生涯20回以上ものイタリアへの旅は、精神分析の誕生にどんな影響を与えたのか――。「旅する人」というこれまでなかった切り口で、精神分析の創始者、フロイト(1856~1939)に光を当てた。 「イタリア旅行という親しみやすい話題だから、一般の方にも読まれるように、文章や構成を工夫したつもり。とはいえ受賞はまさか、っていう感じでしたね」と控えめに喜びを語る。 友人あての手紙に「まずイタリアが必要です」と書くほど、ルネサンス芸術の宝庫であるこの国は、フロイトにとって長年のあこがれの地だった。だが実質的なイタリア旅行は、40歳を目前にした1895年が初めて。それはフロイト自身の中に、イタリアへの「欲望と恐れという相反する感情」が渦巻いていたからだ。 「ユダヤ人のフロイトにとって、カトリック教会の中心地で偶像崇拝の国であるイタリアは、行きにくい場所でした。彼はチェコの田舎の貧しい家に生まれ、芸術に対す
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