『現象学と政治――20世紀ドイツ精神史研究』行人社、1994、第2章。初出は『神戸法学雑誌』40巻4号(1991.3)。『啓蒙主義の哲学』は1932年という非常にややこしい時期の作品である、ということをちょっと復習。 まずは問題の所在。宮田光雄が指摘するように、カッシーラーは、「政治の領域においては……はっきりと理性の支配を主張する合理主義の立場」をとっているが、面倒なことに「神話」については、「民族学者の見地からは神話が人間文化の発展における本質的要素をなすというロマン主義的見解にくみするとともに、批判哲学者としては、基本的に非合理・魔力的な神話の力と闘う合理主義者として立っているようにみえる」という非常にアンビヴァレントな態度をとっている。乱暴にいえば、カッシーラーは、理性を讃える新カント派自由主義者としての立ち位置に執着するくせに、「神話」についてはときどきロマン主義的な態度をとって