「まっちゃん、悪いけど手が足らないから 子ども食堂の調理頼まれてくれない。 病気の治療中ってのは聞いてるから 無理がない範囲でいいから」 友人から頼まれたので、包丁を振ってきた。
その1枚の写真に、私たちは衝撃を受けた。 去年11月、都内のバス停で路上生活者の60代の女性が男に突然殴られ、死亡した事件。 カメラに向かって微笑みかける写真の女性が、亡くなったその人だった。 撮影されたのは1970年代。 当時は劇団に所属し、希望に満ちた日々を過ごしていたという。 しかし、亡くなった時の所持金は、わずか8円だった。 彼女にいったい何があったのか。バス停にたどり着くまでの人生を追った。 (社会部記者 徳田隼一・岡崎瑶) 「女性が路上で倒れているのが見つかった」 去年11月16日の午前11時ごろ。先輩記者から連絡を受けた私(徳田)は、急いで東京・渋谷区の現場へ向かった。 京王線の笹塚駅から北東に400メートル余り離れた、幹線道路沿いのバス停。 周囲にはマンションや店舗などが建ち並んでいる。 ここで、早朝に60代くらいの女性が倒れていたという。 女性は搬送先の病院で亡くなってい
子どもの貧困が大きな問題となっている。 子どもの6人に1人が相対的に貧困状態にあること。 ひとり親家庭の貧困率は50%を超えていること。 子どもの貧困は見えづらいものであること。 しかし、食に困るような深刻な貧困の子どもたち、親が忙しすぎてひとりでご飯を食べているような子どもたちがいること。 などが報道され、問題となっている。 この、子どもの貧困をなくすために、いったい何ができるのだろうか。 現在、「子ども食堂」を各地でつくろうというムーブメントが盛んだ。 食に困っている子どもたち、あるいはひとりでご飯を食べている子どもたち、あるいは、母子だけで父子だけでさびしく食べている親子が子ども食堂にやってきて、楽しくご飯を食べる、そんな取組だ。 ホームレス支援でいえば「炊き出し」にあたる。 私はすばらしいとりくみだと思う。子どもたちの笑顔、それを見られる大人たちもしあわせになり、そして子どもたちが
2年前の9月。関東地方にあるDV被害者のシェルターの職員は、39歳の母親と7歳の長女、4歳の次女を迎えた。 差し出したオレンジジュースを、姉妹は一気に飲み干した。白とピンクの長袖シャツはあかで灰色に変わり、頭にはシラミがいた。 一家の手荷物は、ランドセルとポリ袋二つ。サイズの合わないシャツ、穴の開いた靴下や下着が、汚れたまま詰め込まれていた。 風呂は約1カ月ぶりだという。翌日から一緒に入り、姉妹の髪をとかし、数百匹のシラミをつぶした。 「お姉ちゃん、もうこれでいじめられなくなるね」。次女がそう言うのを何度も聞いた。 いま、3人は母子生活支援施設で暮らし、自立を模索する。 保護されるまでの暮らしぶりを、母親は振り返って語る。 夫はトラック運転手や倉庫管理など10年で10回以上転職した。年収は200万円前後。家賃や光熱費以外は酒やたばこに消え、自分の事務職の給料などでやりくりしていた。 9年前
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