公衆衛生のために整備されてきた下水に、新しい価値が加わろうとしている。COVID―19が契機となり、下水中ウイルス濃度をもとに感染症の流行情報を得る下水疫学が50カ国以上で研究されている。国内では、東北大学と仙台市がノロウイルスでの下水疫学の実績を生かし、COVID―19流行予測を国内最速で試行的に公開した。 札幌市も北海道大学と共同で下水中新型コロナウイルス遺伝子物質濃度を公表している。11月第2週、3週と続けて過去最高の値を更新したが、それに先立つ急な上昇時から、第8波の警戒を呼びかけている。 下水疫学の信頼性が高まった背景には、日本水環境学会によるマニュアル作成と公開や、北海道大学による高感度検出法の確立など、科学的検証や精度の高い手順の普及の努力がある。 私たちは降雨予報だと傘をもって外出し、交通機関は台風予測に応じて計画運休する。暮らしに密接な気象予報のように、ウイルス予報もでき