世では、主に人の手で書き
本書は、国際社会における米国の「パワー」の源を、「開かれた市場」の背後に存在する目に見えない権力という視点から分析した意欲作である。近年、米国は、軍事力や経済力といった見かけ上のパワーでは相対的な地位を低下させている。それでも米国は、金融、情報通信、知的財産など、グローバル経済を支える地下の機械装置に圧倒的支配力を持つことで世界の超大国として君臨し続けている。グローバル社会では、サプライチェー
■「まさか現役アイドル中に別の現場でMVを撮る日が来るとは思っていなかったので、すごく新鮮な気持ちでした!」(乃木坂46中村麗乃) テレ東・ドラマチューズ!枠にて放送中のドラマ『RoOT / ルート』(毎週火曜24:30〜)より、劇中に登場するアイドルグループ“ミステリーキッス”が歌う「超常恋現象」のMVが一部特別公開された。 ドラマ『RoOT / ルート』は、河合優実&坂東龍汰が演じる若手探偵コンビの奮闘劇が描かれるミステリードラマ。 事件の鍵を握るアイドルグループ、ミステリーキッスは、センターの二階堂ルイと、アイドルながら仮面を着けた市村しほと三矢ユキからなるグループ。MVの解禁に併せて、センターの二階堂ルイを演じる乃木坂46中村麗乃からコメントが到着。また、仮面を取った市村しほ(伊藤友希)、三矢ユキ(小林桃子)と並んだ貴重なメイキング写真も公開された。 これまでも乃木坂46のグループ
Published 2024/05/10 12:01 (JST) Updated 2024/05/10 14:45 (JST) 河野太郎デジタル相は10日の記者会見で、偽造したマイナンバーカードを身分証として使い、スマートフォンなどをだまし取る事件が相次いでいるとして、事業者らに注意を呼びかけた。 河野氏は「目視でも丁寧にカードをチェックすれば偽造は見破れる」と強調。券面の印刷に特殊なインキが使われているかどうかなど、注意事項を記した文書を事業者らに配布する方針を示した。 またICチップの情報をその場で読み取れるようになれば、詐欺は防げるとも指摘。活用できるアプリの有無を早急に調べ、適切なものがない場合はデジ庁が開発して無償提供すると述べた。
星野太『食客論』、講談社、2023年 人の群れは得も言われぬ魅惑と嫌悪を引き起こす。話すため、食べるため、寝るため、人々は互いに集まり、また互いを避ける。その複雑で曖昧な関係を、本書は「寄生 parasite」の概念でもって、そして寄生する「食客 parasite」の形象において、描き出していく。そうして示されるのは、さしあたって贈与論と他者論の裏面と言えよう。だがさらに、飲食と会話、味覚と言語、感性と理性が交錯する「口唇」のトポスにまつわる美学的問題群の輪郭でもあろう。 本書によれば、今日しばしば語られる共生は実のところ目標というよりも事実だという。しかも「共生」を語れるほどの明確な自他ないし友敵の区別のない、もっと曖昧で振幅のある「寄生」と見なすべきという。 この寄生の形、寄生する食客の姿が、まずはロラン・バルトの、および彼が論じたブリア=サヴァランとフーリエの描く食卓のありように探ら
千葉雅也、納富信留、山内志朗、伊藤博明著、斎藤哲也編『哲学史入門Ⅰ 古代ギリシアからルネサンスまで』の本文を特別公開。ありそうでなかった学び直しの決定版!
大日本主義とは、国力(軍事・政治・経済)の増強を最優先の国家目標とし、もって安全と繁栄を確立しようとする。吉田松陰を起点とし、藩閥と軍閥が推進した戦前日本の国家方針であった。 他方、小日本主義とは、質実(経済と生活の質)の向上を最優先の国家目標とし、もって平和と豊かな社会を実現しようとする国家方針である。戦後の日本国憲法によって規定されている。 本書は、上田藩(長野県上田市)出身の赤松小三郎(こさぶろう)らによる六つの憲法構想を比較分析し、結果として小日本主義、そして日本国憲法の思想的な源流を明らかにしている。いずれも天皇を絶対的な主権者とすることなく、具体的な議会像を示すもので、なかには民選議会や基本的人権を規定する構想もあった。
「文學界4月号」(文藝春秋 編) 小学生の時、団地の社宅に住んでいた。私は詰まらない悪さをしては、母からしょっちゅう叩かれたり飯を抜かれたりする子供だった。団地の地下の真っ暗な物置に私を閉じ込め、扉の向こうから「ネズミに齧られるぞ!」と脅すような母だった。太い二の腕と巨大な脹脛を持つ母に太腿や頬を捻り上げられると、痛さの余り絶叫したが誰も助けてはくれず、翌朝同じ棟の小母ちゃんが、登校する私をベランダから哀れむような目で見送っていたりした。小学校時代を通してすっかりぺしゃんこになった自尊感情や自信を少しでも取り戻すべく、私は野生の仔犬を崖の上からU字溝の中へ投げ捨てて後肢を骨折させたり、同級生を集団で小突き回して泣かせたりするような残酷な一面を育んだ。 中学時代にオカルトブームが到来し、魔女に興味を持った。そして高校時代に社会科の課題で、森島恒雄の『魔女狩り』(岩波新書)とコリン・ウィルソン
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