アカデミー・フランセーズ史上初の女性会員、 悠然として渾然たる作家ユルスナール。 すでに20世紀文学の古典と賞揚される文豪の遺業を6巻に精選。 【編者のことば/岩崎力】 祖国の文壇とはおよそ無縁な北米東海岸の孤独のなかで、人間の運命に思いを凝らしつづけたユルスナール。彼女の創作過程には、思考のなかで主人公の内部にはいり込む「交感の魔術」がつねに含まれていた。その魔術を支えたのは古今東西にわたる博識であり思索である。現代に迷い込んだ古典作家とも評された彼女だが、激しい情念と官能の人でもあり、その視線は、過去に向けられるときも、現代への鋭い関心という軸に貫かれていた。一言語、一文明の枠をはるかに超える作家の広さ、深さが、このセレクションを通して読者に伝わるよう心から願っている。 *『出版ダイジェスト・白水社の本棚』2001年4月・5月号に、高橋睦郎氏によるユルスナールと三島由紀夫に関する