イスラム武装組織ハマスのイスラエル攻撃がきっかけとなり、中東地域は激動の時代を迎えるのか。フランスのシンクタンク「戦略研究財団(FRS)」副所長の地政学者ブリュノ・テルトレが中東地域に及ぶ長期的影響を分析する。 ──パレスチナ自治区ガザを実効支配するハマスの攻撃やそれに対するイスラエルの報復によって、ただでさえ不安定な中東情勢が大きく混乱しかねない状況になっています。中東地域はいま転換点にあるのですか。 「国際秩序に激動が生じている!」といった類のヒートアップ気味の反応は、真に受けないように気をつけたほうがいいです。 ロシアがウクライナに侵攻したときも、国際秩序に激動が生じたとは私は考えていません。今回のハマスが実行した作戦についても同じです。地政学のプレートテクトニクスは、もっと長いスパンで動くと考えるべきです。 ──米国が中東で進めていた戦略は、サウジアラビアなどのアラブ諸国とイスラエ