テレビの生中継にハプニングはつきものだ。 笑ってすまされることもある。 だが私の場合、職場を離れるきっかけとなった。 モニターの文字が消えたその日、私は政治部の記者として生中継に臨んでいた。与野党攻防の局面を伝えるためだ。 国会記者会館の簡易なスタジオにはプロンプターというモニター画面がある。記者は、目の前の画面に映った原稿を読み上げていけばいい。便利な道具だ。 2分程度の短い原稿。政治部に配属されて丸9年。すでに中堅記者になっていた私にとっては、難なくこなせる仕事のはずだった。ところが本番中、予想もしないことが起きた。画面にあった文字が突然視界から消えたのだ。 機器の不具合ではない。一瞬目の前が白く飛んだかのように、モニター画面の文字を捉えられなくなったのだ。あわてて手元に置いた原稿に目を落とし、なんとかその場をしのいだ。 ちょっとつっかえた。テレビを見ている人にはその程度の印象だったか