わたしはその顔をじっと見つめた。 彼が、自分の出世をふいにしてもわたしとの約束を守ろうとしてくれていることがうれしかった。たとえ故郷に帰るにしても、陛下の近侍としての役目をいただけることがどのような栄誉であるか、彼は熟知しているはずだ。 また、それを断っても自分の立場が思っている以上には悪くならないと確信できるほど、この一年で神殿や宮殿で地位を得たことにも気がついた。 わたしは、この世の絶対者である陛下を袖にしてまでわたしに付き合ってくれようとする人間をおのれが持ちえたことが、心底恐ろしくなっていた。 そうまでしてくれた彼に、わたしは何を返せばいいのだろう。 いや、彼は、わたしから何かを引き出そうと思っているわけではない。 それは、わかりすぎるくらいよく理解していた。 しかしながら、わたしはその理解を拒絶した。 「ルネ、そなたがこの黄金宮殿で然るべき地位を得るのに手を貸さなかったわたしを恨