私は「作家」でも「思想家」でも「哲学者」でもない――どんな表現様式においてであれ――そのうちのどれでもありはしない、かつても、今も、そしてこれからも一人の偏執狂であるというそのことに先立っては。(『ルサンブランス』より) 以下の文章は、2015年12月11日(金)、日仏会館において行われた渋沢・クローデル賞受賞記念講演会の内容に加筆修正をしたものです。 「ピエール・クロソウスキーの思考をめぐって」 皆様こんにちは、大森と申します。この度は年末で何かとご多用の折、ご来聴くださいましてありがとうございました。また、私の拙い研究(『ピエール・クロソウスキー 伝達のドラマトゥルギー』、左右社、2014年)に目をとめてくださった関係者の皆様、お忙しいなかコメンテーターをお引き受けくださった澤田直先生にも心から感謝したいと思います。30分という短い時間ですので、この発表では、私の本を要約して紹介すると