vol.27 1. 会いたかった人に、やっと会えるようになりました。 あいさつを交わすとき、にっこり笑った口もとまで、ちゃんと見えるようになりました。 この夏は、ひさしぶりに、近くの河原で市の花火大会がひらかれます。 「いまはしかたないね、がまんだね」 この三年間、なんどもなんども、子どもたちに、そして自分自身に、言って聞かせた言葉です。 これからはもう口にすることも少なくなるはず。 でも、なんでだろう。夜、子どもたちが撥ねのけた布団をかけ直しながら、明日がやってくるのを楽しみにしているような寝顔を見て、不安が、灰色の雲のようにひろがってくる。 平和だなあ、そんなふうに思えたのはいつだっただろう。 2. 二月──。 その日は曇り空で、とても寒かったけれど、かすかに春の匂いもしていました。子どもを小学校まで送っていった朝、かじかむ手をさすりながら教室に着くと、校長先生のお話が、校内放送のスピ