素粒子実験と加速器-戦後の日本を中心に- 西川哲治 〈東京理科大学 162東京都新宿区神楽坂1-3〉 1. はじめに 今世紀後半の素粒子実験は宇宙線によるものを除くと,相対論的エネルギー領域に挑戦した加速器の進歩によって始まった.これに大きく貢献したのは1945年に発見された位相安定性の原理と,レーダーなどに関連して急速な発展をとげたマイクロ波技術である.そしてシンクロサイクロトロン,シンクロトロン,リニアックなどによってGeV領域の物理学の研究が可能になった. 敗戦によってサイクロトロンを破壊され加速器による実験を禁止された日本が,1951年のLawrenceの来日を契機に再び加速器による本格的な素粒子実験に挑むことができるようになったのは,1956年に始まった東大原子核研究所における電子シンクロトロンの建設からといえよう.実質的には欧米の先進国に10年以上遅れての再出発であり,このため