ボルバキアに感染した母親が生んだ卵からはメスばかりが生まれる。写真はチョウ目で「オス殺し」が報告されているアワノメイガ Tomasz Klejdysz-iStock <共生細菌ボルバキアが持つ昆虫のオスだけを殺すタンパク質の仕組みが、東大の研究チームによって解明された。宿主の昆虫種や戦略上の理由、ヒトの生活との接点とは> 東大大学院農学生命科学研究科の勝間進教授らの研究チームは、オスだけを狙って殺すタンパク質を同定し、メカニズムを解明したと発表しました。研究成果は14日、オープンアクセスの学術誌『Nature Communications』で公開されました。 「Oscar(オス狩る)」と名付けられたこのタンパク質は、昆虫の体内でよく見られる共生細菌のボルバキアが持つものです。 ボルバキアは感染した宿主(昆虫)の生殖システムに対して、オスのみの死、オスのメス化など様々な操作をします。「共生細
生物標本の維持管理には多大なコストが必要で、かつ標本の劣化は免れない 世界に先駆けてデジタル化された生物標本の3Dモデルを1400点以上オンライン公開 メタバースやバーチャルリアリティへの応用・利用が期待される 生物標本は生物を研究する上で重要な役割を担っており、博物館等で保管されています。しかしその管理は煩雑で、くわえて標本の劣化や退色は免れられません。また、多くの重要標本は厳重に管理されますが、それが故にアクセスが困難で、結局あまり利用されないといったジレンマも抱えています。 本研究ではフォトグラメトリ(被写体を様々な角度から複数撮影することで3Dモデルを構築する手法)により、生鮮時のカラフルな状態での生物標本を3Dモデル化し、オンラインで公開しました。(公開ページはこちら) 九州大学持続可能な社会のための決断科学センターの鹿野雄一特任准教授は世界に先駆けて、独自かつシンプルなフォトグ
「鳥の言葉」の解読に成功した若手研究者がいる。京都大学白眉センター特定助教の鈴木俊貴さんは、10年かけてシジュウカラの鳴き声を集め、鳥が言葉を話すことを突き詰めた。「僕は、シジュウカラという動物を世界で一番見てるんで」と話す鈴木さんの生態を、フリーライターの川内イオさんが取材した――。 世界で初めて鳥の言葉を解明した男 「今、ヂヂヂヂッて鳴いたでしょ。シジュウカラが集まれって言ってます。向こうに何羽か残ってるから、こっちに来てって呼んでますね」 「今、ヒヒヒって聞こえました? あれはコガラが『タカが来た』と言ってます。それを聞いて、シジュウカラも藪やぶのなかに逃げたでしょ。日本語と英語でダイレクトに会話しているような感じで、ほかの鳥の言葉も理解してるんです」 某日、まだ雪が残る軽井沢の森のなかを、京都大学白眉はくびセンター特定助教の鈴木俊貴とともに歩いた。シジュウカラの研究を通して、世界で
天然の塩の結晶・ハライト(岩塩)の中の液体に、原核生物や真核生物の細胞や有機化合物と一致する反応があることを地質学者が発見しました。この有機物の一部はまだ生きている可能性もあるとのことです。 830-million-year-old microorganisms in primary fluid inclusions in halite | Geology | GeoScienceWorld https://doi.org/10.1130/G49957.1 Potentially Alive 830-Million-Year-Old Organisms Found Trapped in Ancient Rock https://www.sciencealert.com/830-million-year-old-microorganisms-found-trapped-in-australi
私たちの目は常に膨大な量の視覚情報にさらされています。 脳にとって、これは容易な状況ではありません。 何百万もの色や形、光の加減や視点の変化により、視覚の世界は絶えず移り変わっているのですから。(走りながら撮ったカメラの映像を見てください) にもかかわらず、私たちはブレやノイズのない安定した世界を見ることができます。 これは何世紀にもわたって研究者たちを悩ませてきた視覚科学の問題でした。 そしてこのほど、カリフォルニア大学バークレー校 (University of California, Berkeley・米)の研究で、視覚の安定性を説明する新たなメカニズムが発見されました。 それによると、私たちの脳は、過去15秒間に見たものを統合・平滑化して、整った一つの印象にまとめ上げているとのこと。 一体どういうことでしょうか。 研究の詳細は、2022年1月12日付で科学雑誌『Science Adv
コーディネータ 多羽田 哲也(分生研)、上田 泰己 (医学部) ナビゲータ 道上 達男(教養学部) 私たちが考えたり、昔を思い出したり、あるいは夢を見たりすることは、いうまでもなく脳の働きです。この時、脳の中の膨大な神経ネットワークで何が起こっているのでしょう。それを知るために、ヒトのみならず、サル、マウス、ラット、さらには線虫、ショウジョウバエといった様々なモデル動物が用いられ、これらを対象として、電気生理学、シナプスにある分子の働きを調べる生化学や細胞生物学、顕微鏡やfMRIを用いたイメージング、遺伝子改変動物、数理解析など、様々な手法を駆使した研究が行われています。このような多方面からのアプローチを、それぞれの専門家がわかりやすく紹介し、最後に、脳科学の進展が私たちの存在の理解にどのように寄与するか、科学哲学の立場から講義します。 脳は脳を知るでしょうか。 本講義シリーズの終わり
江戸時代末期の医師、蘭学者の緒方洪庵(1810~1863年)が使ったガラスの薬瓶の中身を、瓶を開けずに突き止めた、と大阪大学などの研究グループが発表した。大強度陽子加速器施設「J-PARC(ジェーパーク)」(茨城県東海村)の分析装置で透過性の高い素粒子「ミュー粒子」(ミュオン)を使い成功した。医薬品の文化財の成分を非破壊で解明したのは世界初といい、当時の治療戦略の解明や、医療関係の文化財の継承に役立つ成果という。 洪庵は大阪大学医学部の源流で、福沢諭吉、大村益次郎らを輩出した蘭学塾「適塾」の開祖。同大は洪庵が壮年期と晩年に使った2つの薬箱を所蔵しており、晩年のものには液体と固体の製剤が入ったガラス瓶22本と木製容器6本が入っている。うち数本は栓が固く開かない状態。洪庵は瓶の上部に独自に「甘」「下」「酒」などと漢字1文字のラベルをつけたが、何を意味するかは本人にしか分からない。貴重な文化財を
今月の科学ニュースで紹介するのは、科学史上最大の古典といわれるニュートンの『プリンキピア』についての新発見です。謎だった初版部数や、ライプニッツはこの本を本当に読んでいなかったのかどうか、これまでの常識を覆す発見が報告されました。 世界は物理法則が支配している すっかり暗くなった午後5時半すぎ。近所の土手にのぼると、ちょうど頭上を明るい光が通り過ぎていくところだった。滑るように空を横切っていく光は、数日前から日本人宇宙飛行士の野口聡一さんが滞在中の国際宇宙ステーション(ISS)だ。 2020年11月21日17時36分に、富士から流星カメラで捉えた国際宇宙ステーション(ISS)の様子です。こと座のたくさんの星々の中をゆっくりと動いていきました。反対に動く光はレンズのゴーストです。pic.twitter.com/GT2apqqNcX — 藤井大地 (@dfuji1) November 21,
発表のポイント ● 「ペルム紀末の大量絶滅の原因は大規模火山噴火」を確かにした。 ● それは炭化水素の高温燃焼の証拠をとらえたことから言えた。 ● 炭化水素の高温燃焼は温室効果ガスの大量発生を起こし、地球温暖化が起きて陸上から植物が消え、90%以上の動物の種が絶滅した。 □ 東北大学ウェブサイト 概要 地球史上最大の絶滅事象とされるペルム紀末の大量絶滅の原因はこれまで確定していませんでした。東北大学大学院理学研究科地学専攻の海保邦夫教授(現:東北大学名誉教授)らの研究グループは、新しく開発した指標により、同大量絶滅とその前に起きた陸上生態系崩壊の原因は大規模火山噴火であるとしました。陸の生態系の方が、海の生態系よりも、小規模の地球環境変化で崩壊することも示しています。水銀の濃集を証拠に大規模火山噴火説が主張されて来ましたが、水銀は生態系崩壊によっても供給されるため、不完全な証拠と言われてい
培養開始から10か月が経過した「脳オルガノイド」。米カリフォルニア大学サンディエゴ校のムオトリ研究所提供(2019年8月29日提供)。(c)AFP PHOTO / Muotri Lab/ UCTV 【8月30日 AFP】実験室で培養した脳から、人のものに似た電気的活動を初めて検出したとする研究論文が29日、発表された。この研究結果は、神経学的状態のモデル化、さらには人の大脳皮質(灰白質)の発達に関する根本的理解への道を開くものだという。 【関連記事】3Dバイオプリンターで心臓を生成する画期的技術 豆粒大の「培養脳」に意識があるかどうかは、まだ明らかになっていない。今回の革新的進展をもたらした研究チームは、検出された電気的活動が早産児のものに似ていることから意識はないとの見方を示しているが、確かなことは言えないという。これはこの研究分野に新たな倫理的次元を開く問題だ。 成体幹細胞から作製され
Just hours from now, physicists could announce they're 99.9936 percent sure the Higgs boson exists, according to experts on the hunt for the so-called God particle. The combined findings of two teams at the proton-smashing Large Hadron Collider (LHC) should help explain why objects in our universe have mass—and in so doing, why galaxies, planets, and even humans have any right to exist. (Explore a
内 容 公共のための「有用な科学」が追求された時代 —— 。国家による最初の本格的な科学研究機関であるパリ王立科学アカデミーが、科学活動の文化的・社会的な基盤を形成する一方、啓蒙のフィロゾーフの参入によって統治のための科学へと踏み込んでいく過程を、初めて本格的に解明。科学史・社会史・思想史を横断する力作。 目 次 序 章 「アカデミーの時代」と科学の制度化 第Ⅰ部 18世紀前半までのパリ王立科学アカデミー 第1章 学者の社会的地位とアカデミー構想 1 17世紀初頭までにおける学者の社会的地位 2 王の庇護を求めて 3 科学アカデミーと学者の役割 第2章 「有用な科学」の追求と18世紀前半における一定の達成 1 終身書記フォントネルの言説と「有用な科学」の追求 2 「専門性」を生かした副業の模索 —— レオミュルの嘆願 3 政府と科学アカデミーの関係 第3章 「科学の共和国」と外界に対する距
1.概要 独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 加藤康宏)海洋・極限環境生物圏領域の出口 茂チームリーダーらは、九州大学、Institute for Surface Chemistry(界面化学研究所、ストックホルム、スウェーデン)および琉球大学と共同で、地球の40万倍を超える高い重力の下でも微生物が生育することを発見しました。今回の研究は、地球よりもはるかに大きな重力の下での(微)生物の振る舞いを初めて明確にしたと同時に、生命存在の可能性が重力によっては制限されないことを示すもので、地球外生命の探索に大変重要な寄与をすると考えられます。 この成果は、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 誌(電子版)に掲載される予定です。
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