(2022年9月20日) 奴隷は、いかに苛酷に扱われようとも奴隷主に反抗することは許されない。やむなく、奴隷主への抵抗をあきらめ、むしろ迎合の心性を獲得せざるを得ない。これを《奴隷根性》と呼ぶ。悲しい立場ゆえの、悲しい性である。 だが、《奴隷根性》は奴隷主への消極的な無抵抗や迎合にとどまらない。奴隷が奴隷主に積極的に服従するようにもなる。奴隷を酷使して作りあげた奴隷主の富や文化を、奴隷が誇りにさえ思うようにもなる。奴隷が、奴隷主を心から尊敬し愛するという倒錯さえ生じる。《奴隷根性》恐るべしである。 臣民が君主に積極的に服従する精神構造を《臣民根性》と呼ぶ。臣民が、その収奪者であり支配者である君主への忠誠を倫理とし、忠誠を競い合い、誇るのである。《奴隷根性》と同様の倒錯というしかない。君主たる王や皇帝や天皇に支配の実力が備わっていた時代には、《臣民根性》は《奴隷根性》と同義・同種のものであっ